『喰女-クイメ-』特集<美雪編>幽霊よりもコワい女の危険信号
『悪の教典』『一命』の三池崇史監督による、「四谷怪談」をモチーフにしたホラー映画『喰女ークイメー』。特集2弾では、現実世界で展開される、恋人で共演俳優の浩介(市川海老蔵)に裏切られたスター女優・美雪(柴咲コウ)の物語をフィーチャー。徐々にエスカレートする美雪のアブない行動から、心理状態を分析します。この恐怖は全女性にとって人ごとではありません!
舞台「四谷怪談」のキーアイテムとなる「くし」。ヒロインのお岩を演じる美雪は、誰もいない稽古場に忍び込み、その大事な小道具をこっそり盗み出す。自宅でくしを使う姿は、まるでお岩の魂が美雪の心にすみついてしまったかのよう!
「四谷怪談」の物語は、実は美雪の置かれた状況にそっくり。出世のために裕福な若い女性のもとへ走る夫に苦しめられる「お岩」は、共演者の若手女優と浮気をする恋人・浩介に追い詰められていく美雪そのものだ。美雪のように現実と虚構があいまいになるのは、異常に見えて実はよくあること。例えば、まだ成就していない恋愛をあれこれ想像したり、願望を抱いたりすることは、「虚構のキャラに自分をダブらせる」という心理と似ているかもしれない。
ある晩、美雪の家を訪れた恋人の浩介がふとゴミ箱に目を移すと、そこには検査済みの妊娠検査薬が山のように捨てられていた! 別の日には、幼い子供を連れた若い夫婦を見て、浩介の結婚観を探るような美雪の発言もあり……。
ひたすら浩介の帰りを待つことが日常となりつつある美雪。そんな彼女にとって妊娠は恋人をつなぎ留めるための最後の頼みの綱!? たとえ恋人同士であっても、結婚や妊娠への願望を口にしたりほのめかすのは、場合によってはあだになりかねない行動。あるいは、そんなアナタにドン引きするような相手には、見切りをつけた方がいいのかも。
ある日はパスタを大量にゆで、またある日はとても一人では食べ切れないような量の料理を作る美雪。いつ帰るのかもわからない恋人のためにテーブルに何皿もの料理を並べ、一人静かに食事を取る美雪の姿は哀れ過ぎる……。
若い女優のもとに通う浩介を家で待つ美雪の孤独は増すばかり。その孤独や飢餓感が、食べ切れないほどの料理を作るという過剰な行動に表れている。恋人がいない、恋人と会えないといったことから孤独や飢餓感が高じれば、誰だってこんな奇行に走らないとも限らない。 恋愛依存症の人は、仕事に打ち込んだり、気が紛れる趣味を持って自分を解放することも必要。
さらに美雪がとった奇行。それは大量のナイフやフォークを沸騰した鍋でぐつぐつと煮込むこと。暗い部屋、鍋の中で煮えたぎるナイフやフォークはこれから起こる惨劇を予感させて、不気味に感じずにいられない!
ナイフやフォークを煮沸するのは、何かを傷つける衝動に駆られているからなのか……? 傷つけるのは自分か浩介か、はたまた浩介の浮気相手か……。美雪やお岩のように愛情が嫌悪や憎しみ、恨みへと転化することは、ささいなきっかけで誰にでも起こり得ること。それだけに「かわいさ余って憎さ100倍」とならないように気を付けたいもの。本音をため込み過ぎるのは危険です!
美雪の家には眠りに来るだけという、浮気者の浩介。思い詰める美雪を浩介が重荷に感じているせいか、二人が一緒に過ごす時間はなくなる一方。そんなある日、美雪は洗面所の鏡に額を強く打ち付けるという過激な行動に……!
浩介への怒りや悲しみを抑え切れず、ついに自傷行為に及ぶ美雪。どうやら完全に精神のバランスを崩している様子。落ち着きのある女性でも、いったん狂気をまとったらエキセントリックな行動に走る可能性は大。美雪のように一人で抱え込んでしまうと、自分の異変に気付くことができず、“壊れる”危険性も。そんな時にはやっぱり愚痴を言える同性の友達が大切です。
追い詰められた美雪は、真っ暗なバスルームの中、フォークで下腹部を突き刺すという凶行に! 血まみれでベッドに横たわる美雪を見てうろたえる浩介。そんな彼が下した決断とは……!?
浩介をつなぎ留めるためならどんなことでもする、女の執念の権化のような存在と化した美雪。恋愛のために人生を棒に振るなんてもっての外。報われない愛にしがみつくのは不幸なことだと気付いて、自分を大切にしましょう。
© 2014「喰女ークイメー」製作委員会