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読み物連載最終回 あれから、8年…いまや30代となった元・団地少年たちの人生は【5人の俳優が12年間同じ役を演じ続けた!】『ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARD たぶん HAPPY』

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読み物連載-最終回「ピカ☆☆ンチ」:あれから、8年。今や30代となった元・団地少年たちの人生は…! それぞれの5つの青春物語

団地の少年たちが

青年になるまで

それぞれの5つの青春物語

 都内最後のマンモス団地東京湾の隅っこにぽっかりと浮いた離島「八塩団地」で育った5人の少年たちがいた。品川区とは名ばかりの垢抜けない八塩の地で、彼らはくだらなくもかけがえのない青春を送った。やがて彼らは、バカ騒ぎしていた10代の少年から、大人の階段を上る20代の青年へ……。平凡な高校生からニット貴公子に転身したシュン、せっせと板前修業にいそしむボン、地元スーパーに勤めつつ年上団地妻と半同棲状態のハル、八塩限定暴走族「鮫洲一家」元ヘッドでデキ婚したチュウ、そして、八塩を飛び出してアメリカに旅立ったタクマ。決して、忘れない。

 5人で過ごす時間は、いつだって特別だった。“つまらない大人”の象徴として蔑んでいた屋形船を襲撃したのは、高校卒業を目前にした18歳の時。おかしな陰謀が渦巻く八塩ヒルズ建設を阻止したのは、21歳の時だ。そして、あれから8年が過ぎた。今や彼らも、もう30代の立派な大人となっている。はしゃいでふざけて遊んでいた時間は、もう終わり。それぞれが人生の岐路に立たされ、悩みながらも必死で荒波に立ち向かってきた。8年前、ハルが1人1人に手渡した色違いのお揃いノートには、何が書かれているのだろうか。そして、再び5人が顔を合わせた時、今度は何が起きるのか?

「第2回 あいつらが帰ってきた!3年の時を経て団地の少年たちはいま…!?」

「第1回 少年たちの物語は、東京の巨大団地から始まった!」

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SHUNの場合
編み物教室チラシ
アオガク卒業!

 八塩で「葵学」編み物教室=通称「アオガク」の講師をしていたシュンだが、再集合の場所には、なぜかセーラー服にマリン帽子という出で立ちで現れた。あれっ、手編みの白いニット服じゃないの? ハルから渡されたお揃いノートには、あれからのシュンの人生が綴られていた。葵先生も驚くほど腕前を上げたシュンは、いきなり修了証書を手渡され、アオガクから卒業することになってしまった。生き甲斐を失い、またしても死んだ魚のような目で落ち込むシュンのところに、再び運命のチラシが飛んでくる。

 それは自ら立ち上げたブランド『SHUN MEN』の広告だった。じっと見つめていたシュンの脳裏に、稲妻が走る。「シュンメン…、シュンめん…。シュン…麺!」。麺こそ自分の進む道。新たな目標を定めたシュンは、ラーメン激戦区に引っ越しを繰り返して、片っ端から有名ラーメン店を食べ歩く。だが、どの店の味もシュンの思い描くものではない。シュンは青学受験で培った桁外れの集中力を発揮し、独学でラーメン開発に取り組んだ。理想のスープが作れず挫折しそうになるが、またまた運命のチラシが彼を救う。

しじみラーメン
超極旨! しじみラーメン

 そこに書かれた「しみじみ飲んで」の文字から「しじみ」のインスピレーションを得て、シュンはついに理想のスープを完成させたのだ。「東京湾で採れたしじみのエキスがたっぷり入った超極旨ヘルシーラーメンだよ。…しじみラーメン、お待ち!」。立派にラーメン屋の主人となったシュンだが、問題はその店構え。マリン服の謎も、そこに隠されていた。シュンがラーメンの店舗に選んだ舞台はちょっと意外なものだったが……その話は置いておこう。いつも人生の分岐点では、偶然が呼び込む運命に従ってきたシュン。結果的になんとなく良い方向に進めているのは、持ち前の明るさが進むべき道を照らしているからだろうか。時が経てば、またシュンの未来予想図は変わっているかもしれない。それでもシュンは、結果オーライで楽しく生きていくことだろう。

BONの場合
料理
宮古島で親方の娘に一目ぼれして結婚!

 紫色のスーツに、粋なスカーフ。その上、帽子とサングラスまでも。八塩に似つかわしくないファッションで現れたボンは、ビッグなサクセス・ストーリーをお揃いノートに記していた。シュンからもらった手編み割烹着に身を包み、ボンは「割烹まんさい」の親方の元で修行を続けた。3年後には花板に昇進! 後輩の板前に「お前の出汁からは、お前の欲しか伝わってこねぇ……」とダメ出しするほどになった。カッコいいセリフだけど、それって、8年前にボンが親方に言われたこと、そのまんまだよね?

 その地位に満足せず、ボンは最高の料理を求めて旅立った。再び流れ板となって、イタリアン、中華とジャンルを問わず研鑽を積む。言い寄る美女にも目をくれず、ストイックに修行する日々。最後に辿り着いたのは、宮古島の沖縄料理店だ。そこには運命の出会いが待っていた。親方の娘、妙子に一目惚れ。衝動にかられたボンは、島の若者と婚約していた妙子を奪ってしまう。みんなに結婚式の写真を披露し、「どうだ、俺の花嫁! 天使のようだろー?!」と悦に入るが……、まぁ、ボンの美的センスは昔から独特だったから、うん。

料理
原宿にクレープ店を開き大成功!?

 愛する妙子に喜んでもらおうとスイーツの研究を重ねたボンは、原点に戻ってクレープに目覚めた。単身フランスに渡り、本場の味を学ぶ。帰国後、原宿にクレープ店を開き、大成功! あっという間に5店舗の支店を持つ若社長となったのだ。山あり谷ありの暮らしぶりの仲間たちに対し、「お前ら、人生の荒波に呑み込まれてんじゃねぇ! 今日は出世頭の俺がおごるぜ!」と景気よく叫ぶボンだが、実は、誰にも言えない秘密を抱えているのだった。仲間のみんなには正直に話したいところだけど、意地っ張りだから出来ないんだよね。リッチ棟出身のお坊ちゃんで、お人好しのくせに頑固なボン。打たれ弱いところがあるから心配だけど、なんだかんだで放っておけない雰囲気があるのはボンの人徳かもしれない。これから先も壁にぶつかるかもしれないが、仲間たちに助けられて、きっとボンは乗り越えていけるはずだ。

TAKUMAの場合
料理
ケニアで結婚! ビッグダディになっちゃった!

 タクマは、8年ぶりの再集合の場に姿を見せなかった。誰も連絡を取ることが出来なかったのだ。ところが、運命のイタズラなのか、その翌日にタクマは八塩に戻って来た。アメリカから帰国……じゃなくて、アフリカから?

民族衣装を身に纏い、ヒッピー風の長髪にバンダナを巻いたタクマの姿に、仲間たちは唖然とする。もっとビックリなのは、ケニア人の妻・アニャンゴと8人の国際色豊かな子供たちを連れていたこと。タクマってば、あれからどうしてたワケ? 「俺のノート、読めばいいじゃん」……って、あちこちの外国語で書かれた文章なんか、読めないっつーの!

 アメリカに戻ってからのタクマは、挫折の連続だった。ニューヨークでバンド活動をするも、うまくいかなくて1年もたたずに解散。良き相棒だったスケボーも、通りすがりの少年にあげてしまった。

料理
ええ~っ! まさかのヒットチャート18週連続1位!

 すっかり心が折れて日本への帰国も考えるが、ふと口ずさんだ八塩限定唱歌「」が通行人の喝采を浴びる。八塩ヒルズ建設騒動の時も、みんなを救ったのは「道」だった。「この歌を必要とする人が、世界のどこかに必ずいる」。タクマは心を決めた。ギターを片手に世界を渡り歩き、各国の言葉で『道』を歌ったのだ。ケニアではヒットチャート18週連続1位を記録。大金持ちになっていそうなものだが、今のタクマは一文無し。妻子の食事代もボンに借りる始末だ。  昔から突拍子もないことをやってのけるタクマだったけど、アフリカに行ってからどうしちゃったの?博愛精神に目覚めたのか、いろんな意味で「スゴい人」になっていたタクマ。ちなみに、タクマの現在の夢は世界中の発展途上国に『TAKUMA SCHOOL』を作ること。考えてみたら、タクマは少年時代から自分の信じる道を突き進んできた。周囲の目なんか気にしないで、ひとりになっても自分の力で立ち上がってきた。さすが、みんなのリーダー格。タクマの人生には、何が起きても大丈夫だ。それをバネに、また這い上がってくるに決まっているのだから。

HARUの場合
家⇒スーパー⇒家の毎日
家⇒スーパー⇒家の毎日。コピペでよくネ?

 5人の中で唯一、今でも八塩に住んでいるのがハルだ。大人になっても、ちょっぴり猫背で、うつむきがち。おどおどした態度も喋り方も変わらない。勤務先のスーパーでは売り場の主任になり、貫録を出すために髭を生やしてみたけれど、ぜーんぜん似合っていない。

 さすが言いだしっぺのハルだけに、お揃いノートには律儀に日々の生活を綴っていた。でも、その内容といえば、来る日も来る日も『家⇒スーパー⇒家』の繰り返し。ボンに「わざわざ書かなくても、コピペで良くない?」と言われてしまうほど、変わり映えのない生活だった。しかーし! その中に紛れていた『彼女、妊娠』の記述!!! な、な、なぁーんと、あのハルがデキちゃった婚をしていたのだ。

 その奥さんとは、ハルが童貞を捧げた相手、年上団地妻の君江さん。えっ、マジか? 初めての女とゴールインって、なんだよ、その超美談は! 色めき立つ皆をヨソに、ハルの心に甦るのは初恋相手のゆかのことだった。ゆかの母である君江と結婚したら、義理とはいえ、ゆかのお父さんになってしまう。同じ年齢で親子って、フクザツすぎる。なかなか踏ん切りのつかなかったハルだったけど、ある夜、鬼気迫る様子の君江に押し倒され……見事、イッパツ命中。かくしてハルは、結婚式でゆかに「母をお願い致します」と微笑まれてしまうのであった。

スーパーでは主任!
スーパーでは主任!

 覚悟を決めたハルは君江を支え、夫婦で力を合わせて壮絶な超高齢出産を乗り越えた。授かったのは、元気な女の子。困り眉の泣きそうな表情が決め顔というところなんか、まさに父親似だ。とにかく幸せな子になってほしくて「幸子」と名付けた。今年で6歳、可愛い盛り。ハルのスマホには、幸子の写真がいっぱい入っている。  妻子を得て、ますます仕事に精を出すハル。順風満帆に見えるけれど、実はちょっと心配なことがある。でも、真実を知るのが怖くて、何も出来ないまま。気弱なハルは、昔から変わっていない。そんなハルだけど、ずっと八塩を離れず、堅実に地道に毎日を送っている。チャレンジや変化が持て囃される世の中で、そんな生き方が出来るのは、ある意味で強さとも言えるのではないだろうか。だからこそ、仲間はハルのことが大好きなのだ。ハルの人生に、幸あれ。

CHUの場合
営業成績はトップ!
営業成績はトップ!

 暴走集団「鮫洲一家」第25代目総長のチュウも、すっかり大人になった。勤め先の家電量販店では新宿店に引き抜かれ、営業成績もトップを走り続けている。今では社員に手本を示す立場。ビシッとスーツを着こなし、髪はきれいに横分けして、どこからどう見ても立派な社会人だ。絶対にチュウはサボっているだろうと思われたお揃いノートもきちんと書き続けており、「昔の俺とは違うのだ!」と胸を張る。誰より早く家庭を持ったチュウは、八塩を出て新宿に居を構え、妻・弥生&一人息子・鉄壁と幸せに暮らしているものとばかり思っていたが……?

 チュウのノートには、驚くべき事実が記されていた。小学生になった鉄壁の教育方針をめぐって、チュウと弥生は激しく対立。「男は気合だ!」のチュウと、「子供には教養を!」の弥生はどこまでいっても平行線をたどるばかり。チュウが鉄壁と遊ぼうとしても、弥生がお稽古事に連れ出してしまう。暴走族ヘッド&レディース軍団リーダーという最強お似合いカップルだったのは昔の話。次第に夫婦の間には隙間風が吹き始める。

家電量販店
しかも新宿店勤務!

 そして別居生活からはや半年。「そのうち、アタマ冷やして帰ってくんじゃねーの?」と強がりながら、侘しい生活に耐えている。みんなと腹を割って話すうちに、「人生っつうのはさ、キビシイよなぁ……!」と、つい本音も。さらに、チュウを哀しみに沈ませるもうひとつの出来事まで起きていたのだ。チュウの身に降りかかった悲劇については、ここでは語らないでおこう。ひとつだけ確かなのは、そんなチュウのために皆が集まったということ。どんなに離れていても、仲間に何かあったら駆け付ける。それこそが、八塩魂なのだ。誰よりも友情を大切にしてきたチュウの心には、いつでもみんなの笑顔がある。(文:杉浦真夕)

なお、「ピカ・ンチ LIFE IS HARD だけど HAPPY」には原作本(竹書房文庫、著:河原 雅彦)があります。今回は原作者さま、ジェイ・ストームさまの許可を得て別の著者が特別に創作させていただきました。

今回で連載は終了となりますが、続きが気になる方は、『ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARD たぶん HAPPY』でご覧ください。

© 2004 J Storm Inc. Package Design © 2004 Johnny & Associates

「ピカ☆★☆ンチ」とは?

2002年、堤幸彦が監督を務め、嵐が主演の東京のマンモス団地を舞台にした青春映画『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』が劇場公開。その2年後、嵐が再び同じ役でキャラクターたちのその後を演じた『ピカ☆☆ンチ LIFE IS HARD だから HAPPY』が公開される。それからさらに10年後、30代になり青年になった彼らが再び再会する『ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARD たぶん HAPPY』(VD&ブルーレイは2月25日(水)発売、3月18日(水)レンタル開始)がスピンオフという位置づけで公開される。嵐の5人は12年間同じ役を演じ続けた。

『ピカ☆★☆ンチ』オフィシャルサイト

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