『永遠の0』特集:男泣き続出!?『永遠の0』ヒットの理由(ルビ:ワケ)を検証!
岡田准一を主演に迎え、百田尚樹のベストセラー小説を映画化し、原作同様大ヒットを記録した映画『永遠の0』。太平洋戦争や特攻隊について描きながらも幅広い世代の心をとらえ、老若男女を問わず魅了したヒットの理由とは? 三つのポイントから検証する。
「海賊とよばれた男」が2013年の本屋大賞に輝いたほか、「ボックス!」や「モンスター」などの小説が次々と映画化。一作ごとに異なるテーマで作品を発表し続け、常に世間の注目を浴びてきた作家・百田尚樹。彼のデビュー作「永遠の0」は、太平洋戦争や特攻隊といった重いテーマを扱いながらも、その根底にある主人公のゆるぎない家族への思いが、普段ならその手の作品を避けて通るはずの女性や若者たちの支持を集め、累計発行部数450万部を超える大ベストセラーとなった。
そして、百田作品の中でも最も人気を集める感動作の満を持しての映画化は、撮影前から大きな話題に。多くのファンが期待に胸を膨らませ、劇場に足を運んだ。
メガホンを取った山崎貴は、VFXを得意とする監督。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズでは、実写映像とCGを組み合わせ、昭和30年代を見事によみがえらせたことでも話題を呼んだヒットメーカーだ。本作でも実際の空撮映像に実物大レプリカの零戦を合成し、太平洋戦争中の零戦乗りたちの空中戦を鮮やかに再現。「少しでも本物を入れることで臨場感が増す」という監督のこだわりが見られる。
しかし、彼がヒットメーカーといわれるゆえんは、万人の心を刺激する絶妙なポイントを絶対に外さないで描く人間ドラマにこそある。本作には、主人公・宮部が戦時中、たった一度だけ帰還し妻と娘と過ごすシーンなど、原作にはない場面が登場するが、長編小説を短く集約する映画において、その効果は終盤に現れる。戦争を描きながらも極上の人間ドラマを浮き彫りにしたのは、そんな山崎監督の手腕の賜物(たまもの)といえよう。
誰よりも抜きん出た操縦技術を身に付けながらも、同僚には「臆病者」呼ばわりされた主人公・宮部久蔵。彼は決して自身の信念を曲げることなく、口汚くののしられながらも「生きる」ことに全力を注ぎ続けた。公平で温かい人柄ながら秘めた芯の強さは、やがて彼を臆病者呼ばわりした者たちの心さえ少しずつ溶かしていく。
宮部は戦時中、たった一度しか会えなかった妻と生まれたばかりの娘を心底愛していたからこそ生還したいと強く願い、また、自ら指導し育てた若い部下の命も大切に思っていたからこそ、特攻で命を散らせてほしくないと考えていた。そんな彼の行動や思いを知れば知るほど、生きることに執着した男が最後に下した「決断」に涙した人が続出。口コミやリピーターによるヒットへとつながった。
【WOWOW シネマ】
10月11日(土)21:00-23:40 / 10月19日(日)13:15-15:45
【WOWOW プライム】
10月12日(日)20:15-23:00 / 10月16日(木)19:30-22:00 / 10月26日(日)17:00-19:30
<ストーリー>
祖母の葬儀の席で会ったことのない実の祖父・宮部久蔵(岡田准一)の存在を聞いた佐伯健太郎(三浦春馬)。進路に迷っていた健太郎は、太平洋戦争の終戦間際に特攻隊員として出撃した零戦パイロットだったという祖父のことが気に掛かり、かつての戦友たちを訪ねる。そして、天才的な技術を持ちながら“海軍一の臆病者”と呼ばれ、生還することにこだわった祖父の思いも寄らない真実を健太郎は知ることとなり……。
監督: 山崎貴
キャスト:岡田准一、三浦春馬、井上真央、染谷将太、夏八木勲ほか
©2013「永遠の0」製作委員会