第9回『エリジウム』『死霊館』『恋するリベラーチェ』
最新!全米HOTムービー
世界の映画産業の中心、アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新!全米HOTムービー」。今回は、『エリジウム』『死霊館』『恋するリベラーチェ』を紹介します!(取材・文:明美・トスト / Akemi Tosto)
異色SF映画『第9地区』がアカデミー賞にノミネートされて一躍脚光を浴びたニール・ブロムカンプ監督。主演にマット・デイモン、共演にジョディ・フォスターを迎えて挑んだ待望のSFアクション作品が本作である。近未来の荒廃した地球、そして富裕層のみが入国できる理想郷エリジウムの映像は、まさに圧巻。異様なまでに現代のアメリカに似通った、格差社会の醜さを浮き彫りにしたストーリーも話題の的となっている。
2154年、公害・人口過多で荒廃した地球は、貧困層の住むスラムと化していた。富裕層のみが居住を許される宇宙都市エリジウムでは、不治の病も治癒する医療カプセルが完備しているというのにこの地球ではまともな医療すら受けられず、虐げられた生活を強いられている。職場の事故で、余命5日と宣告されたマックスは、自分を救うことのみを考えエリジウムへの不法入国を企てる。だが、少年時代から心を寄せていた幼なじみとの再会をきっかけに、格差社会のむごさに決死で戦いを挑む。
映像美にも増して注目なのは、最近ますます磨きがかかってきているマットの演技。自分勝手に生きていたときのマックス、そして愛する幼なじみと再会してから自分を犠牲にしても他人のために戦おうとするマックス。派手なアクションシーンにかき消されることなく、主人公の心の機微を繊細に表現する彼のパフォーマンスは、要チェック!
『ソウ』で世界を震え上がらせたジェームズ・ワン監督が、アメリカで実際に起こった身の毛もよだつような話を映画化したホラーオカルト作品。「『エクソシスト』以来のコワい映画」、という声も聞かれる本作、全米で封切りされるやいなや、映画チャートを駆け上りナンバーワンに。2013年に公開されたホラー映画の中で1億3,400万ドル(日本円で約134億円)以上(数字は9月4日現在のBox Office Mojo調べ、1ドル100円換算)という最高興収を記録した。
映画は、1971年ロードアイランド州の町にある古い邸宅にペロン夫妻と5人の娘たちが引っ越してきたことから始まる。新しい生活に胸を躍らせていたのもつかの間、ファミリーの周囲に不気味な現象が多発し始める。おびえる子どもたち。母親キャロリンがついに心霊学・悪魔学研究の権威ウォーレン夫妻に助けを懇願するが、そんな彼らを待ち受けていたのは、想像を絶する邪悪さを秘めた悪霊との戦いだった。
この映画は、実在するペロンファミリーの娘さんとロレイン・ウォーレン女史(夫エド氏は、すでに他界)をコンサルタントに迎えて製作された。ワン監督は以前からウォーレン夫妻の仕事に対して非常な敬意を抱いていたと証言しており、監督自らの思い入れがたっぷりのコワい仕上がりになっている。
スティーヴン・ソダーバーグ監督がアメリカのケーブルテレビ局HBO用のテレビ映画として製作した作品。テレビのアカデミー賞と言われるエミー賞ドラマ部門で作品賞、そしてリベラーチェの生き写しと言っていいほど役になりきったマイケル・ダグラスが見事に主演男優賞受賞したばかりの話題作。
アメリカで1950年代から30年以上にわたり「世界が恋したピアニスト」と呼ばれ活躍したリベラーチェは、当時大人気のエンターテイナーで、奇抜で豪華な衣装、派手なライブショーを繰り広げたところは、マドンナやエルトン・ジョンのようなショースタイルの先駆けともいえる。この作品では、当時知られていなかったリベラーチェの同性愛者としての生活にスポットを当て、華麗ながらも生々しいドラマとなっている。
マイケル・ダグラスの演技も素晴らしいが、リベラーチェの若い恋人スコット・ソーソンを熱演したマット・デイモンもエミー賞に値する素晴らしさ。特に、前出の映画『エリジウム』で、男くさいヒーローを演じ、この作品でリベラーチェのボーイフレンドとして惜しげもなくベッドシーン(!?)を披露するマットの演技の幅と、役者としての勇気には、敬意を抱かずにはいられない。
【今月のHOTライター】
■明美・トスト / Akemi Tosto
高校よりロサンゼルス在住、CMや映画の製作助手を経て現在に至る。全米映画協会(MPAA)公認ライターとしてだけでなく、監督としても活躍中。短編作品『ボクが人間だったとき/ When I Was a Human』がアカデミー賞公認配給会社ショーツ・インターナショナルより配給され、まもなくiTunesとAmazonで日本版が発売予定。ツイッターもよろしく!→@akemi_k_tosto