第65回『アンチヴァイラル』ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
イケメン発掘調査隊
<インタビュー>
Q:病にむしばまれていく姿が本当にリアルで、観ているこちらまで病気になりそうな……。すさまじい役づくりでしたね。
熱が出ているシーンでは、背中にアイスキューブを入れて、体を冷やしたんです。すると、寒い演技をしなくていいというか、リアルに寒くてブルブル震えて。そういうふうに、居心地の悪さや不快な状況をつくって、その中に身を置くと、普通ではできないような目つきや表情がにじみ出てくる。そんなアプローチを取りました。周りのスタッフの表情を見て、僕の演技がリアルに見えるかどうか判断していたんです。注射針を歯ぐきに刺すシーンでは、周りが「うぇーっ!」ってすごい顔をしていたんで、これはもうパーフェクトだなって(笑)。
Q:この映画に出たくて、監督のブランドン・クローネンバーグをストーカーしたとか……?
アハハハ(笑)。それはウソだけど、脚本を読んだらどうしてもやりたくなって、ロスから監督がいるトロントに飛んで行ったんです。「どうしても出たい!」と監督にアピールしました。
Q:作品のどこが気に入ったんですか?
まずSF作品として魅力的だし、こんなアイデアはほかにない。それに一人の男が負のスパイラルにハマっていくんだけど、その様子がすごくて、皮膚感覚で伝わってくるんです。何より、このキャラクターは僕ならできる。だから、やんなきゃいけないって思ったんです(笑)。
Q:全編、鬼気迫る演技をしているけれど、お気に入りは?
難しいですね。でもあえて言うとすれば、初日に撮影した肉屋で首を絞められるシーン。そこで苦しい表情をするために力んだら、本当に血圧が上がって、2回ほど意識が遠のいたんです。これは俳優としての限界かなって(笑)。それから僕が人質を取るシーンがあるんですけど、心身共にキツかった。「これ以上、演じられないよ!」というところまでやりました。おかげで震えがきたり、頭が混乱して爆発しそうになったり……毎回吐きたくなるほどで。ただ、それぐらいまでやったから、やるべきことはやった確信はあります。
Q:マルコム・マクダウェルさんとの共演シーンもありましたが、楽しめましたか?
ずっと憧れていた人だから、会うときはとても緊張しました! 『時計じかけのオレンジ』はすごい映画だし、その作品に出ている人ですから(笑)。会ったら、とても素晴らしい方で感激でした。しかも、そんな人とスクリーンで共にできるなんて夢にも思っていなかった。そういう意味でも、こんなに誇りに思える映画に出られることになって最高でしたね。
<一問一答>
Q:好きな映画は?
最近のお気に入りを言うと、まず日本に来る機内で観た黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』。それから、ハル・アシュビー監督の『帰郷』。実はハル・アシュビー作品は全部観ていて、これに出ているジョン・ヴォイトが素晴らしくいいんです。ジョン・ヴォイト、ハル・アシュビーの作品でもう一つ挙げると、『大狂乱』という作品があって。ギャンブラーたちの映画で、これも素晴らしく面白くて、笑い転げました。そのほか、ここ数か月はアンドレイ・タルコフスキー、タル・ベーラ、ミケランジェロ・アントニオーニ、黒澤明、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーを集中して観ています。
Q:園子温作品もお気に入りとか?
そうですね。『ヒミズ』『自殺サークル』に『愛のむきだし』。彼の作品はとってもファンタスティックだけど、母親には観せられないし、彼女と観るのもちょっと難しいかな(笑)。
Q:ということは、映画を彼女と楽しむの?
いやぁ~、映画は一人で楽しむタイプです。それに、実は長いこと、彼女なし状態が続いている(笑)。僕は恋愛ベタだから……。
Q:どんな女性が好きですか?
何とも言い難いですよね。女性って、神様が作った最も美しい生きものだと思うし、何より大事なことはハートだと思うので。ただ今まで付き合ってきた傾向でいうと、ちょっと自傷癖的な女の子が好きになる傾向があるんです。たまたまなのか、よくフロイトが言うように、母親からの影響があるのかわからないのですが、「類は友を呼ぶ」というか。壊れた人は壊れた人に惹(ひ)かれる。似た者同士は惹(ひ)かれ合うってことじゃないですかね……。
Q:趣味は?
音楽と、待っていること……(笑)。
Q:えっ、何を待っているんですか!?
うーん、人生の終焉(えん)をね。何だか、75歳のような感じで骨がきしむんですよね……。
Q:自分自身の性格を説明してみてください。
基本的になまけものなんですよ。どちらかというとインドア派。何もなければ、一日中、部屋にこもって映画を観ています(笑)。『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のショーン・キャシディ(バンシー)ははっちゃけた役だったから、普段の生活でもパーティーに行って騒ぐようなことをやっていたんです。例えば、バーでいろんな女の子と踊って過ごした翌朝、それが役に生かされるだろうと思って。
Q:テキサス出身ですよね、テキサスらしいところはどこですか?
のんきなところ。それにカウボーイハットと西部劇と、ジョン・ウェインが好き。自分の家の玄関にジョン・ウェインの写真が飾ってあって、小さい頃は自分のおじいさんだと思っていたんです(笑)。
Q:今後、チャレンジしてみたい役柄は?
役どころでいうと、ジョニー・デップのマッドハッター(『アリス・イン・ワンダーランド』)、レオナルド・ディカプリオのハワード・ヒューズ(『アビエイター』)、マイケル・ファスベンダーのトム・ウルフ(『ジーニアス(原題) / Genius』)……って、僕がやりたいと思う役はもうみんなやっちゃっているんですよね(笑)。ただ、人って本当に面白い。そんな人間を演じる仕事に就けたことはラッキーだと思うし、それには重大な責任が伴うと思って、これからも演じたいですね。
取材・文:前田かおり 写真:奥山智明
作品情報
映画『アンチヴァイラル』は5月25日よりシネマライズほかにて全国公開
作品情報はこちら
オフィシャルサイト
コピーライト:
(C) 2012 Rhombus Media(Antiviral)Inc.
生年月日 :1989年12月7日
出 身 :アメリカ テキサス州出身
身 長 :180cm
趣 味 :映画鑑賞、音楽
芸歴:
17歳のときに『ノーカントリー』で映画デビュー。ドラマや映画で端役を演じ、2011年『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』で注目の若手に。今後も出演作の公開が続き、マーク・ウォールバーグと共演した『ハード・ラッシュ』、シアーシャ・ローナンと共演の『ビザンチウム(原題)/ Byzantium』の出演も決まっている。また10代の頃にバンド、Robert Jonesを結成し、ボーカルとドラムを担当。YouTube にパフォーマンスをアップしている。
<映画>
■2007年
『ノーカントリー』
■2010年
『ラスト・エクソシズム』
■2011年
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』
■2012年
『ハード・ラッシュ』
『アンチヴァイラル』
■2013年
『ビザンチウム(原題)/ Byzantium』