「シレンとラギ」公開記念:劇を映画で観ることの醍醐味とは?ゲキ×シネの魅力特集! 今週のクローズアップ 2013年9月27日 昨今、急速な広がりを見せている「ライブビューイング」と呼ばれる映画館での演劇、コンサートの上映。その先駆が、「劇団☆新感線」を有する株式会社ヴィレッヂが手掛ける「ゲキ×シネ」だ。あくまでも、「ゲキ×シネは、ゲキ×シネ、ライブビューイングとは別物だと思っています」と思い入れを語る仕掛人・金沢尚信プロデューサーに、劇を映画で観ることの醍醐味(だいごみ)とは何か、ゲキ×シネの魅力を伺った。 「劇団☆新感線」をご存じだろうか? 看板俳優は、大ヒット中のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」にも出演し、いまやお茶の間の顔となっている古田新太。そのほか、橋本じゅん、高田聖子など、テレビや映画でも活躍する実力派俳優が劇団員として名を連ねる。1980年、大阪芸術大学舞台芸術学科の4回生を中心に結成された劇団で、過去には筧利夫、渡辺いっけいも在籍。「蒲田行進曲」などで知られる劇作家つかこうへいのコピー劇団として人気を博した後、オリジナル作品として、いのうえ歌舞伎シリーズ(※1)、新感線Rシリーズ(※2)、ネタものシリーズ(※3)など数々の作品を発表し、演劇ファンのみならず、音楽ファンの心をつかみ、チケットがすぐに売り切れてしまうほどの人気劇団となった。 ゲキ×シネは、この劇団☆新感線の舞台を映像として収め、映画館で公開したもの。2004年に公開された第1作「髑髏城の七人~アカドクロ」から現在まで、コンスタントに新作を公開し続け、現在までに公開された10作品の累計観客動員数が約40万人に上る人気コンテンツとなった。ここまでの人気コンテンツとなれば、ゲキ×シネを見据えて舞台が制作されてもおかしくないが、「あるものを撮るのが僕らの使命だと思っている」と金沢プロデューサーは、そんな考えを否定する。もともとゲキ×シネは、経理畑にいたという金沢プロデューサーが、ヴィレッヂ入社2、3年目に、「劇団☆新感線の舞台を映画館で上映したら面白いのではないか?」と発案したもの。まず、劇団☆新感線の舞台があってこそのゲキ×シネなのだ。 劇団☆新感線の看板役者・古田新太! (C) 2004 ヴィレッヂ ゲキ×シネ第1弾!「アカドクロ」 (C) 2004 ヴィレッヂ こっちは「アオドクロ」! (C) 2005 松竹・ヴィレッヂ ※ 1. いのうえ歌舞伎シリーズ 神話や史実などをモチーフとし、ケレン味を効かせた時代活劇のシリーズ。近年では、その持ち味に加えドラマに重きをおき、人間の業を浮き彫りにした作品づくりへ転化している。 2. 新感線Rシリーズ 劇中、オリジナルのロックナンバーを生バンドで演奏。歌楽曲が多数あるのが特徴のシリーズ。 3. ネタものシリーズ 主にいのうえひでのりが書き下ろすネタを中心とし、お笑いを追求したシリーズ。 ゲキ×シネの撮影は、昼公演と夜公演の2回に分け、1日で行われている。つまり、1回勝負と言わないまでも、たったの2回勝負。もちろん、その1日のためには、打ち合わせやシミュレーションが重ねられているが、アングルを変えテイクを重ねて撮影していく映画と比べたら、考えられない撮影スタイルだ。ライブビューイングと呼ばれる作品の中には、映画館での公開を発表していたものの撮影がうまくいかず、公開を断念した例もあり、生の舞台にこだわる以上、そうした失敗とはいつも隣り合わせ。失敗を避け、きれいな画を残して映画館で上映するために観客を入れずに舞台上で演じる役者を撮影し公開したライブビューイング作品もある。 しかし、ゲキ×シネは、あくまでも生の舞台にこだわる。「お客さんを入れずに撮影するんだったら、映画でいいじゃんっていう思いがある」という金沢プロデューサー。「舞台の良さは、お客さんがそこにいて、観ている空気感。僕も不思議だなと思うんですけど、お客さんがいないところで撮っても、意外といい映像にならないんですよ。お客さんがいて初めて完成品なんだと思いますね。その理由はわからないですけど、役者のエネルギーの違いかなあ? お客さんがいると、役者の輝きが違うんです」。そこに込められた「舞台の醍醐味(だいごみ)を生の舞台そのまま、いやそれ以上の臨場感で多くの人に客席で同・E梠フ験してほしい」というスタッフの思いが、ゲキ×シネの迫力ある映像につながっている。 二人の「SHIROH」!ミュージカル作品も (C) 2005 東宝・ヴィレッヂ これぞ新感線!ヘビーメタルな「マクベス」!! (C) 2006 ヴィレッヂ 染五郎さんの名演!「朧の森に棲む鬼」 (C) 2008 松竹・ヴィレッヂ ゲキ×シネの醍醐味(だいごみ)とは何なのか? ズバリ金沢プロデューサーに尋ねると、こんな答えが返ってきた。「黒澤明監督やスティーヴン・スピルバーグ監督の1960年代、1970年代の映画には、いい意味の荒々しさがあったと思うんですよね。それは今観ると、作り方が荒いなあなんて思ってしまうものかもしれないんだけど、やっぱり何か引き込まれる要素があるじゃないですか。あれは何だろうなと思うんだけど、今って映像とか音が緻密になりすぎているんじゃないかなって」。 ゲキ×シネの魅力の一つに、劇場の最前列で観ていても決して見えないような役者のしぐさ、表情、一滴の汗までを堪能できるという点がある。しかし、それはゲキ×シネの欠点でもある。例えば、冷徹な男を演じているはずの役者の汗が見えてしまい、キャラクターに人間味が出てしまう。「今の映画に、冷徹な男が汗をだくだく流して話しているなんてシーン、あり得ないですよね。でも、冷徹な男の人間味が見えてしまっても、いいと思える何かが、ゲキ×シネにはあると思うんですよね」。確かに、今の映画にはない荒々しさが、ゲキ×シネにはあるのかもしれない。それに冷徹な男だって人間だ。汗も流すのだろう。 したたる汗も魅力なのです。「五右衛門ロック」! (C) 2009 ヴィレッヂ・劇団☆新感線 こっちも汗!「蜉蝣峠」 (C) 2010 ヴィレッヂ・劇団☆新感線 上川隆也さん&堺雅人さんの汗も見れる?「蛮幽鬼」 (C) 2011 松竹・ヴィレッヂ 「小学生や中学生のときに自信満々に描いた絵を高校生になって見たら、何だこのへなちょこは! と思うことがあるじゃないですか。たぶん今、『アカドクロ』(ゲキ×シネ第1作)を観たら、そう思ってしまうんだろうなあ」。そう感慨深げに語る金沢プロデューサー。ターニングポイントになった作品は、「朧の森に棲む鬼」(ゲキ×シネ第5作)だという。3回ほど編集をやり直し、苦労して制作したという同作。それまでは、劇に寄った方がいいのか、映画に寄った方がいいのか、ゲキ×シネの“立ち位置”に悩んでいたというが、同作から「ゲキ×シネは、ゲキ×シネだ」という確固たる思いが芽生えてきたのだという。 イギリスで試写を行った「蛮幽鬼」(ゲキ×シネ第8作)で海外からも映像のクオリティーを認められ、2013年1月に公開された「髑髏城の七人」(ゲキ×シネ第10作)で、「画に関してはゴールに達した」という思いが強くなったという金沢プロデューサー。10月5日に公開を控える「シレンとラギ」(ゲキ×シネ第11作)では、次なるゴールを目指すため、音のクオリティーを追求。ハリウッドへと飛び、ボリュームを上げ下げするだけでなく、周波数もぶつかり合わないよう調整していく本場の音響技術を体感。効果音も全て付け直し、舞台の臨場感を映画館に再現することに成功した。最後に金沢プロデューサーは今後について、「もう10年やっているので、何か違うことをやってみたいと思っています。それに最近、それぞれの業界が互いに影響し始めていると感じていて、刺激を受けているので」と語ってくれた。ゲキ×シネのさらなる飛躍にも、注目していきたい。 和×欧!異色世界観が魅力の「薔薇とサムライ」 (C) 2011 ヴィレッヂ・劇団☆新感線 豪華キャストも話題に!「髑髏城の七人」! (C) 2013 ヴィレッヂ・劇団☆新感線 最新作「シレンとラギ」!10月5日公開! (C) 2013 ヴィレッヂ・劇団☆新感線 金沢尚信 株式会社ヴィレッヂ取締役 ゲキ×シネ第1作「髑髏城の七人~アカドクロ」から映像版プロデューサーを務めている。 「アカドクロ」「朧の森に棲む鬼」「蛮幽鬼」 「髑髏城の七人」「シレンとラギ」って何!? ゲキ×シネ過去10作品&新作紹介はコチラ!→≫ ADVERTISEMENT