第85回『あしたになれば。』小関裕太
イケメン発掘調査隊
Q:大阪・南河内地区で青春をおう歌する主人公の野球少年・大介を演じましたが、完成版はご覧になりましたか?
はい。まだ音楽が入る前の段階のものを父親と一緒に観ました。見終った後に父親が、「青春っていいね……」って言いながら泣いていました。あのときの父は、息子を観ていたからそうなったのだと思うので、ほかの方がこの作品を観たらどう感じてくださるかわからないんですけどね(笑)。父は本気で感情移入してくれました。きっと、僕が映画に出ていること自体がうれしかったんだと思います。
Q:ヒロイン・美希を演じた黒島結菜さん、美希の同級生・玉子を演じた富山えり子さんとは、宮藤官九郎さん脚本の学園ドラマ「ごめんね青春!」でも共演されていましたよね?
3人とも、この映画の撮影中にドラマ出演が決まったんです。僕はドラマの中で「コスメ」というあだ名の役(トランスジェンダーの高校生)を演じたのですが、キャスト表の役名の横に「ゲイ」って書いてあって、黒島さんと富山さんに、「今度の僕の役、ゲイみたいなんだよねー」って話したりしていました(笑)。ただ、映画では真面目な野球少年だったのに、ドラマでいきなり面白キャラを演じることになったので、黒島さんたちにはちょっと恥ずかしかったです(苦笑)。
Q:映画出演にあたって、南河内の方言をかなり勉強したのでは?
キャストの中に関西出身の方がいたので、現場では休み時間中も関西弁でしゃべるようにしていました。南河内弁って、大阪の中でも一番どぎついといわれている地域なんですけど、最近は意外と普通の関西弁らしいんです。三原(光尋)監督からも「現在のリアルを描きたい」と言われていたので、僕もなまりが強くない関西弁を話していました。「ごめんね青春!」の現場でも、共演者の錦戸(亮)さんや重岡大毅くんとかが関西出身で、休憩時間は関西弁が飛び交っているんですよ。その中に混じって僕も関西弁でしゃべってみたりしていました。「おまえ、関西ちゃうやん!」とか言われながらも、めげずに(笑)。
Q:同世代の役者さんと一緒の現場はどうでしたか?
とにかく楽しかったです! 今までは(子役出身なので)自分が最年少という現場が多かったんですけど、今年に入って同世代のみんなと一緒の現場が多くて、本当に新鮮でした。黒島さんはすごくクールで、周りのことをよく見る人。僕より年下だけと尊敬しますし、ただ者ではない雰囲気を感じます。富山さんはすごく包容力がある大人。皆さんと仲良くさせてもらっていました。
Q:自然豊かな南河内地区でのロケで、ステキな思い出がたくさんできたのでは?
のどかないいところでした。映画の中で大介が出場したグルメコンテストで、地元のブドウを使ったお菓子を作ったんですけど、そのブドウがすごくおいしいんです。地域の方が気を使ってくださって、雨宿りさせてもらったお宅で「うちのブドウがおいしいから食べなよ」と言ってくださったりして、撮影以外でもいただくことが多かったです。本当に優しさにあふれた地域でした。その中で撮影させてもらったので、映画にも優しさがにじみ出ていると思います。
Q:好きな映画を3作挙げてください。
最近感銘を受けたのは、黒澤明監督の『用心棒』。狭い中にも入り組んでいる人間関係とか、ストーリー性がすごいなと思いました。あと、ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』。小学1年生のときにあの映画でタップダンスに憧れたことがきっかけで、この仕事をやり始めたんです。それから、『ハリー・ポッター』シリーズ。これも子どもの頃から観ていて、新作のプレミア試写があるときは母親と応募して行きました。必ずハリーの仮装をしていったので、レッドカーペットを歩かせてもらったんです(笑)。
Q:憧れの俳優さんといえば?
「ごめんね青春!」で親子役をやらせていただいた津田寛治さんに、役者の先輩としても人間としても憧れています。僕、憧れの俳優さんはいっぱいいるんですよ。ダニエル・ラドクリフさん、同じ事務所の三浦春馬さん、佐藤健さん、岸谷五朗さんとか。ここ最近、芝居を一緒にさせていただいて「すごい!」と肌で感じたのが津田さんだったんです。
Q:好きな女性のタイプは?
プラス思考な人。マイナスなことでもポジティブに受け止めて勇気づけてくれたり、自分自身にも言い聞かせられる人は一緒にいて楽しいし、自分にもプラスになるような気がするんです。うちの母親がそうだったんですよ。小さい頃から、「これは悲しいことかもしれない。でも、こんなふうに捉えたらいいよね」って前向きに言ってもらえたので、すごく感謝しています。母のような女性が好きです。
Q:恋人と行きたいデート場所は?
ニューヨークとかパリを歩いてみたいです。シャンゼリゼ通りを「オ~、シャンゼリゼ~♪」って歌いながら歩いてみたり(笑)。
Q:大介と美希のように間接キスでドギマギなど、甘酸っぱい恋愛体験はありますか?
ないんですよね。だから、すごく新鮮でした。映画の中で疑似体験させていただいて、客観的に観て「あー、こんなことあったらいいのになあ」と思っていました。ただ、手をつなぎたいのに照れくさくてつなげない、みたいなことは、僕も奥手なのであったかもしれません。
Q:では、恋をしてもあまり積極的にはいけないタイプ?
いや、そこは自分からいきたいです! 奥手だけど(笑)。ただ、自分は本当にこの人が好きなのか、じっくり考えてしまうと思います。でも、結局大介みたいになかなかうまくいかないかも(苦笑)。
Q:大介の野球のように何かで挫折してしまったことはありますか?
大介にとっての野球が、僕にとっての芝居。中学生のときは伝えたいことが伝え切れないもどかしさを感じていました。以前「テニスの王子様」という舞台に出演したとき、演出家さんから指摘されていることは理解できているのに、それができなくて、客観的に自分を見られないことがイヤでした。壁にぶち当たったときって、自分の敵は自分なんですよね。自分と向き合い切れない時期があってつらかったです。
Q:大人な意見ですね!
大人になりたい気持ちもあるんですけど、子どもならではの想像力はいつまでも大事にしたいと思っています。たまに悲しいことがあるんですよ。例えば、小学生の頃なら白い壁を見ているだけでそこから絵を思い浮かべることができたのに、今はもう見えない。概念からくる「見えなくなるもの」ってあると思うんです。それを持ちつつ視野を広げられたらいいんですけどね。増えてくるものもたくさんあるけど、なくしてしまうものもたくさんある。子どもの頃って、持っているものは少ないけど、減っていくものも少なかった。それがよかったなと思うんです。
Q:ここを直したいなと思うところはありますか?
時間の使い方をちゃんとしたいです。高校を卒業してからルーズになっちゃって、もう少しちゃんとやっていれば習得できたのにと思うことがあり、今後は新しい趣味を深める時間も設けたいなと思います。僕、やりたいことがたくさんあるんです。ギターもピアノも自己流でやっているけど、もっとちゃんとやってみたい。あと、料理とかカメラとか……欲張りだけど、もっと違う視野が欲しいので留学もしたい。実は欲が深いんです(笑)。
Q:今後はどんな役に挑戦したいですか?
「不思議な役」をやりたいです。本来の自分とは見ている世界も視線も違う役と出会いたいです。人間としてもいろいろなものの見え方が変わってきますし、感性が別の方向から磨かれていく気がするんです。その役に集中する期間を設けてもらうのが、役を頂くということだと思うので、ちゃんと自分とは違う人格と向き合う中で、全くない不思議な役、例えばジョニー・デップが演じるような役がやれたらいいなと思います。
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
ヘアメイク:MIZUHO(vitamins) スタイリング:吉本知嗣
映画『あしたになれば。』は2月14日より大阪・あべのアポロシネマで先行公開、3月21日より角川シネマ新宿ほか全国順次公開
映画『あしたになれば。』
日本有数のぶどう産地としても知られる、大阪・南河内を舞台にした青春ドラマ。野球の夢に敗れた男子高校生が、町おこしのグルメコンテスト参加を機に料理の楽しさを知り、自身を深く見つめ直していく。メガホンを取るのは、『しあわせのかおり』などの三原光尋。『ぶどうのなみだ』などの小関裕太、『呪怨 -終わりの始まり-』などの黒島結菜、『渇き。』などの葉山奨之らが出演する。青春の輝きを切り取った物語はもちろん、ぶどう畑に囲まれた南河内の風景や次々と映し出されるおいしそうな料理も見もの。
生年月日:1995年6月8日
出生地:東京都
身長:180cm
血液型:AB型
趣味: 写真・音楽・映画鑑賞
特技:ダンス・アクロバット・歌
芸歴:NHK「天才てれびくんMAX」のてれび戦士など、子役として俳優活動を開始。その後、ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズンやドラマ「ビター・ブラッド ~最悪で最強の、親子刑事。~」などに出演し、2014年には、宮藤官九郎脚本の「ごめんね青春!」のコスメこと村井守役や、カルピスウォーターのCMで注目された。2015年は、映画『空と海のあいだ』『あしたになれば。』など出演作品が多数控え、さらなる活躍が期待されている。ファースト写真集「ゆうたび。」が発売中。