第85回アカデミー賞授賞式に潜入!の巻
第85回アカデミー賞
主演女優賞を受賞したジェニファー・ローレンスが階段でこけたり、司会が「おっぱいソング」なんぞを歌って会場が戸惑ったりと、今年のアカデミー賞もいろいろありました。さあ、今回はそんな第85回のアカデミー賞授賞式に潜入しました!
こちらからは潜入動画も!>>こはたあつこが第85回アカデミー賞の裏側に潜入!
さて、今年で9年目になるアカデミー賞の取材ですが、わたしにとって一番大きかったのは、今年のオスカーレポートを、初めて動画でやったことでしょう。最初は簡単な素人ビデオになるはずだったんです。でも、自分はテレビでしゃべる仕事もしているし、カメラを担当した夫(ダーリンはイギリス人)は、映像作曲家。そのため、編集作業に凝ったりナレーションを入れたりしました。そんな動画はこちらからご覧になれます。ぜひ見てみてくださいね!
今年のレッドカーペットは、相変わらず、取材陣で活気づいていました。でも数年前と比べて去年あたりから普段着の人も目立ち、ドレスを着ていても足元はスニーカーを履いているレポーターもいて、何だか年々レッドカーペットの敷居が低くなっているような感じが。朝のレッドカーペットは、世界中から集まったプレスの「レッドカーペット観光ツアー」のような雰囲気もありました。
でも、さすがに11時以降は、半分以上のプレスが退場し、そこからぐっとエレガントさが増すんです。そしていよいよスターが登場する午後の時間になると、歓声が上がり、皆正装となり、レッドカーペットらしいゴージャスな雰囲気で盛り上がります。
レッドカーペットでは、さまざまな職業の人がいますが、クリストファー・ガイダさんのお仕事は、レッドカーペットを歩く女優さんのエスコート。今までサンドラ・ブロックやジュリア・ロバーツ、アンジェリーナ・ジョリーなど、150人以上のセレブのエスコートをしたことがあるそうです。
でもちょっと怖かったのが、ダイアナ・ロスとシャロン・ストーンだったそう。特にシャロンは、彼の握手を拒み、「わたしよりも3歩先に歩いて、わたしを見ないでちょうだい」と言ったそうな。彼はびっくりして、一晩中緊張していたそうです。逆にとてもいい人だったのは、クイーン・ラティファだそう。彼を自分の家族のように扱ってくれ、翌日は彼女が出演している映画のオーディションにも呼んでくれたそうです。
今年は一つの作品が作品賞、監督賞などを総なめにする年とは違い、最多受賞作品が、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の4部門と、バランスよく振り分けられていましたね。作品賞はベン・アフレック監督の『アルゴ』が受賞。アフレックが今年の監督賞部門にノミネートされなかったことが、会員たちの同情票を集める結果となったのでしょう。
またその他の主要部門も全て下馬評通り。監督賞は『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のアン・リー監督。主演男優賞は『リンカーン』のダニエル・デイ=ルイス。主演女優賞は『世界にひとつのプレイブック』のジェニファー・ローレンス。助演男優賞は『ジャンゴ 繋がれざる者』のクリストフ・ヴァルツ。助演女優賞は『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイ。
日本では、『レ・ミゼラブル』が作品賞を受賞しなかったのが意外だったようですね。この作品は、わたしの周りの日本人やヨーロッパ人には好評なのに、なぜかアメリカ人の中には「カメラワークがうるさい」とか、「演出がオーバー」など、わたしとしては理解し難いマイナスの批評も。米批評家たちが批評する「ロッテン・トマト」のサイトでは、70パーセントが評価しただけで、96パーセントの『アルゴ』と比べるとかなり低い数字。ひょっとして、これはお国柄の違い? アカデミー賞自体が、色濃くアメリカ人の好みを反映しているということなのかもしれません。
ところで、『愛、アムール』で外国語映画賞を受賞したオーストリア人のミヒャエル・ハネケ監督は、「カンヌは芸術の祭典、アカデミー賞はビジネスの祭典」と言いきっていました。しかもアカデミー賞の晩さん会については、会場がうるさくて、申し訳ないけれど15分で出てきてしまったとのこと。世界中が注目するアカデミー賞の晩さん会を15分で退場するとは、すごい!
そんなハネケ監督は、今年助演男優賞を受賞した、同じくオーストリア人のクリストフ・ヴァルツと、何と親戚なんだそうです! 二人の義理のお父さんが同じ人とのこと。……うーん、世の中狭い!
今年わたしが一番気になったのが、司会に抜てきされたセス・マクファーレンがどこまでやれるかです。彼はアメリカの人気アニメ番組の監督&声優。ギャグ満載の脚本を書いていて、コメディーセンスも抜群。でも、裏方で仕事をしてきた人なので、オスカーの司会という晴れ舞台で、どこまでやれるかが心配でした。
結果はお見事。こけるどころか、堂々とした司会っぷり。歌もうまいし、ダンディーな魅力もあり、どぎついギャグもにっこり笑ってごまかす。ギャグがきつすぎるという批判もありましたが、こけたのは階段で転んだジェニファー・ローレンスだけで、視聴率は2%アップ。特にアカデミー側が狙っていた18歳から49歳の若い世代は11%もアップしたそうです。セスの起用は成功だったのでは?
ただ難を言えば、授賞式全体の構成がいまいちだったかもしれません。セスの司会に関する内輪のギャグが多すぎて、何だか深夜のテレビのノリみたいだったなあ。果たしてそれがオスカーに合っていたのかどうかは、いかがなもんでしょうねー。
それにしても、今年も嵐のように過ぎ去ったオスカー。これでやっとほっとしました。映画関係者やプレスの皆さーん、お疲れさまでしたー!