『メリー・ポピンズ』(1964年)でジュリー・アンドリュース演じるメリー・ポピンズは、魔法を使えるキュートなナニー。彼女は、バンクス氏が新聞に出した「厳格な」ナニーを求める広告ではなく、彼の子どもたちが書いた「明るく元気で楽しい人」「バラ色の頬を持つ優しくてきれいな人」「歌が上手な人」といった募集要項を見て彼らの元を訪れる。メリー・ポピンズはまさに子どもたちが理想とする存在なのだ。ちなみに原作では厳格で無愛想なメリー・ポピンズのキャラクターが、このように改変されたことを原作者のパメラ・L・トラヴァースは不満に思っていたようだが、ミュージカル映画にキュートなジュリー版メリー・ポピンズはぴったり。本作が映画史に残る佳作であることは疑いがないだろう。 |
|
|
ふわふわ空からやってくる!『メリー・ポピンズ』より
Everett Collection/アフロ
|
|
|
一方、『ナニー・マクフィー』シリーズに登場するナニー・マクフィーは、つながった眉毛、こぶだらけの鼻、鼻の下とあごのイボ、1本突き出した前歯が強烈な印象を残す魔女。一見しただけではエマ・トンプソンがふんしているとは気付かないほど不気味なルックスだ。第1作『ナニー・マクフィーの魔法のステッキ』(2005年)では、シングルファーザーとして7人の子どもを育てるブラウン氏(コリン・ファース)の書斎に何度もいきなり現れては「ノックしましたよ」とぶすっと一言。それだけでブラウン氏は何も言い返せなくなってしまうという迫力の持ち主でもある。 |
|
|
『ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ』
価格:1,500円(税込み)
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
(C)2010 Universal Studios. All Rights Reserved
|
|
|
メリー・ポピンズとナニー・マクフィーの違いはその容姿だけではない。メリー・ポピンズは、パチンと指を鳴らして部屋を片付けたり、絵の中の世界や屋根の上の散歩に連れて行ってくれたりと、誰もが一度は空想したようなことを魔法で実現してくれるが、ナニー・マクフィーは子どもたちを喜ばせるために魔法を使ったりはしない。彼女は子どもたちがすべき最低限のことをちょっと怖い魔法で教え、自分たちの力で物事を解決するように導くだけだ。それでも本心では子どもたちのことを思っているナニー・マクフィーと子どもたちの間に、次第に信頼関係が築かれていくさまは説得力がある。ナニーとしては、ナニー・マクフィーの方が一枚上手なのかも。 |
|
|
背後にナニー・マクフィーが!『ナニー・マクフィーの魔法のステッキ』より
Universal Pictures / Photofest / MediaVast Japan
|
|
|
|
ロマンチック・ファンタジー『プラクティカル・マジック』(1998年)の主人公は、美人魔女姉妹サリー(サンドラ・ブロック)&ジリアン(ニコール・キッドマン)。二人が生まれたのは、魔力と男を魅了する力があるが、彼女たちを愛した男はことごとく早死にしてしまうというオーウェンズ家。そのため絶対に恋はしないと誓うサリーと奔放なジリアンという正反対ながらも固い絆で結ばれた二人の関係を軸に、サリーが本物の恋に出会い、ずっと疎まれてきたオーウェンズ家が町の人々に受け入れられるまでが描かれる。姉妹が使うのは「本物の愛を呼ぶ魔法」という少女時代のかわいらしいものから、誤って殺してしまった(!)ジリアンのDV彼氏を復活させるための危険な魔術まで、かなり幅のある点が面白い。しかし何といっても本作の見どころは二人の美しさで、それだけでも一見の価値がある。
|
|
|
|
『プラクティカル・マジック』
価格:2,100円(税込み)
発売・販売:ワーナー・ホーム・ビデオ
(C)1998 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
|
|
|
そんな美人魔女姉妹と正反対の魔女3姉妹が登場するのが、ディズニー製作のカルト作『ホーカス ポーカス』(1993年)だ。300年の眠りから復活し、子どもたちと戦いを繰り広げる悪い魔女を、『ローズ』のベット・ミドラー、『天使にラブ・ソングを…』のキャシー・ナジミー、『セックス・アンド・ザ・シティ』のサラ・ジェシカ・パーカーが怪演。長女(ベット)の不気味さに比べれば三女(サラ)のルックスはセクシーと言えなくもないが、クモを捕まえてうれしそうにむしゃむしゃ食べ始めるなどあえて変人っぽく描かれている点がポイントで、サラはとてもいい仕事をしている。監督は「ハイスクール・ミュージカル」シリーズや『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』のケニー・オルテガだけあって、3姉妹がハロウィーンパーティーのステージで歌うシーンは秀逸。衣装からほうきや大鍋といった小道具まで、コテコテの魔女っぽさが堪能できる。
|
|
|
|
『ホーカス ポーカス』に出演した当時のベット・ミドラー、サラ・ジェシカ・パーカー、キャシー・ナジミー(左上から時計回りで)
Kevin Winter / Time & Life Pictures / Jeff Kravitz / FilmMagic / Steve Eichner / WireImage / Getty Images
|
|
|
|
|
『オズ はじまりの戦い』は、児童文学「オズの魔法使い」に登場するオズがどのようにして偉大な魔法使いとなったかを描いた作品。「いつか偉大な男になること」にこだわる自己中心的なマジシャンにすぎないオズ(ジェームズ・フランコ)を変えるのは3人の美しすぎる魔女たちとの出会いだ。純真な西の魔女セオドラには米Esquire誌の「2012年最もセクシーな女性」に選ばれたミラ・クニス。自分を魔女だと紹介するかれんなセオドラに「え? 顔のイボは?」とオズが混乱するのもうなずける。威厳に満ちた美貌を持つ東の魔女エヴァノラにふんするのは『ナイロビの蜂』のレイチェル・ワイズ。そして輝くばかりの美しさと優しさに満ちた南の魔女グリンダには『ブロークバック・マウンテン』のミシェル・ウィリアムズと、今をときめく美人女優の競演が実現した。 |
|
|
西の魔女セオドラ(ミラ・クニス)と東の魔女エヴァノラ(レイチェル・ワイズ)
(C) 2012 Disney Enterprises, Inc.
|
|
|
ただ、本作で描かれるのはきらびやかな衣装の見目麗しい魔女ばかりではない。恐ろしげな顔は緑色で指には黒く長い爪、全身黒ずくめの「緑の魔女」や、一瞬しか姿を見せないものの、サム・ライミ監督の前作『スペル』に登場するような老婆の魔女も登場する。彼女たちはなぜそのような姿になってしまったのか、美しい魔女たちと同様の存在感を見せる不気味な魔女たちにも注目だ。そして「偉大さ(greatness)」を求めるオズが、魔女たちとの関わりの中でより大事なものに気付かされるラストは、ストレートなメッセージながら胸に響く。魔女たちに導かれるように、ファンタジーの世界に旅立とう!
映画『オズ はじまりの戦い』は公開中 |
|
|
南の魔女グリンダ(ミシェル・ウィリアムズ)と「緑の魔女」
(C) 2012 Disney Enterprises, Inc.
|
|
|