第2回:真田広之
『ウルヴァリン:SAMURAI』NIPPON撮影秘話
映画『ラスト サムライ』で鮮烈なハリウッドデビューを飾った真田広之はその後も、人気コメディーアクション映画『ラッシュアワー3』や『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟による『スピード・レーサー』などに出演。日本人俳優としてハリウッドで活躍し続けている。
そんな真田が日本を舞台にした本作で演じるのは、かつてローガンに救われた矢志田の息子にして武道の達人であるシンゲン。もともと親交があったというヒュー・ジャックマンとは念願の初共演となるが、そのヒューと敵対する役柄になる。アクションシーンでは日本刀を振りかざして、ローガンの爪とガチンコ対決を繰り広げるなど、見せ場もたっぷり用意されている。
さらには、ほかの共演者へのアクション指導も自ら買って出るなど、積極的にアイデアを出したとのこと。実際、ローガンとの戦闘シーンでは「ローガンは左右に爪を持っている。ならば、シンゲンも二刀流でやり合うアクションをやってみたい」とリハーサルで監督に提案して採用されたという。
そんな真田が、ヒュー・ジャックマンとの友情や自身の役柄、さらにはハリウッド映画での日本ロケへ思いを語った。
取材・文:編集部 福田麗
Q:日本での撮影はいかがですか?
1か月半くらいシドニーでリハーサルを含めて撮影を進めてきたので、その延長という感じですね。それでも、ハリウッドの作品で日本ロケという不思議さはあります。日本風のセットを建てる予算や技術はあるのに、あえて歴史のある建物を使っている点には、文化に対するリスペクトを感じますね。日本人として、うれしいです。こういう海外資本で日本を舞台にした作品を作ってもらえること自体がありがたい。
Q:撮影に入られるまでは順調だったんですか?
実は、企画が動きだしてからは結構年数がたっています。(ジェームズ・マンゴールド)監督にお会いしたのも2年前。というのも東日本大震災があって、ロケが一度延期になってしまったんです。その後も日本ロケは不可能なんじゃないかといわれていたんですけど、少しずつ復興を遂げて、やはりこの作品を作りたい、作るからには日本にロケに来たいという思いを貫いてくれた。そういう過程があっただけにロケが実現して、ここにいることのうれしさ、思い入れというか、感慨深さは普段の日本ロケ以上にありますね。
Q:ヒュー・ジャックマンとの共演はいかがですか?
彼のことは以前に、映画祭で紹介されたんです。僕はジェームズ・アイヴォリーの作品(『上海の伯爵夫人』)で参加していて、彼はまた別の作品で参加していて……『ラスト サムライ』のときのメイクさんがヒューの専属メイクになっていて、「おまえたちは絶対に共演すべきだ」と紹介してくれたんですよ。その後にも偶然、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』を撮ったブレット・ラトナー監督の『ラッシュアワー3』を撮っているときに、隣のスタジオでヒューが自分のプロデュース作品をやっていて、訪ねてきたんですね。だから、やっと一緒にできるという思いがあった。この作品の話があって再会したときは、「久しぶり」とか「やっとできるね」とか、他にも脚本の話やキャラクターの話、多くは語れないんですが彼と直接対決するシーンもあるので、そこに対するアイデアを出し合ったりとか。非常に楽しく過ごさせてもらっています。
Q:本作のために特に準備したことはありますか?
特にこのために準備というのはなかった。脚本もぎりぎりまで変わっていたんですよね。1年前に読んでいたものと、シドニーに入ってから読んだものとでは違っていて……それで、自分の中でイメージしていたものを一度壊したというか、現場で対応していこうと。撮影に至るまでのプロセスが長かった分、自分の中で妙に出来上がっていたものがあったんです。でもそれと実際に撮り始めてからのものにギャップがあったので、これは一回空っぽにして、監督や共演者とのセッションにリアルに反応していくしかないな、とは思いましたね。自分の頭の中でこねくり回してしまったものを引きずりすぎると、成立しなくなるという思いがありました。
Q:演技プランについて監督から指示はなかったんですか?
監督も、俳優陣にライブ感を求めていたところがありました。なので「あんまり準備してくれるな」と最初の読み合わせのときも言っていましたね。撮影中もあの手この手で俳優たちが新鮮にできるようにどんどん変えてくるんですね。こっちが「慣れてきたな」と思ったら、どこかを変えてくるというのが彼の演出手法なので。それでも、好き嫌いがはっきりしている監督なので、非常にやりやすい。こちらとしても、新しい自分が発見できるんじゃないかと思いますし、組んだ以上は彼を信じていこうかという思いですね。
Q:監督はどのような人なのでしょうか?
俳優それぞれが持っている既成のイメージを覆すというか、他の映画で観たことのない顔を引き出したいという意欲の非常に強い監督だと思う。だから僕もあえて自分でもルールを破っていって、そこで起こってしまう化学反応を楽しもうという冒険的な現場にはなっていますね。
Q:アクションはいかがでしたか?
このシリーズですし、アクションは欠かせないものですよね。ある意味では、そういうパートを託されている部分もある。ドラマ部分でも、やはりウルヴァリンをかき回していく役割として大事なところを任されているので、監督と話したときは、とにかくドラマとアクションがばらばらになる映画ではなく、キャラクターのドラマとアクションが一致したものを作りたいというところで賛同しました。僕もそれを目指して、やってきたところもありますからね。
Q:日本を舞台にしているということで、時代劇のようなアクションを期待している人もいると思いますが、その点についてはいかがですか?
僕も何人かとのファイティングシーンがあるんですけど、トラディショナルな侍ものではないので、日本刀を使うにしても鎧(よろい)を身に着けるにしても、アレンジされている。監督側に、観たことのないオリジナルの映像を追求しようという思いがあるので、こちらも確信犯的にルールを破っていって、とにかくこの作品でしか観られないものを作ろうよ、と。監督自身、アクションシーンもアクション監督に任せるのではなく、タイミングなどを含めて「それはアクション映画に見えるからやめよう」と演出しているので、ドラマから逸脱するものは求めないという尺度がわかりやすくていいですね。
Q:真田さんの得意技のようなものはあるんですか?
原作にもありますが、日本刀です。家柄的に伝統を重んじるといった財閥の御曹司でありながら、武道だけはやっているというキャラクターなんですね。芝居とアクションと両方求めて、だからこそ自分にやってほしいというオファーをもらったので、うれしかったです。なので、注文にとにかく応えて、監督の喜ぶ顔を見るためには何でもやりましょう、と。そこは迷いなく、確信犯的にエンターテインメントしよう、と思っています。そういう意味では、二十代前半の気分に戻っています。
Q:甲冑(かっちゅう)を着たりはしますか?
ズバリですね(笑)。シンゲンという役名で、ヒューとの一騎打ちがあります。有名な3本爪と日本刀との戦いになっているので、お楽しみにというところです。
映画『ウルヴァリン:SAMURAI』は9月13日よりTOHO シネマズ日劇他全国公開
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