『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』の制作現場に潜入!【特集第1弾】
9月某日、世界的な人気を誇るキャラクター、ムーミン誕生の地フィンランドで作られた初めての長編手描きアニメーション映画『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』の制作現場に潜入し、フランスのグザヴィエ・ピカール監督と共同でメガホンを取ったハンナ・ヘミラ監督に制作の裏側や作品について話を聞きました。
■空港到着後、早速ミキシングスタジオへGO!
石畳とレンガ造りの建物が美しいヘルシンキ市内のスタジオ。外壁には母国バージョンの『劇場版ムーミン』ポスターが掲示されていました。
外国らしい雰囲気たっぷりの入り口の扉を開けると……
スタジオ内では音声ミキシングの真っ最中でした。
2人の男性が意見を出し合いながら、コンマ何秒刻みで微調整を繰り返しています。納得がいくまで何度も何度も同じシーンの調整を繰り返す姿に、作品への愛を感じずにはいられませんでした。
■ハンナ・ヘミラ監督を直撃!
Q:監督をすることになった経緯は?
2010年に「ムーミン」の生みの親トーベ・ヤンソンさんのめいのソフィアさんが「誰もトーベのオリジナルコミックで映画を作ろうとしないのよね」と少し残念そうに話していて、「何かいいアイデアはないかしら?」という相談を受けたんです。そのときに、フランスではもともとコミックから映画にすることを歴史的にやってきたし、ちょうど優秀な人が1人いると紹介して、2人で2分半の試験的な映像を作ったんです。そうしたら映画化のゴーサインが出て、制作が始まりました。
Q:原作となるコミックの1編はどのように選んだのですか?
映画を作るときに、よりムーミンを知ってもらうにはどうしたらいいかと考えて、ムーミン谷にいるより全然違うところに行って習慣や文化の違いにぶち当たったほうが、ムーミンの魅力がわかりやすいと思ったんです。今回ジェットセッターが出てきますが、ムーミンたちとは全然違う人たちが出てきた方が、ムーミン谷やムーミンたちのことをよくわかってもらえると思って選んだんです。
Q:ご自分がムーミンの母国フィンランドで初めてとなる長編手描きアニメの監督をすることになると思っていましたか?
全く想像していなかったですね。映画の世界に入ったわたしの最初の仕事はパペットアニメーションだったんですが、当時2、3歳の娘が「どうしてそれをやっているの? ムーミンをやればいいのに」と言っていて、まさか20年後に本当に実現するなんて、思ってもみなかったです。
Q:今作のオリジナリティーはどこにあると思いますか?
まず手描きにした理由をお話しすると、トーベさんの原画が持っている力はどうしてもコンピューターでは描き出せないと思ったからです。だから絶対に手描きでやりたかった。もう少し特色を言うと、手作りということです。現在は3Dアニメの傾向にどんどん移っていますが、その中であえて手作りにこだわったこと、また、色の世界にこだわったことです。ムーミンはこれまでにも映像化されてきましたが、今回は全く違う色を採用しています。原作コミックは白黒の世界です。つまり、自分たちで色を作ることになります。色の世界を考えたときに、まずトーベさんに敬意を表したいと思いました。トーベさんのコミックというのは、大人のユーモアのある作品なんです。だから大人にも子供にも観てもらえる色使いを意識しました。あと、音も全て作っています。例えば、花火が上がるシーンでは、実際に花火が上がっているときの音を使っているのではなくて、自分たちで作った音を使用しています。そういう意味では、音も時間をかけて作っているので注目してもらいたいですね。
Q:日本で公開されることについてどう思っていますか?
(日本語で)ドウモアリガトウ。本当に素晴らしいことです。日本には非常に高いアニメーションの技術がありますし、観客も目利きの方が多いと思います。そんな環境で観てもらえるのは光栄です。わたしたちがベストを尽くした作品をぜひご覧いただきたいと思います。
Q:好きな日本のアニメはありますか?
宮崎駿監督の作品が特に好きです。日本はほかにも本当に素晴らしいアニメーションを生み出していると思います。
Q:最後に、監督が好きなムーミンのキャラクターは?
スティンキーね。
『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』は2015年2月13日より全国公開
『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』オフィシャルサイト
『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』作品情報
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(編集部・小松芙未)