第51回『G.I.ジョー バック2リベンジ』『華麗なるギャツビー』『さよなら渓谷』『アンコール!!』『真夏の方程式』
今月の5つ星
フィッツジェラルドの名作文芸ロマンをレオナルド・ディカプリオ主演で豪華絢爛(けんらん)に映像化した『華麗なるギャツビー』、福山雅治主演の人気テレビドラマ「ガリレオ」シリーズの劇場版第2弾『真夏の方程式』、真木よう子の体当たりの熱演が話題沸騰のサスペンス『さよなら渓谷』など、6月の必見のラインナップを紹介。
アメリカの玩具シリーズを基にした人気アニメの実写映画化第2弾。国際テロ組織コブラの陰謀により壊滅状態となった機密部隊G.I.ジョーが、世界を救うため再び立ち上がる。新キャストとしてドウェイン・ジョンソンが参加するなど、筋肉要員が増加。前作に引き続き出演するイ・ビョンホンも上着を脱ぎ捨て、鍛え上げた肉体をバッチリ披露する。さらに壊滅状態となったG.I.ジョーを救う初代長官ジョー役で、ブルース・ウィリスまで参戦。線の細い俳優は一切出てこない、気持ちイイくらい濃い面々がそろった筋肉アクションとなっている。男性客には、レディ・ジェイ(エイドリアンヌ・パリッキ)など女優陣が振りまく健康的なセクシーさにもご注目いただきたい。物語は突っ込みどころ満載で相当荒唐無稽だが、「世界征服をたくらむ悪の組織VS正義の味方」という、いまどき珍しいほどストレートな設定の作品に文句を言うのはヤボというもの。むしろ突っ込みを入れて爆笑しつつ、中学生の頃に戻った気分で、手裏剣や銃弾が飛び交う、迫力のアクションを楽しむのが正しい見方といえるだろう。(編集部・入倉功一)
1974年にロバート・レッドフォード主演で映画化されたことでも知られるF・スコット・フィッツジェラルドの名作を、レオナルド・ディカプリオ主演で映画化した本作。『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督がメガホンを取っただけあって、まさに豪華絢爛(けんらん)。プラダやブルックス ブラザーズが衣装提供したというその華やかなファッションはもちろんだが、それ以上に豪華なのが音楽だ。製作総指揮を務めたヒップホップ界の大御所JAY-Zを筆頭に、当時の音楽にとらわれることなく、ビヨンセ、ウィル・アイ・アム、ファーギー、エミリー・サンデー、ラナ・デル・レイら旬なアーティストを起用し、昔ながらのジャズと現代音楽をうまく融合させた独自の世界観を作り上げている。しかも、ビヨンセとアンドレ3000が故エイミー・ワインハウスさんの「バック・トゥ・ブラック」を、エミリー・サンデーがビヨンセの「Crazy In Love」をカバーしているのだからもう夢のよう。映画と同時にぜひともサントラをおすすめしたい洋楽ファン必見の一作だ。(編集部・中山雄一朗)
幼児殺害事件と、その取材のうちに明かされる隣家の夫婦の秘密。「パレード」「悪人」などの芥川賞作家・吉田修一の原作を映画化した『さよなら渓谷』は、複雑に絡み合う人間関係を濃密に描いた「極限のラブストーリー」だ。その原作者の吉田も太鼓判を押すほどだったという、大森立嗣監督が作り上げた世界観には圧倒された。冒頭のドキュメンタリータッチの映像から、次第に明かされる15年前の秘密まで、ぐいぐいと男女の心の奥底に踏み込んでいき、さらに全編通して描写される真夏のねっとりと重い暑さが、愛憎渦巻く男女の姿をより引き立たせている。そして最大の魅力は真木よう子にほかならない。スクリーンを通して伝わってくる、憎しみと愛情のはざまで揺れ動くヒロインを官能的に、そしてやせ細るほど極限まで体現してみせた。まさに彼女の女優としての集大成といえる作品だろう。男女それぞれラストの解釈が異なるという本作。見終わった後、ぜひ話し合ってみてほしい。(編集部・山本優実)
『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』『カルテット!人生のオペラハウス』など、近年老人を主人公にした映画を量産している英国が製作した本作の舞台は、ロックやポップスの名曲を歌う老人合唱団。「人は何歳になっても変わることができる」「老人も人生を謳歌(おうか)している」といった要素は前出の2作にも共通しているが、本作を際立たせているのは老夫婦の深い絆に重点を置いた点だ。新鋭ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督は、誰からも好かれ、余命わずかでも前向きなマリオンと、頑固で偏屈ながら妻にはぞっこんのアーサーという夫婦の関係をとびきりチャーミングに描き、ヴァネッサ・レッドグレーヴとテレンス・スタンプという2人のベテラン俳優のリアルな演技が物語に説得力を与えている。その切なさと笑いの絶妙なさじ加減は、『愛、アムール』×『フル・モンティ』を連想させる。また、名曲の数々が効果的に作品を彩っていることは言うまでもなく、中盤でマリオンがシンディ・ローパーの「トゥルー・カラーズ」を歌うシーンからラストまで涙なしでは観られない。まだ6月ながら今年一番ロマンチックな作品になりそうな予感大。(編集部・市川遥)
福山雅治演じる一癖も二癖もある物理学者・湯川学が、事件の謎を科学的に検証する内容で人気を博すテレビドラマ「ガリレオ」シリーズの劇場版第2弾。湯川の人気の理由の一つとして、興味のない事件への関わり方、そして図らずも時折見せる人間味のある部分などが挙げられるが、本作にもその魅力が満載だ。しかし、今回は決めゼリフである「実に面白い」を封印。テーマが非常に重いためコミカルな部分がほとんどないものの、子どもと話をするだけでじんましんが出る湯川が、キーとなる男の子とあり得ない接し方をし、さらに事件の核心に迫るにつれて葛藤する表情など、これまでと違った湯川の一面を垣間見せてくれる。もちろん肝となるストーリーラインも、複雑で二転三転し、心を締め付けられるような展開が待っている。湯川が男の子と太陽が照り付ける中で、ある実験を行うシーンは必見!(編集部・小林裕介)