第7回 『怪盗グルーのミニオン危機一発』『ウルヴァリン:SAMURAI』『ディス・イズ・ジ・エンド(原題) / This Is the End』
最新!全米HOTムービー
世界の映画産業の中心、アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新!全米HOTムービー」。今回は『怪盗グルーのミニオン危機一発』『ウルヴァリン:SAMURAI』『ディス・イズ・ジ・エンド(原題) / This Is the End』を紹介します!(取材・文:吉川優子、細谷佳史)
全世界の興収が5億4,300万ドル(日本円で約543億円)と大ヒットした『怪盗グルーの月泥棒 3D』の続編(数字はBox Office Mojo調べ、1ドル100円換算)。公開した週末だけで全米の興収が8,300万ドル(約83億円)、2週連続トップに。現在、全米の興収が約2億8,700万ドル(約287億円)、全世界では5億9,500万ドル(約595億円、共に7月26日現在)突破と大ヒット中だ。
監督は前作と同じくピエール・コフィン&クリス・ルノーのコンビ。声優も同じく、怪盗グルーに『ゲット スマート』や『ラブ・アゲイン』のスティーヴ・カレル、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のクリステン・ウィグや、ラッセル・ブランドなど。ミニオンの声は、コフィンとルノー自身が務めている。今作でグルーは、3人の娘を持つシングルファーザーとしての悩みを抱えている一方、世界制覇を狙う組織の陰謀を阻止するため、彼をスパイとしてスカウトに来たエージェント、ルーシーと恋に落ちる。
ヒット最大の理由は、何といってもキュートなミニオンの魅力にありそうだ。家族連れで満席だった映画館では、ミニオンが出てくるたびに歓声が上がっていた。同じチームでミニオンのスピンオフ映画『ミニオンズ(原題) / Minions』が、現在製作中というのも納得。また、しぐさや声がとてもかわいい末娘のアグネスとグルーのやりとりもとても面白い。批評も良く、今後どこまでヒットが続くのか楽しみだ。
日本を舞台にした『ウルヴァリン:SAMURAI』が今月26日から全米で公開された。ウルヴァリン初の単独作品だった、2009年の『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』が全世界で3億7,300万ドル(約373億円)の大ヒットを記録しているのを見ると、作品の出来が前作以上の新作は、それを上回る大ヒットが期待できそうだ。
今回ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンは、第2次世界大戦時に、命を救った日本人の旧友が病で死にかけていることを知り、日本へやって来る。そして彼が死んだ後、その孫娘を狙うヤクザ、謎の女ミュータント、忍者たちを相手に死闘を繰り広げることになる。
シリーズ1作目の『X-メン』以来、どんどん不死身度がエスカレートしてきたウルヴァリンだが、今回初めて死を意識する展開が興味深い。いつも以上に筋肉隆々であるだけでなく、内面の葛藤に重きを置いたジャックマンの熱演が印象的だ。新幹線上でのヤクザとの戦い、ウルヴァリンの爪と真田広之の日本刀対決など、アクションシーンの見どころも多い。また2人の日本人女優、福島リラとTAOもとても良い。
そして新作の一番見事な点は、これまでアンジェリーナ・ジョリーやリース・ウィザースプーンにアカデミー賞をもたらしたジェームズ・マンゴールド監督のドラマとアクションのバランスが取れた語り口だ。夏のアクション大作には珍しい丁寧な演出に支えられており、この夏、最も新鮮なスーパーヒーロー映画だ。
■『ディス・イズ・ジ・エンド(原題) / This Is the End』
最近観た中で、最も笑える映画が、セス・ローゲンが『スモーキング・ハイ』の脚本家仲間エヴァン・ゴールドバーグと一緒に脚本を手掛け、初監督した『ディス・イズ・ジ・エンド(原題) / This Is the End』だ。出演は、ローゲン自身以外にジェームズ・フランコ、ジョナ・ヒル、ジェイ・バルシェル、ダニー・マクブライド、クレイグ・ロビンソン、マイケル・セラ、エマ・ワトソンとなかなか豪華。アメリカではすでに9,400万ドル(約94億円)を売り上げ、ヒットしている。
今作のユニークな点は、キャスト全員が本人の役で出演しているということだ。物語は、ニューヨークに住むバルシェルが、友人のローゲンを訪ねてロサンゼルスにやって来るところから始まる。二人はローゲンの自宅で山ほどマリファナを吸った後、フランコの家のパーティーに出掛けるが、突然大地震が襲ってきてパーティーは中断。多くの人々が家の前にできた巨大な穴に落ちていくのを目撃したローゲンたちは、フランコの自宅に引き返すが、やがてそれが単なる地震ではなく、世界の終わりであることを知る。
劇中で、役者たちが相手のキャリアや出演作を批判したり、下ネタ、ドラッグネタなどブラックユーモアが満載のホラーコメディーだ。決して好感が持てるキャラクターたちではないのに、本人役で出演した役者陣のユーモアのセンスに感心。映画の中でいつもいい人ばかり演じているセラが一番の悪人という設定にも大いに笑わされた。
【今月のHOTライター】
■吉川優子
俳優や監督の取材、ドキュメンタリー番組や長編映画の製作など、幅広く映画に関する仕事を手掛ける。
■細谷佳史(フィルムメーカー)
プロデュース作にジョー・ダンテらと組んだ『デス・ルーム』など。『悪の教典 -序章-』『宇宙兄弟』ではUS(アメリカ側)プロデューサーを務める。