『ALWAYS 三丁目の夕日』特集:『ALWAYS 三丁目の夕日』3部作で見る昭和と人情ドラマ
たった数十年前だけど、携帯電話やインターネットはまだ夢の話で、コンビニもない時代。現代と比べると不便だが、日本中が活力に満ち、人と人のつながりも深かった。そんな古き良き昭和の世界を再現した『ALWAYS 三丁目の夕日』3部作。昭和の名残も消えつつある今、観るたびにその印象は変化し、懐かしさと新鮮さが入り交じった不思議な感動が、何度観ても味わえる。時代の変遷やその背景を登場人物たちの成長と共に楽しもう!
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夕日町三丁目で暮らす売れない小説家の茶川竜之介(吉岡秀隆)は、この町に流れ着いた飲み屋のおかみ・ヒロミ(小雪)に淡い恋心を抱く。彼女から知人の息子だという小学生の淳之介(須賀健太)を押し付けられた茶川は、次第に淳之介ともヒロミとも絆を深めていった。一方、青森の中学を卒業し、集団就職で上京した星野六子(堀北真希)は、下町工場の鈴木オートで働き始める。社長の鈴木則文(堤真一)は短気で、六子にも厳しく当たるが、則文の妻・トモエ(薬師丸ひろ子)の優しさ、長男・一平(小清水一揮)の明るさに支えられ、六子は鈴木家に打ち解けていく。
昭和33年当時を象徴し、また劇中の時間経過を如実に表すのが建設途中の東京タワー。その骨組みが徐々に高く伸びていく本作の光景は、見慣れたタワーも新鮮に感じさせる。他にも六子が到着する古い上野駅、街を走るオート三輪や路面電車、鈴木家が買ったテレビを見に集まる近所の人々、氷を使った冷蔵庫から電気冷蔵庫への買い替えなど、当時の庶民生活を再現する描写が多数登場。
ミスター巨人軍・長嶋茂雄がデビューし、皇太子明仁親王と美智子さまの婚約発表に日本中が沸いた昭和33年。高度経済成長のただ中にあり、1万円札の登場、テレビ受信契約台数が100万台を突破、関門国道トンネル開通など、新しい時代の幕開けを感じさせる出来事も多かった。チキンラーメン発売、日劇ウエスタンカーニバル開始、フラフープの流行などもこの年。
【集団就職】地方の農村で中学を卒業した若者たちが、都市部の製造業、小売業などに就職するため大量に移動した求人・就職運動の総称。当時の中卒者は“金の卵”と呼ばれた。
【昭和30年代のテレビ】白黒ブラウン管テレビ、ダイヤルつまみ式のチャンネル、画面は14インチ程度が主流。国産初のカラーテレビは昭和35年夏に発売された。
【高度経済成長】戦後の焼け野原から国民総生産世界第2位の経済大国にまで上りつめた、昭和30年~48年頃までの日本経済の急激な成長期を指す。
【1万円札】聖徳太子の肖像が描かれた初代1万円札。当時の大卒初任給は1万3千円ほどで、かなりの高額紙幣登場だったことがわかる。
茶川は、黙って姿を消してしまったヒロミのことを思い続けながら、淳之介とつつましく暮らしていた。ある日、淳之介の実父・川渕(小日向文世)が再びわが子を連れ戻しに現れる。茶川は淳之介との生活のために、ヒロミへの思いを形にするために、芥川賞に向けて筆を執る。そのころ、鈴木オートでは親戚の娘・美加(小池彩夢)を預かることになり、すっかり家族の一員となっていた六子は、お嬢さま育ちで下町暮らしになじめない美加に優しく接する。
前作のラストで完成した東京タワーは、ここでも東京のシンボルとして街を見下ろしている。羽田空港の巨大ターミナル、まだ首都高に覆い隠されていない日本橋、浅草や有楽町といった繁華街のにぎわい、東京駅の特急こだま号、手回しローラー付きの洗濯機、16ミリ映写機の思い出の映像など、懐かしいアイテムも数々登場。オープニングで豪快に暴れるゴジラも、当時を象徴するスターだ。
この年の1月からテレビの一部カラー放送が始まり、4月の皇太子ご成婚で飛躍的にテレビが家庭に普及。安保闘争の足音が聞こえつつある中でも、王貞治のプロ入り、長嶋茂雄の天覧ホーマー、東京オリンピック開催決定などにスポーツ界が沸き、「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」創刊、南極観測隊が樺太(からふと)犬のタロ・ジロと再会を果たすなど明るいニュースも多い。
【東京の下町】江戸時代に高台の武家地域を“山の手”、低地の町人の暮らす地域を“下町”と呼んだことに由来。古風な街並みや人情味あふれる庶民文化が残る地域、昔ながらの町工場や商店の多い地域などを呼ぶこともある。劇中の夕日町は港区を想定しているが、商店街などの街並みは架空で、あくまでイメージの中の下町を再現している。
【手回しローラー付きの洗濯機】昭和30年代に入って庶民の暮らしにも電気洗濯機が普及。付属の手回し式のゴムローラーは洗った衣類を絞って脱水するためのもの。
【特急こだま号】昭和33年11月から東海道本線の東京-大阪・神戸間を走った国鉄(現・JR)初の特急電車。こだまの名はのちに東海道・山陽新幹線に受け継がれた。
【安保闘争】日米安全保障条約改定に反対した民衆による大規模な政治闘争。デモは昭和35年夏にピークを迎え、内閣退陣により一旦収束する。
晴れて夫婦となった茶川とヒロミは、高校一年生になった淳之介との3人暮らし。茶川は相変わらず売れない小説家で、身重のヒロミは飲み屋を開いて夫を支える。淳之介は東大を目指して勉強に励んでいたが、小説家になる夢を捨てられなかった。一方、鈴木オートの海外進出の野望を抱く則文は、反抗期の一平が家業を継がないと言いだし、トモエと2人で気をもむ。自動車修理の腕前も上がった六子は、青年医師の菊池(森山未來)に恋心を抱いていた。
東京オリンピック開催に街も人も浮き足立ち、夕日町にも至るところにお祭り騒ぎの跡が見られる。開業まもない東海道新幹線、一平が夢中になるエレキギター、この年に放送が始まった人形劇「ひょっこりひょうたん島」、みゆき族の流行などが世相を反映したアイテムとして描かれ、人気漫画「おそ松くん」のキャラクター、イヤミの名ぜりふ「シェー!」もポーズ付きで登場する。
新幹線だけでなく首都高と東京モノレールの開通など、やはりオリンピックに合わせたインフラ整備が急ピッチで進んだ昭和39年の東京。海外旅行の自由化、電卓の発売、富士急ハイランド開園、かっぱえびせんやガーナミルクチョコレートなどの人気お菓子も登場し、日本人のライフスタイルの大きな変化を象徴するような出来事がいくつも見られた。
【東京オリンピック】アジアで初めてのオリンピック開催となり、過去最高(当時)の93の国と地域が参加。日本は金16個を含む29個のメダルを獲得した。
【ひょっこりひょうたん島】昭和39年から5年間にわたってNHKで放送されたミュージカル人形劇。海原をさまよう“ひょうたん島”の住人たちの冒険を描く。
【みゆき族】東京・銀座のみゆき通り周辺にたむろしていた若者たちを指す流行語。既存の秩序にとらわれない自由なファッションや行動が注目された。
【おそ松くん】日本を代表するギャグ漫画家・赤塚不二夫の代表作の一つ。六つ子の長男・おそ松が主人公だが、フランスかぶれのイヤミなど個性的な脇役たちが主役を食う人気を獲得した。
『ALWAYS 三丁目の夕日』
【WOWOW プライム】6月7日(土)13:00-15:15
【WOWOW シネマ】6月14日(土)11:00-13:30 / 6月20日(金)16:30-19:00 / 6月23日(月)21:00-23:15
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
【WOWOW プライム】6月7日(土)15:15-17:45
【WOWOW シネマ】6月24日(火)21:00-23:30
『ALWAYS 三丁目の夕日'64』
【WOWOW プライム】6月7日(土)17:45-20:10
【WOWOW シネマ】[3D版]6月13日(金)18:30-21:00 / [3D版]6月17日(火)8:45-11:15 / 6月25日(水)21:00-23:30
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