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本当に面白い日本のテレビドラマ特集PART1~注目の演出家&脚本家編~

型破りシネマ塾

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大根仁三木聡園子温入江悠古沢良太坂元裕二

本当に面白い日本のテレビドラマ特集PART1 注目の演出家&脚本家編

「日本のテレビドラマは観ない」そんな映画好きは多いかもしれない。同じ1時間を使うならクオリティーの高い海外ドラマを、という人も。でもここで断言しよう。日本のテレビドラマも捨てたもんではない。あの有名監督が深夜ドラマで映画とは異なる個性を発揮して楽しそうに演出していたり、これから映画界に切り込んできそうな気鋭の若手が新しい何かを全力で模索していたりする。撮って出す、その“シズル感”を楽しむテレビドラマを演出家や脚本家に注目して紹介します!
 
文 / 浅見祥子

テレビ界の生んだスター監督候補生------大根仁

ブレイクの一歩となったのはあの作品

例えば堤幸彦のように、テレビドラマから映画へキャリアアップした監督は数多くいた。大根仁はテレビ界が生んだ久々のスター候補生だ。真木よう子が毎回異なるヒロインを異なる演出家の下で演じた1話完結の連続ドラマ「週刊真木よう子」(2008)山下敦弘タナダユキ三木聡らの監督、三浦大輔赤堀雅秋長塚圭史らの脚本と、今となっては信じられない豪華スタッフが結集したこのドラマで6話分を手掛けた大根。例えばその第1話はリリー・フランキー原作で、真木が心の隙間をセックスで埋めてきた過去を持つ主婦を演じるジャジーなエロドラマである。冒頭に流れる物がなしいトランペットが、もうジャジー。強くてエロく、心の底に計り知れない暗闇を抱える。そんな役柄がハマる真木の魅力を最大限に引き出している。

シャープなオープニングでさく裂する映像&音楽センス

大根監督の武器は、作品によってカラーを的確に変えるシャープな映像と音楽センスの鋭さにある。「湯けむりスナイパー」(2009)遠藤憲一が秘境の温泉宿で生きる元殺し屋を演じるという設定だけでもサイコーだが、主題歌にクレイジーケンバンドを持ってくる的確なセレクト。「モテキ」(2010)のオープニングもしかり。“モテキ”というみこしに担がれた「草食系モテない君」を演じる森山未來が、彼を取り巻く美女たちと踊り狂う映像に、抑揚のない能面のようなフジファブリックの歌声を重ねる。クールだ。

「まほろ駅前番外地」(2013)瑛太松田龍平が商店街をだらだら歩く映像を逆回転で見せるオープニングもクールだった。どんなジャンルの作品でも、それに見合った方向にトンがったイマドキな映像と、それとの化学反応を起こす音楽の融合がかっこいい。「モテキ」は翌年映画になり、映画に始まった『まほろ駅前多田便利軒』を連ドラにしてその世界観で遊ぶ。大根監督の手に掛かると、自由度の高いテレ東深夜枠の連ドラは映画の世界とごく近いと思えてくる。

「週刊真木よう子 Blu-ray BOX」

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価格:10,500円(税込み)
発売・販売元:キングレコード
©週刊真木よう子製作委員会

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価格:19,950円(税込み)
販売元:東宝
©「モテキ」久保ミツロウ/講談社 ©「モテキ」製作委員会

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価格:19,950円(税込み)
販売元:東宝
©三浦しをん2009/文藝春秋 ©「まほろ駅前番外地」製作委員会2013

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笑いのプロフェッショナル------三木聡

トレードマークは小ネタの集積とゆるい笑い

『亀は意外と速く泳ぐ』(2005)で膨大な小ネタの集積の果てに、力の抜け切ったオリジナルな笑いを表現して注目を浴びた三木聡。彼は放送作家時代に松本人志タモリとの仕事でテレビだからこそ生まれる瞬発的な笑いを身に付け、10年以上演出を担当したコントユニット、シティボーイズのライブで計算された笑いを稽古で構築するすべを知る笑いのプロだ。その敏腕ぶりはまず「時効警察」(2006)で結実する。時効が成立した未解決事件を趣味で捜査する主人公。それ全部ムダじゃん! というツッコミが前提の刑事モノだった。オダギリジョー麻生久美子という映画的配役で、意外にちゃんとした推理が展開。確かに脱力系ではあるが、練り上げられた脚本を実力派の俳優陣を脇にズラリと配置して一分の隙もなく笑いを積み上げる。「帰ってきた時効警察」(2007)も合わせ、とにかく面白かった。

世界観を構築するのに欠かせない常連俳優たち

最新作「変身インタビュアーの憂鬱」(放映中)「熱海の捜査官」(2010)と映画『俺俺』(2012)でより不条理へ傾倒した三木が、再び笑いの世界に帰ってきたかのような作品。主人公は「トンスラ」(2008)同様に書けない小説家とその担当編集者コンビ。「トンスラ」はブチ切れドSキャラの小説家を演じる吉高由里子とオドオドしたM系編集者の温水洋一の組み合わせだったが、今回は中丸雄一木村文乃がフレッシュにオトボケ。そしてやはり松尾スズキふせえりら、三木組でおなじみの役者がズラリと並ぶ。計算し尽くされた世界を表現するにはかつて組んだすご腕の役者を起用し、この人なら大丈夫という安心感が大事なのかも。

「時効警察 DVD-BOX」

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価格:19,950円(税込み)
発売元:テレビ朝日
販売元:アスミック・エース
販売協力:KADOKAWA 角川書店
©2006 テレビ朝日・MMJ

「トンスラ DVD-BOX(4枚+特典ディスク/5枚組)」

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価格:15,960円(税込み)
発売・販売元:バップ
©DNDP・VAP・電通・テレビマンユニオン

「変身インタビュアーの憂鬱」

ドラマNEO「変身インタビュアーの憂鬱」はTBS系にて毎週月曜日深夜24:28~25:07放送
©TBS

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テレビサイズに似合う明るく過剰な世界を演出------園子温&入江悠

映画での暗黒カラーは影を潜め、エッチな笑いをプラス

『愛のむきだし』(2008)『冷たい熱帯魚』(2010)『ヒミズ』(2011)と、発表するどの映画でも映画館の暗闇こそがお似合いと思わせるような人間の暗黒をあぶり出す園子温。そんな彼が意外とテレビサイズもイケると思わせたのが「みんな!エスパーだよ!」(2013)だった。


いや確かに「時効警察」「帰ってきた時効警察」のいくつかの回で脚本・演出を担当しているが、「みんな!~」はそれとは違う。紛れもなく園子温的世界なのだ。意中の女子への妄想が暴走したり鼻血をブーしたり、染谷将太演じる主人公は常に童貞パワーを全開。劇中にはいろんな全裸が飛び交い、夏帆が飛び蹴りをかますというお下劣で過剰な世界が展開。園映画に観られる暗黒は影を潜める。それが “青春モノ”である原作に由来する面はあるだろうが、園子温にもテレビにハマるカラっとした明るさがあるということかも。

世界観を構築するのに欠かせない常連俳優たち

またこのドラマでは、『SR サイタマノラッパー』で注目された入江悠も演出を手掛けている。時々顔を出す奇妙な間がリアルな居心地の悪さを生み、夢をめぐる王道な物語で熱くさせる。そのブレンド感が新鮮だった入江はWOWOWの「同期」(2011)では、本格的な警察ドラマを正統派の演出でどっしり見せた。ぬかりなく正統派をやれるからこそ、崩せる。入江にとって園子温的世界に同化するのはそれほど大きなジャンプではないのだろう。

映画『地獄でなぜ悪い』

映画『地獄でなぜ悪い』が上映中の園子温監督
©2012「地獄でなぜ悪い」製作委員会

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価格:19,950円(税込み)
販売元:東宝
©若杉公徳/講談社 ©「みんな!エスパーだよ!」製作委員会

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価格:6,090円(税込み)
発売元:東映ビデオ
販売元:東映
©2011 WOWOW

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この人が書いていればハズレなし------古沢良太&坂元裕二

いま日本で最も打率の高い脚本家はこの人!

テレビドラマも映画も、作品の出来を大きく左右するのが脚本。いま日本で最も打率の高い脚本家は、古沢良太ではないだろうか? シーズン4から「相棒」に参加。『ALWAYS三丁目の夕日』(2005)「外事警察」(2009)『探偵はBARにいる』「鈴木先生」(2011)『少年H』(2013)、そして「リーガルハイ」(2012)……ってすげ~な! この2~3年の登板回数の多さと打率の高さに驚く。しかも涙アリ笑いアリの人情ドラマからハードボイルドな警察モノ、子どもたちの抱える“いま”を巧みに織り込んだ学園ドラマまで、守備範囲も広い。

「外事警察」※DVD

「外事警察」※DVD
発行:NHKエンタープライズ
価格:11,970円(税込み)
©2010 NHK

例えば主役の古美門を演じる堺雅人の高速回転のセリフ回しが話題の「リーガルハイ」(放映中)。変人だがすご腕の弁護士というキャラクターの造形で見せるオリジナリティーと、彼がまくし立てるセリフの笑いのセンスが鋭いこと。手段を選ばないがゆえにムチャクチャだったはずの古美門の主張が、やがて想像もしなかったある真実を突くというストーリーテリングの妙。とにかくハイレベルな脚本を、全体に面白おかしい話にまとめ上げる力量はまさにハイレベル。

連続ドラマ「リーガルハイ」

連続ドラマ「リーガルハイ」はフジテレビ系にて毎週水曜22時から放送

「最高の離婚 Blu-ray BOX

「最高の離婚 Blu-ray BOX」
価格:29,610円(税込み)
※DVD-BOXは23,940円(税込み)
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
©2013 フジテレビジョン

もう一人の脂がのった脚本家
 もう一人、いまノリノリの脚本家といえば坂元裕二だろう。「それでも、生きてゆく」(2011)「最高の離婚」(2013)「Woman」(2013)、と最近連発された連ドラはいずれも高評価で、ドラマ離れした視聴者を再びテレビの世界に目を向けさせている。登場人物それぞれをギリギリまで追い込む設定の容赦なさ、小さなエピソードの積み重ねにも血を通わせ、俳優から見応えある芝居を引き出す。「最高の離婚」での男女4人、二つのカップルの“精神的くんずほぐれつ”を描く軽妙なドラマも巧みだった坂元が、テレビドラマで見せた映画的空気をスクリーンでいかに表現するか? ぜひそこが観たい。

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浅見祥子プロフィール

映画ライター。『アパートの鍵貸します』で映画に目覚め、「キェシロフスキっていいよね」とか言ってたのに、気付いたら血のどばどば出るような映画が大好きに。映画ライターになってからも洋画・邦画のいずれにも偏らずにいようとしたのに、気付いたら邦画の仕事中心に。人生ってままならないですね! 魂の師は三池崇史塚本晋也、そして意外とデヴィッド・リンチ

大根仁三木聡園子温入江悠古沢良太坂元裕二
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