「ウォーキング・デッド」現場ロケに潜入!現場リポート!
■「ウォーキング・デッド」現場ロケに潜入!現場リポート!
ゾンビの出現で世界が崩壊した後のサバイバルドラマとして大人気のテレビシリーズ「ウォーキング・デッド」。今月からオンエアが始まったシーズン4の撮影が行われた、ジョージア州アトランタの現場を訪ねた。
シーズン1以来「ウォーキング・デッド」の製作本部となっているラリー・スタジオは、アトランタの南、空港から車で30分ほどいったところに位置する。ほとんどのロケはスタジオ周辺で行われているらしく、周囲には番組でお馴染みの風景が広がっている。スタジオの裏に回ると、主人公リック・グリムス率いるグループが、シーズン3から住んでいる刑務所のオープンセットが組まれていた。
■アメリカを席巻!ゾンビドラマの裏側
刑務所を囲む柵の近くでは、グレゴリー・ニコテロ監督がちょうどゾンビのシーンを演出していた。ニコテロ監督は、ハリウッドを代表する特殊メイク会社KNB EFXの創始者で、「ウォーキング・デッド」では、プロデューサーと脚本家も兼務している。
彼は、助手にiPhoneで恐ろしい雰囲気の楽曲を耳元でプレイバックさせ、自分でゾンビのうめき声を足しながら、ゾンビの動きをモニターでチェックしていた。いかにも楽しそうな風景で、特殊メイク・アーティストでもある彼にとっても、1年中ゾンビと一緒にいられる「ウォーキング・デッド」は、これ以上ない夢の仕事に違いない。ゾンビのシーンをいくつか堪能した後は、これまでのシーズンで亡くなった主要キャストの写真が壁に並べられているスタジオ内の試写室に移動。スタッフとキャストたちが新シーズンの見どころなどを語った。
■リックが分析!「ウォーキング・デッド」人気の秘密とは?
この日は、撮影中は役に入り込んでいるため、あまり取材を受けないというリック役のアンドリュー・リンカーンも、たまたま出番がないということでインタビューに参加。「ウォーキング・デッド」の爆発的な人気について「これはまるでトロイの木馬みたいなんだ。外観はゾンビの番組だけど、僕たちは観客を(感動で)泣かせることを願っている。キャラクターが大事な誰かを失ったり、ゾンビ番組なのに予想以上にキャラクターに感情移入してしまうことによってね」と分析する。
また本作への出演を決めた理由についてアンドリューは「最初エージェントから、ゾンビサバイバル物の話が来ていると電話をもらったときは、『18年も演技をしてきた後でゾンビ物をやるのかい?』って言ったよ。でも、『AMCの番組で、フランク・ダラボンにゲイル・アン・ハード、グレゴリー・ニコテロが関わっているんだ。わたしたちを信頼してほしい』って言ってね。みんな最高の仕事をしている人たちだったから、僕も真剣に話を聞くことにし、脚本を読んでみた。そして、素晴らしいSFやファンタジーは、弁護士物や警官物でもできない、人間の生きざまを描くことができることに気付いたんだ」と振り返った。
さらにアンドリューは、大人気の中で迎えたシーズン4のテーマについて「今シーズンは、多分一つの質問に要約されると思う。それは、僕らが元に戻れるか……ということだ」と言及。「僕らがこれまでにやったこと、目撃したことを経て、また元に戻れるのか、この地獄が始まる前の自分たちにまた戻れるのか、前の自分たちのように生活したり人を愛することができるようになるのか、リックはかつてのようにこの子どもたちの父親になれるのか、今シーズン、全てのキャラクターが自分自身にそういった問い掛けをすることになるんだよ」
■ノーマン・リーダス、ダリルを語る
この日は、シリーズでリックと人気を二分するキャラクター、ダリル・ディクソン役のノーマン・リーダスも出席。この日はオフだったが、インタビューのため愛車トライアンフのバイクに乗ってスタジオを訪れた。寡黙なアンチヒーローであるダリルの人気についてノーマンは「ダリルに人気があるのは、彼が複雑なキャラクターだからだと思う。彼は狩りができて、自分で食べ物を見つけられるし、こういった状況に対する準備ができている。でも面白い点は、人とのやりとりに対しては準備ができていないことだ。(過去のシーズンで)いなくなったソフィアを捜しにいくとき、俺は自分一人の方がうまくやれる、と言って一人で行動するようにね。でもリックたちと行動することで、ダリル自身も気付かないうちに人間として成長していく。仲間と一緒にいなければ、決して得ることのなかった自尊心を育むようになっていくんだ」
「でもそういった自分に対して、彼はちょっと困惑している感じだね」というノーマン。ダリルを演じる上では、かなり自分のアイデアを反映させているようだ。「最初の脚本では、ダリルはドラッグをやったり、人種差別的な言葉を口にしたりしていたけど、僕はそういったことをやりたくないと脚本家に言ったよ。彼のことを、自分が思っているのと違う人生を歩んでいる人として演じたかったんだ。彼は自分のしていることを恥ずかしいと感じているし、罪悪感を持っている。自分の家族や兄のプレッシャーから仕方なくしているんだ。その方がダリルとメルルの関係にも、葛藤が生じてより面白くなるしね」
■「ウォーキング・デッド」シーズン4、注目ポイントとは?
1985年にゾンビの生みの親ジョージ・A・ロメロの『死霊のえじき』で、伝説の特殊メイクアーティスト、トム・サヴィーニのアシスタントをして以来、数々のホラー映画を手掛け、2005年の『ランド・オブ・ザ・デッド』では、特殊メイク・スーパーバイザー以外にセカンド・ユニットの演出も務めたニコテロ監督。今ハリウッドで、ゾンビを語らせたら彼の右に出る者はおそらくいないだろう。
「ウォーキング・デッド」の成功の鍵を握る彼は、シーズン4の見どころについて「今シーズンはゾンビの脅威について考え直したんだ。今生き残っているキャラクターたちはゾンビのことをよく理解していて、連中を簡単に殺せるようになっている。でもそうなると、ゾンビはもう脅威でなくなってしまう。だから今回は、キャラクターたちが油断しているときにゾンビが襲ってくるようにした。どんな優れたハンターでも、油断しているときはどうしようもないからね。それとサーシャやタイリーズなど、昨シーズンであまり知ることのできなかった新しいキャラクターを掘り下げた。シーズン3の最後でガバナーの手先の少年を殺したカールを心配したリックが、この世界で父親としていかにカールに精神的な支えを与えることができるか、といった点も見どころだね」
番組の製作を手掛けるAMCは、先日エミー賞でドラマ部門作品賞を獲得した「ブレイキング・バッド」や、同賞を連続受賞した「MAD MEN マッド・メン」などを製作。黄金期を迎えているアメリカのテレビ界で、最も勢いのあるケーブルチャンネルだ。「ウォーキング・デッド」でも過激なゾンビ描写や、子どもと暴力の関係など、地上波の番組では絶対に描けない映像表現や題材に果敢に挑むことで、どんどんファンを増やし続けている。すでに「今まで以上に力強いオープニング!」と評価されているシーズン4。どんな驚きの展開が用意されているか、今シーズンも大いにファンを夢中にさせてくれそうだ。(取材・文:細谷佳史)
「ウォーキング・デッド」シーズン4はFOXチャンネルで放送 毎週日曜夜10時~ほか放送中