第14回:ウーマンラッシュアワーの『サンブンノイチ』談義
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トークしちゃいます。今回は、藤原竜也主演作『サンブンノイチ』を監督した、吉本の先輩・品川ヒロシ監督にウーマンの二人が直撃取材! さらに中盤から、人気急上昇のあの売れっ子芸人も飛び入り参加! 芸人の後輩だからこそ聞けたここだけの話が満載です。(取材・文:シネマトゥデイ編集部 森田真帆)
村本:映画を撮るのと漫才(の台本)を書くのってどっちが楽しいですか?
品川:漫才って未完成のまま、お客さんに見せるじゃん。それでお客さんの反応を見ながら、ウケないところを修正したりしていくでしょ。そういうふうに変化していくものだから、いわゆる完成形がないんだよね。でも映画は完成形をお客さんに観てもらわなきゃいけない。漫才みたいに修正はきかないから、それは大変だよね。
村本:うわ、何それ怖い。僕らから言ったら、どこにも出していない新ネタで、いきなり賞レース出るようなもんですよね。
品川:そうそう。で、もう一つ言ったら漫才はお客さんの顔を間近で見るけど映画っていうのは、後ろからお客さんの背中を見るわけだよね。そこには漫才では味わえない快感と怖さがある。だから似ているようでいて、全く違う。走っているのは同じでも、マラソンと短距離走くらい違う気がする。
村本:映画の中に「映画評論家とは……」っていうシーンが出てきたんですよ。あの時にね、兄さんの内面を見たような気がしたんですけど、あれってやっぱり本音なんですか?
品川:あのシーンはね、「これだけは言ってやる!」というよりは、自分の恥ずかしい部分がこぼれ出ちゃった感じ。例えば俺とおまえで映画の話をするとするじゃん。それで村本が「〇○って映画が好き」って言うと、「でも、○○が好きって言うほど映画観てないでしょ! 俺の方が全然観てるし」って返しちゃうこともあるの。でも、一方では評論家気取りで映画のことあれこれいうやつに対してむかっ腹が立つこともある。
村本:飲み会の席とかで、ようおりますよね~! そうやって語る人!
品川:うん。だから俺も飲みの席で、どっちにもなっちゃうんだよ。評論家気取りで映画語っちゃうことも、めちゃくちゃあるし。
中川:今回ね、主役ではないんですけど窪塚洋介さんがめっちゃカッコよかったです。僕、「池袋ウエストゲートパーク」のキングが好きやって、あんときの窪塚さんのカッコよさが、この映画の中でめっちゃ出てたんです。それで思ったんですけど、兄さんの映画に出ている役者さんって誰も損してないですよね。皆一人一人に見せ場があるというか。
品川:それはね、俺、長年ひな壇(※テレビのバラエティー番組で、複数段から成るひな壇の後方に座る、準レギュラー的ポジション)にいるじゃん。でさ、たまにMCの人が全然振ってくれないときがあるわけよ。すっげームカつくじゃん(笑)。だから!
村本:それめっちゃおもろい。そこやったんですか!
品川:その経験があるから、俺の映画に出てもらったときは役者にそんな思いをさせたくないと思って、全員に見せ場を作りたいんだよね。
中川:そのひな壇あるある、めっちゃわかりますわ!
品川:あとな、ドラマやっててたまに思うんだけど、一生懸命セリフを覚えていても主役の人ばっかり抜かれてて俺、頭だけしか映ってないじゃん! なんてことも結構あるわけよ。そういう苦い経験があるから、自分が映画を作るときには絶対にセリフをしゃべってる役者にカメラを向けるとか、気を使うようにしてる。
中川:めっちゃ優しいですね、兄さん。
品川:いや、嫌われたくないだけ(笑)。
村本:(ジューシーズの)赤羽健一もめっちゃおいしい役やったですわ。(東京ダイナマイトの)松田さんとかも殴られるだけなのにめっちゃおいしい役やった。
品川:だからちょっとだけの出演でも、絶対役者においしい思いをさせたいっていうのはあるんだよね。例えば、松田大輔には殴られる瞬間に白目むけって、白目作ることだけに集中しろって言った。あいつ、必死になって白目作ってさ。現場で「白目俳優」って呼ばれたからね(笑)。
村本:もう一歩踏み込んで聞きたいんですけど、兄さんの映画、いろんな芸人が出てるじゃないですか。どういう基準で選んでいるのか教えてもらえますか?
品川:よく一緒に飲んでる人が多い(笑)。
中川:それは相手のことをよく知っているから、映画で使ったら面白くなるっていうのが想像できるからってことですか?
村本:そうじゃない感じがするで……。
品川:現場で落ち着くから(笑)。例えば千鳥の大悟とかだと、いろいろ言いやすいわけ。今回なんて藤原くんが主役だけど、藤原くんなんて蜷川幸雄にバッキバキに鍛えられてきているわけで。だからいきなりそんな役者さんに「ここ、こうしてもらえますか?」なんて言いづらいでしょ? そういうときにブラックマヨネーズの小杉竜一さんがいて「芝居がハゲてますよ~」「誰がハゲとんねん!」っていうボケ&ツッコミを挟んでから「ここの芝居、こうしてくださいよ」って言った後に、「あっ、あと竜也くんさこの芝居なんだけど……」って流れに持っていけるんだよ(笑)!
村本:監督、意外に小心者ですか!
品川:そらそーよ! だからさ、例えばパラダイスが俺の映画に出るとすんじゃん。おまえちょっといつもの感じでやってみてよ。
中川:パーラダイス! プッシュプッシュ!
品川:「いやいや、おまえここ映画の現場だから!……で、竜也くんこの芝居だけどさ」って(笑)。そういう姑息(こそく)なワザを使っているわけ。でも現場に芸人がいないと、俺は映画が撮れないと思うよ。マジで。(現場に)お笑いがあるからこそ、救われているところがずいぶんあるからね。
~なんとここで千鳥の大悟が急きょ乱入!~
大悟:さっきから聞いていれば、まるで俳優・大悟じゃなく、芸人・大悟を買われたみたいになってるけどやな。たぶん照れもあると思うねん。実際に一番大事なのは何かというと、撮影が終わった後に行く食事の席でいかに兄さんを褒めるかに尽きる!
中川:全然変わらんやんけ! ただの癒着やん!
村本:ほんまや、ただのたいこ持ち大悟や!
大悟:あっこはこう撮るんっすね! すげーわ!
品川:おまえ、絶対言わねーじゃん(笑)。違うんだよ。こいつ先輩にこびたりとか絶対しないの。でもね、飲んだ後の帰り際にぼそっと「ああ楽しかった……。ええ酒やったわ」って言うんだよ。それがすっげー気持ちいいの(笑)。「こんなに生意気なやつがそんなこと言うなんて、かわいいところあるじゃん」って思っちゃう。
大悟:わしは前作の『漫才ギャング』に出させてもらったんやけど、現場にいると兄さんじゃない瞬間がほんまにあんねん。現場でわしらとふざけとる時もあるんやけど、兄さんが「今のシーン、チェックさせて」ってモニター観てる時は、ほんまに話し掛けられんオーラが出とんねん。
村本:監督の顔になるんや~。
大悟:うん、わしが言うのも何やけど「映画が好きなんやろな~」ってめっちゃ思う。
品川:でもさあ、モニター観てる時の自分ってよくメイキングでも使われるんだけど、すっげーやだ! こないだなんてNHKに出たときに、そのモニター観ている現場の俺を映したメイキングを、スタジオにいる俺がワイプで観ているという最悪な状態があって(笑)。俺マトリョーシカ!
村本:いや~、でもかっこええわ……。兄さん、ほんまかっこええ! そこでね、最後にお願いなんですけど、僕も映画出してください!
品川:おまえ……せっかくここまでいい感じにしゃべってたのに最後それ言う!? ドストレートに!
村本:だって兄さんの映画、めっちゃきてるもん! 僕も出たい!
中川:僕も! 太陽の役とかでいいから……。
品川:いや、そんな文化祭みたいな映画撮らないし! まあ「北風と太陽」撮るときは間違いなくおまえ使うよ(笑)。
大悟:言うたら、ウーマンはこないだ「THE MANZAI」でも優勝してめっちゃきてるやん。そういうのに手出しちゃうの? って思われちゃうんじゃない?
村本:何でやねん! ジャマすんな! そんなん関係ないわ!
品川:でもさあ、大悟も今や品川組の常連俳優じゃん? やっぱ俺、才能があるのに伸び悩んでるというか、くすぶっている後輩が一番かわいいんだよね(笑)。
大悟:伸び悩んでますよ! って、そこかい!
『サンブンノイチ』
映画『ドロップ』『漫才ギャング』に続く、品川ヒロシの監督第3作。木下半太の同名小説を、藤原竜也、田中聖、窪塚洋介、ブラックマヨネーズの小杉竜一という豪華キャストでスリリングに描く、痛快クライムアクション。どんでん返しに次ぐどんでん返しが、予想不可能なラストシーンへと導く。
©『サンブンノイチ』製作委員会
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。