第17回:ウーマンラッシュアワーの『思い出のマーニー』談義
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、村本が心待ちにしていたスタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』をいち早くななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部 森田真帆)
村本:この映画はもう、「あ、なるほど」と思いましたね。宮さん(宮崎駿)がね……、おっとすみません、つい鈴木敏夫プロデューサー風に呼んでしまいますが。
中川:「宮さん」て誰やねん、友達か!
村本:宮さんが引退したことで、正直、僕はちょっと不安だったんですよ。ジブリファンとしては! でも、この作品にこれからさらにジブリが繁栄していくぞ、という気概を感じましたね!
中川:めっちゃ上からやな(笑)。まあでも、明るい未来を感じたってことやね。
村本:うるさい、おまえは今日はもう黙っとけ! あのねえ、この映画はジブリファンが「あっ、このシーン、(過去の作品の)ここに似てるっていうのが結構多いんですよ。主人公の杏奈が田舎にやって来て、村の女の子たちと接するとこは『魔女の宅急便』ぽかったし、景色がファンタジックにバアッと変わっていくシーンは『ハウルの動く城』みたいで、絵を描いているおばあちゃんは『風立ちぬ』みたいなね。ジブリファンにはたまらん映画やと思うんです。
中川:なるほどね。いいとこ全部詰め合わせになったみたいな感じや。
村本:おまえが言うとめっちゃ安く聞こえるわ! もう僕はね、ジブリをめちゃめちゃ愛していますから! 中川みたいにボーッと観ているんじゃなくて、そういうふうに楽しめてしまうわけですよ!
村本:今回のヒロインは、これまでのジブリ作品のヒロインの中でも群を抜いて卑屈な子でしたね。まさに今の時代にいそうなタイプ。僕にも実は杏奈みたいなところがあるから、結構共感できるというか。僕も、杏奈ぐらいの年の頃には、学校の校庭の隅にあるベンチに腰掛けて落ち葉触っていたりしましたからね。落ち葉の上におった虫を、ほかの落ち葉の上に引っ越しさせたりしてました。
中川:ええ、何それ。暗っ!
村本:おまえはどちらかというと、寡黙なおじちゃんに「何かしゃべれ!」って言う村のクソガキと同じタイプやろ!
中川:せやな。傷つけることを恐れないタイプやったから(笑)。でも、杏奈もなかなかやったで。ちょっと仲良くしてくれた子にも、めっちゃひどい言葉ぶつけてたし。びっくりしたわ。
村本:「太っちょブタ!」言うとったな。でも、ホームステイ先のおばちゃんのセツさんも、なかなかの太っちょやからね。「太っちょブタ」ネタは、間接的にセツさんを傷つけていたんちゃうかな。ほら、そういう事故ってたまにあるやん。ノリで「ハゲ!」って言ったら、後ろに本物のハゲがおった……! っていうパターン。
中川:寺島進さんが声をやってるセツさんの旦那も、めっちゃ明るかったなあ。自分の嫁、間接的に太っちょブタなのに、ハッハッハッて笑ってて。何かあの旦那さんにめっちゃ癒やされたわ。
村本:せやな。素晴らしい事故対応やったわ。
村本:でもやっぱりタイプはマーニーやったわあ。
中川:え! 何でやねん! あんだけ杏奈ちゃんの気持ちわかるって言ってたくせに!
村本:いや、ちょっと杏奈は自分に似過ぎていて逆にキツい。同族嫌悪なんですよ。映画観ていても何回かイラッとしたときがあったんですよね。例えば、さっきおまえも話していたけど、田舎でできたお友達にちょっといじられたら、怒ってぷいっていなくなっちゃうシーンあったでしょ。「何この女、めんどくさ!」って思っちゃうんですよね(笑)。というのも、どちらかというと僕が飛び出したいタイプなんで。
中川:いや、おまえもめんどくさいわ!
村本:僕が飛び出して、何なら追い掛けてこなかったことにまた怒りを覚えるタイプなんでね。杏奈ちゃんと僕がけんかしたら、どっちも飛び出して行きたがって収拾がつかなくなってしまうんですよ、きっと!
中川:マーニーはどこがよかったん?
村本:あの子、お金持ちでめちゃ楽しそうにしている割に、ふっと寂しそうな表情を見せんねん。その光の中にある影みたいなのがたまらなくて、抱きしめてあげたくなりましたね。おまえもマーニー派やろ? どちらかというと。
中川:いや、僕はマーニーのお母さんがいいわ。めっちゃド派手でパーティー三昧で。めっちゃストライクやった。
中川:入江のところのマーニーのお屋敷、めっちゃ不思議やったなあ。周りには見えていないけど、杏奈にだけはマーニーの姿が見えるというね。
村本:この映画観て思い出したんですけど、実は僕も幼いころに「マーニー」体験をしているんですよ。
中川:えっ。何それ。
村本:僕が育ったところは田舎でね、昔の防空壕(ごう)が残っていたから、夏休みになるとよくそこで遊んでいたんです。そこでアメリカ人の幽霊と友達になった気がするんですよ。金髪の米兵さんと話していた記憶があるんですけど、それが現実だったかどうかはわからない。いつの間にか思い出の中で、想像を現実にしちゃっている可能性もあるわけなんです。そういうことって子供のころにあるんですよね。僕にとっては、「思い出の米兵」です。
中川:空想の友達みたいなことやろ。
村本:僕、寝る時も中学上がるまで、タンスとか机とか、電球とか全部に「おやすみ」って言って寝てたんです。ほんまに。僕だけは“彼ら”が本当はしゃべれると思っていて、でも親にバレたら笑われると思っていたから、小声で「おやすみ」ってしゃべりかけててん。
中川:どんだけ純粋やねん!
村本:純粋じゃなかったおまえには、絶対になかったやろうな!
中川:まあ小学生くらいのころは、二十歳くらいの素っ裸の女性に囲まれてブドウ食べさせられる妄想とかしてたけどね。最近はもう無理やね。
村本:おまえ、今回言うこと全部最悪やな! でも芸人ってみんなそうなんですよ。一つのネタをしゃべっていくうちにどんどん盛っていっておもろくなっていくでしょ。でも話せば話すほど、どこまでが現実だったかわからなくなってくる。話しているうちに妄想になるんですよ。だから、僕はこの映画がめっちゃよくわかりましたわ。だからこの映画はね、「思い込みのマーニー」にした方がいいと思うんですよ。
中川:絶対嫌や、そのタイトル!
『思い出のマーニー』
イギリスの同名児童文学を原作に、舞台を北海道の湿地へと移し、療養でこの地を訪れた少女が過ごすひと夏の不思議な体験を描いたファンタジー。 『借りぐらしのアリエッティ』に続き長編映画監督2作目となる米林宏昌がメガホンを取り、高月彩良、有村架純、松嶋菜々子、寺島進、根岸季衣、森山良子、黒木瞳ら豪華キャスト陣が声を担当している。
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2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。