第21回:ウーマンラッシュアワーの『ベイマックス』談義
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は『アナと雪の女王』のディズニーがマーベルとタッグを組んだ『ベイマックス』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部 入倉功一)
村本:ベイマックスのロボットらしからぬおせっかいな感じ、お母さん的な感じがいいよな。
中川:主人公のヒロくんにはお母さんがおらへんから、(ベイマックスの)お母さんを教えてあげたいみたいな感じが伝わってくる。
村本:こういう(癒やし系の)キャラクター、僕はむっちゃ好き。家に欲しいですね。普段ツイッターでたたかれまくっているから、そのたびに出動してもらって。
中川:あれってやっぱり傷ついてんの?
村本:傷つくから言い返すわけ。だから、しょっちゅう出動してケアしていただかないと!
中川:炎上するたびに出動(笑)。
村本:おまえは癒やしにならんからな。悪くなったときのベイマックスやから。
中川:あの、目が赤くなったバージョンってこと?
村本:疲れたときは「パーラダイス!」って癒やしてくれるけど、高校時代はカラーギャングやったからな。「池袋ウエストゲートパーク」に憧れて。それに、いつも口が乾いているから、近づかれるとメチャクチャ臭いという難点もあるし……。
村本: ディズニーの中でも、特にかわいいキャラクターが出てきたんちゃう? ただ、これを作ったヒロのお兄ちゃんは、ベイマックスにロケットパンチ(※ベイマックスの拳が狙った相手に飛んでいく武器。石の像も1発でコナゴナに!)を付けられてどう思っているのか……。まさか、ロケットパンチが付くなんて思わんやろ。
中川:ヒロくん、なかなか危険な思想の持ち主やったな。
村本:彼はキレたらやばいぞ。敵に奪われる小さいロボット(※人の考えに合わせて自由自在に形を変える小さいロボットの集合体)もヒロくんが作ったものだし。平和に使えばいいけど、ベイマックスにロケットパンチ付けるようなやつは、危険な武器として使うような気がする。
中川:そんなヒロくんを、お兄ちゃんが良い方向に導こうとしていたのが良かったな。
村本:僕には弟がおるんやけど、うちの場合は映画とは逆で僕がヒロで弟がタダシやね。そんで、ヒロの武器は発明やけど僕の武器はツイッター。人を喜ばせるものでもあるし、使い方を誤ると人を傷つけてしまうという。おまえなんか兄ちゃんがいるし、まさにこんな感じやったんちゃう? カラーギャング時代の自分を良い道に導いてくれたのはお兄ちゃんやろ。
中川:僕が家出をしたら、絶対迎えに来てくれていたしな。
村本:なのに、自分はお兄ちゃんの部屋でエッチな本を捜すという……。
中川:そうそう、小さいとき捜したわ~! 1冊だけ見つかったんやけど、それが忍者とお殿様がエッチする、いわゆるBL(ボーイズラブ)本ってやつ(笑)。で、つい見てしまった僕も、そっちの世界に引き込まれて……。
村本:何の話や! でも、僕にもこんなお兄ちゃんがおったら、こんな修羅の道には入らんかったかもしれん。お兄さんが亡くなってからヒロくんが道を踏み外そうとしたときに、ベイマックスの胸のモニターにお兄さんの映像が出てくるやん。あそこは感動したな~。ベイマックスはお兄ちゃんなんや、って! ベイマックスはヒロくんにとってお兄ちゃん代わりやから、いわゆる「大切な人」を指しているんやろうね。
村本:『となりのトトロ』みたいなジブリの雰囲気があんのもいいよな。ジブリ、ピクサー、ヒーロー物と、男の子が好きな要素が全部入っていて、観ていて常に面白い。しかも、トトロとかは実際にはおらんやろって思うやん? でも、ベイマックスは近い将来、現実にいそうな感じがする。
中川:日本とサンフランシスコを融合した「サンフランソウキョウ」の街も良かった! 東京タワーとかかに道楽の看板(※映画ではえびになっている)とか、あ、見たことある! みたいな景色がポンと出てきて、看板なんかに日本語が入っているのもうれしかったな。あと、癒やし系のキャラクターは、女の子も楽しめるんちゃうかな。
村本:中盤からの、まさかの展開に突入するハンドルの切り替え方にも注目していただきたい。
中川:僕は、自分の奥さんがベイマックスに似ていると思った。いつも僕を見張って、カロリーを計算してご飯を作ってくれて、GPSとかで居場所調べて、悪い所に行こうとしたら止めてくれるみたいな。そんな感じで、常に女性の危険とかから守ろうとしてくれる辺りが似てんねん。
村本:ベイマックス、そんなんちゃうから!
村本:絶対、今の世の中にはベイマックスのようなやつが必要! この映画は、ツイッターとかSNSで人が傷つきやすい時代に、生まれるべくして生まれた作品ですよ。これから、誰かが傷ついたときなんかに「ベイマックスする?」みたいな言葉がどんどん広がるかも。で、10年、20年後とかに「実は『ベイマックス』という映画があって、そこから生まれた言葉なんだよ……」みたいな展開にならへんかな。
中川:誰かが誰かのベイマックスになるみたいな(笑)。
村本:実は、僕にもそういう存在が一人おるんですよ。疲れたときには優しい声を掛けてくれて、寂しい夜には常に一緒にいて抱き締めてくれるっていうね。体重は80キロぐらいなんですけど。3か月に1度ぐらい会っています。……まあ、母親なんですけど。ネットでたたかれていたりしても、母親だけは味方でいてくれるんですよね。「あんたが笑顔ならいいんだよ」って言ってくれますし。
中川:確かに、おまえの芸風に対して、何も言ってけえへんしな。
村本:本当に優しいので、僕にとってはベイマックスですね。
『ベイマックス』
マーベルコミックスのヒット作 「BIG HERO 6」を基に、ディズニーが放つアドベンチャー。架空の都市サンフランソウキョウを舞台に、並外れた頭脳を持つ少年ヒロが、生前に兄が開発したロボットのベイマックスと一緒に死の真相を暴こうとする。メガホンを取るのは、『くまのプーさん』のドン・ホールと『ボルト』のクリス・ウィリアムズ。随所にちりばめられた日本のカルチャーへのオマージュに加え、白くて大きな体を持つベイマックスの愛らしさにも注目。
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2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。