第7回：ウーマンラッシュアワーの『そして父になる』談義

ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トークしちゃいます。今回は、福山雅治主演の映画『そして父になる』をナナメ見！（取材・文：シネマトゥデイ編集部 森田真帆）

村本：切ない映画やったな～。僕、この映画がカンヌで賞をとったって聞いたとき、きっと海外の人にウケただけやろなって思っていたんですよ。でもこれは世界中が共感できますね。もう大人同士の話に巻き込まれてしまう子どもたちの姿が、観ていて耐え難かったですね。それに比べて！　この男、やっぱり泣いていなかったですからね！

中川：そんなことありませんて！　リリー（・フランキー）さんが、自分と同じように実の息子がストローをかんじゃう癖を見て「やっぱり息子なんだなあ～」って言う気持ち、よくわかったもん。うちも子どもいるから、「やっぱり僕の子やな～」とか思うときあるしね。僕、昔クラブとか、よく行っていたんですけど、うちの子も音楽聞くとすぐダンスするんですわ。気持ちわかる分、僕も悲しかったって！

村本：何それ。何のボケ？　僕なんて感受性が豊かやから、声を漏らさないように服を噛（か）みながら泣いたくらいですよ。なのにこいつ、ほんまにドライアイなんやもん。周りみ～んな泣いてる中、こいつだけケロっとしてて、ゾッとしたわ。

中川：違います！　「自分がこういう立場に置かれたらどうするんやろ……」って、めっちゃ考え込んでしまったんですって！

村本：うるさい！　無感情のロボットのくせに！

村本：僕はね、リリーさんの家で育てられた琉晴くんが、自分にめっちゃダブりましたよ。福山さんの家行ったときに、箸の持ち方教わるやろ？　僕も箸の持ち方めっちゃ下手くそやねん。映画の中で琉晴くんがお風呂場でアルファベットのおもちゃを箸でつまんで持ち方のトレーニングするシーンが出てくるんやけど、僕もネットでこのグッズ買おうかなって探したくらい。

中川：あれはさすがに売っていないやろ！　だってあれ、琉晴くんが自分で発案したトレーニングちゃうん？

村本：え、そうなん!?　でも琉晴くんの箸の持ち方を見たときの福山さんの顔めっちゃ怖かったわ～。

中川：村本さんはミートボールをつかむときに、つままんと箸をぶっ刺すタイプやもんね。

村本：どうせだったら真木よう子さんみたいなお母さんに説教されてみたい。「てめー箸の持ち方違うんだよ！」ってブチ切れられたら心臓バクバクしちゃうけど、たまりませんわ。ほんでうまく持てたらウインクしてくれるっていうね。

中川：もう何の話になってんねん！

村本：福山さんとリリーさんの家庭を交互に見たときにね、福山さんの家庭がめちゃめちゃ寂しく感じました。リリーさんちは兄弟がおって、みんなでお風呂入ったりしてすっごい楽しそうなのに、福山さんちはお母さんが電気を消したまま、うす暗～い中で電話しいてるんですよ。

中川：それでいて会話自体は全然暗くなくて「ひゃっはっは～」って感じで、めっちゃママ友同士の楽しいおしゃべりなんですよね。あれ、逆に怖い！　うちに帰ってきたときの福山さんも絶対びびっとったもん。

村本：あの暗さ尋常じゃないで！　リリーさんちは電気屋さんなんが納得できるくらい、明るさハンパないねん。

中川：高級なとこって何か暗いとこ多いもんな。「何で？」っていうくらい間接照明ばっかりやもんね。

村本：もう感覚おかしいもんな！　だって部屋の中にテントですよ！　テントは雨風しのぐためやで。何から身を守るためのテントやねんって話やで！　何しとんねん！　っていうね。

中川：あれがセレブなんですって！　一般人からすると、家にテント張ってプラネタリウムで星座を見るのは最高のぜいたくですから！

村本：一個だけ、「ここは福山さん、自分で台本書いたんちゃうかってところがあんねん。実の息子が、自分の家に泊まりに来ていたときに、おもちゃの銃をバンバン撃つシーンがあるんです。そいで書斎で仕事をしている福山さんのとこに息子が行くんですけど、その瞬間に福山さんは自分も銃を撃つふりをするんです。そこでね！　福山さんが銃に見立てたものは何だったと思いますか！　ギターです！

中川：ミュージシャン福山雅治や！　確かにあのシーンまで音楽をやっている片りん全くなかったからな。あのお父さん。

村本：まあ趣味の部屋っぽい感じもするから、ギターやってそうな気配もあるんやけど、「そこでギターかいっ！」ていうな。あれは、僕にも通じるものがあったわ。

中川：村本さんと福山さんが通じとったん？

村本：そうですよ！　僕らもね、小さなタイミングを見つけて自分らのライブ告知やDVDの宣伝をこっそり入れるときあるんです。あれはそれと同じ行為やで！　だって、銃に見立てるのなんて何でもいいはずなんですよ。ほうきとか、リモコンとか、でもそこでギターやで！　多分あのギターは撮影の前日に購入して映画の経費で落としているはずですよ！

中川：そこまでクズじゃありませんよ！

『そして父になる』

息子を病院で取り違えられた二つの家庭の姿を、映画『誰も知らない』『奇跡』の是枝裕和監督が描き出し、第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品。突然の事実に動揺するエリートサラリーマンの苦悩を、主演の福山雅治が熱演している。

『そして父になる』オフィシャルサイト

©2013『そして父になる』製作委員会