第19回:『トランスフォーマー/ロストエイジ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』
最新!全米HOTムービー
世界の映画産業の中心、アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新!全米HOTムービー」。今回は、『トランスフォーマー/ロストエイジ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』を紹介します!(取材・文:吉川優子、細谷佳史)
■『トランスフォーマー/ロストエイジ』
2007年から2011年にかけて公開されたこれまでの3作で、全世界興行収入27億ドル(約2700億円)近くをたたき出している驚異的なSFアクション大作『トランスフォーマー』シリーズ。第4弾となる今作も、7月下旬時点で全米で2億3,700万ドル(約237億円)を超え、全世界では9億ドル(約900億円)以上の大ヒットとなっている。特に、後半の舞台となる香港で一部撮影されたこともあり、中国で外国映画史上最高の2億8,570万ドル(約285億7,000万円)という興収を上げているのも話題だ。(1ドル100円計算、数字はBox Office Mojo調べ)
今回、主要キャストを一新させたマイケル・ベイ監督は、前作『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』に主演した『テッド』のマーク・ウォールバーグと再びタッグを組んだ。彼の娘役にニコラ・ペルツ、その恋人役にジャック・レイナーと新人を起用。また、サムライ型のオートボット(正義のトランスフォーマー)であるドリフトの声優を渡辺謙が務めている。
マークの役どころは、廃品業を営む破産寸前のメカニック兼発明家。妻を亡くし、一人娘を男手一つで育ててきた。たまたま手に入れたボロボロのトラックが、オプティマスプライムだったことから、娘とその恋人と共に、大きな陰謀に巻き込まれることになる。
一番の見どころは、やはりベイ得意の最新VFXを駆使した壮絶なアクションシーン。オプティマスプライムやバンブルビー、新たなディセプティコン(悪のトランスフォーマー集団)、さらに恐竜がモチーフの第三勢力のダイナボットなどが登場し、死闘が繰り広げられる。オープニング週末の観客の64%は男性だったそうで、男の子から大人の男性まで、夏の超大作ならではの醍醐味(だいごみ)を体験するために、映画館に押し掛けた。世界興収10億ドル(約1,000億円)突破は確実とみられており、男女共に人気のあるマーク・ウォールバーグのキャスティングは大成功したもようだ。
『トランスフォーマー/ロストエイジ』は8月8日全国公開
■『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
次々と大ヒット作を生み出しているマーベルコミックス原作映画の最新作で、同名コミックを基にしたスーパーヒーロー物。マーベル・シネマティック・ユニバースの10作目に当たる。
たまたまパワーストーンのオーブを盗んだ、スター・ロードと名乗るトレジャーハンターのピーター・クイルは、極悪なロナンに追いかけられることになるが、そのオーブの本当の威力を知り、ならず者たちとチームを組んで宇宙を守るために戦うことになる。
地球人の母と宇宙人の父を持つ主人公のピーター・クイル役にクリス・プラット。『her/世界でひとつの彼女』や『LEGO(R)ムービー』に出演しており、次回作は『ジュラシック・ワールド(原題) / Jurassic World』という、ハリウッドで今最も注目されている若手俳優だ。ピーターが惹(ひ)かれる緑色の美しき暗殺者ガモーラにゾーイ・サルダナ、樹木型ヒューマノイドのグルートにヴィン・ディーゼル、アライグマのような宇宙の無法者ロケットにブラッドリー・クーパー、その他ベニチオ・デル・トロ、グレン・クローズ、ジョン・C・ライリーなど豪華キャストが出演。メカの天才でもあるアライグマのロケットが、巨大な銃をぶっ放す姿が強烈で、人気キャラになること間違いなし。監督は『スリザー』や『スーパー!』のジェームズ・ガン。
マーベル作品の中で最もコメディー色が強い愉快な作品ながら、意外にほろりとさせられるところもある。また、音楽の使い方も最高にいい。公開前に続編の製作も発表され、大ヒット間違いないだろう。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は9月13日公開
■『猿の惑星:新世紀(ライジング)』
『猿の惑星』シリーズをリブートした『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の続編で、監督は降板した前作のルパート・ワイアットから、3作目も手掛けることになった『モールス』などのマット・リーヴスに代わった。前作から10年後が舞台で、ウイルスが世界中にまん延し、人類は全滅したのかと思わせるところから始まる。
猿たちの指導者となったシーザーは、サンフランシスコ近郊の森の中で平和な猿の社会を築き、大切な家族を持つようになっていた。一方、市内の廃虚に住む人間の生き残りたちは、電力を復興させるため、猿たちが住む地域にある水力発電設備を持ったダムに近づこうとする。その計画の中心人物的存在のマルコムは、猿たちと信頼関係を築こうとするが、猿社会の内部抗争も絡み、猿と人間の共生は簡単に崩れることになる……。
元建築家のマルコム役に『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェイソン・クラーク、彼の恋人の元医師にケリー・ラッセル、サンフランシスコの生存者グループの指導者にゲイリー・オールドマン。
キャストは皆良いが、中でも素晴らしいのはシーザー役のアンディ・サーキスだ。通常はグリーンバックなどで撮影することが多いパフォーマンス・キャプチャーを、本作ほど大規模にロケ撮影で使ったのは初めてということだが、前作にも増して、全ての猿の動きや表情が非常にリアル。シーザーの父親としての優しいまなざしや、指導者としての厳しさなど、アンディの豊かな感情表現がそのまま生かされていて見事。映画の冒頭で描かれる猿の世界はとても美しいが、人間と猿の遭遇シーンや、戦闘シーンなど、緊張感がすさまじい。批評家からの評価も非常に高く、見逃せない作品だ。
『猿の惑星:新世紀(ライジング)』は9月19日全国公開
【今月のHOTライター】
■吉川優子
俳優や監督の取材、ドキュメンタリー番組や長編映画の製作など、幅広く映画に関する仕事を手掛ける。最近の作品は「ハリウッド白熱教室」など。
■細谷佳史(フィルムメーカー)
プロデュース作にジョー・ダンテらと組んだ『デス・ルーム』など。『悪の教典 -序章-』『宇宙兄弟』ではUS(アメリカ側)プロデューサーを務める。