第2回:藤井まゆみのとまとさんの言うとおり!? - 2015年7月公開作品編
とまとさんの言うとおり!?
アメリカの大手映画レビューサイト Rotten Tomatoes の批評家満足度を基に、7月公開作品をランキングでご紹介。さらに Rotten Tomatoes の批評家たちが選んだベスト5に対して、ニコニコ生放送「元祖シネマざんまい」にも出演している映画コメンテーターでモデルの藤井まゆみが、独自の視点で切り込みます!
第1位:『インサイド・ヘッド』 批評家満足度:98%
第2位:『人生スイッチ』 批評家満足度:96%
第3位:『フレンチアルプスで起きたこと』 批評家満足度:92%
第4位:『奇跡の2000マイル』 批評家満足度:81%
第5位:『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 批評家満足度:74%
(2015年6月22日時点)
『インサイド・ヘッド』
ピクサー最新作は、少女ライリーの頭の中に存在する感情を主人公に、彼らがライリーを元気づけようと脳の中で奮闘するお話。ピクサー長編初作品にして Rotten Tomatoes で満点を取った『トイ・ストーリー』(1995)に比べると、臨場感がやや物足りなく思えるが、テーマパークのように構築された少女ライリーの脳の働きを色とりどりのビジュアルで見せる「子供目線」、脳の構造について深く説明された脚本のスマートさで見せる「大人目線」の二つの目線で堪能することができる。奇抜なアイデアで広がる世界を、誰もが共感できる冒険ストーリーに仕上げたピクサーのチャレンジ精神に拍手したい。
『人生スイッチ』
アルゼンチンでは大ヒット作『アナと雪の女王』に大差をつけ、アルゼンチン歴代興収1位を記録し、第87回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた同作。あるキッカケから不運の連鎖を生み、人間の落ちていくさまを描いたブラックコメディー。押してはいけないスイッチを押して、感情のコントロールが利かなくなった登場人物がやらかす、超辛口なジョーク的行為には必ず皮肉な結末が待っていることを教えてくれる。情熱大国アルゼンチンの鮮やかな映像に包まれると、大人のアホなけんかが立派な芸術作品に生まれ変わる。オムニバスとして短編が6本鑑賞できてしまう娯楽性を重視した構成だが、総合的に心に残るかどうかは疑問。
『フレンチアルプスで起きたこと』
放送映画批評家協会賞の外国語映画賞を受賞し、ハリウッドリメイクも決定したほど世界が熱狂。Variety誌の「2015年観るべき映画監督TOP10」にも選ばれた新星監督の人間を描く洞察力にニヤニヤが止まらないオフビートな北欧コメディー。スキー旅行にやって来た裕福な4人家族が昼食を取っていると、突然雪崩が発生し大パニックに。そのとき、一家の父トマスが家族をドン引きさせる行動を起こし、家族の信頼関係が崩壊し始める。「人は予期せぬ危機を感じたとき、どのような行動をとるのか」をテーマに、父親に対して憤慨する妻や子供たちの5日間の行動を、観察するようなほぼ引きのロングショットで淡々と映し出し、結末まで観客を飽きさせない監督の絶妙なテクニックを味わえる。
『奇跡の2000マイル』
ロビン・デヴィッドソンの回顧録に基づいた感動のロードムービー。愛犬を連れて、自ら調教した4頭のラクダとオーストラリア中央部の町から砂漠地帯を西にインド洋を目指し、2,000マイル歩いて横断した20代女性・ロビンの自分発見の旅。過去のトラウマを引きずりながら変化を求め、寂しさを愛犬で埋める孤独なロビンに、若手オーストラリア女優ミア・ワシコウスカを選んだことが大正解。ぼさぼさな髪で、ノーメイクのほこりにまみれた顔でもナチュラルな美しさは健在。神々しいほどに美しい西部の絶景に囲まれ、一歩一歩前に進むりりしい姿がスクリーンいっぱいに輝く。ストーリーの説明を最低限に抑え、1秒たりとも目が離せず、映像で魅せることへのこだわりを感じる。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
人類の平和を守るため、平和維持システム「人工知能(ウルトロン)」を起動させるトニー・スターク。しかし、それは人類滅亡を意味していた……。オープニング3日間の全米興行収入で約248億円を記録し、当時の世界記録を更新した前作『アベンジャーズ』(2012)から3年、続編では愛する者や人類のために、おなじみのマーベルヒーローたちが再結集。超豪華スターたちを見ているだけで満足度100%のフランチャイズ映画になっているのは確かだ。しかし、ロマンス要素が入ったことでメロドラマ風の展開に歯がゆさを感じ、「人工知能AIの脅威」についての説明も多めに思われる。複雑化したストーリーに、「もっとシンプルなアクション映画を観せてほしかった」と不満が残る。
第1位:『フレンチアルプスで起きたこと』
第2位:『奇跡の2000マイル』
第3位:『人生スイッチ』
第4位:『インサイド・ヘッド』
第5位:『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
夏の公開作品がめじろ押しの7月は、賞レースを席巻したアート作品の傑作が上位に並び、どの作品も個性が全く違うものの、レベルの高い戦いとなった。そのため今回は、巧みな人間描写とユニークな視点に焦点を絞り順位を付けた。『ゴーン・ガール』のパロディー版ともいわれる『フレンチアルプスで起きたこと』は、意表を突いた監督の演出に「うわ、やられた!」と膝を打ち、新しい才能を発見したという大きな喜びを味わえることだろう。ショートムービーで構成された『人生スイッチ』は、1本1本のストーリーは絶品であるが、オチがふに落ちず。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は、余計な要素が入り過ぎたことがマイナスとなってしまった。
◆ 藤井まゆみ Mayumi Fujii
Twitter:@mayumi_fujii
オフィシャルブログ:『藤井まゆみのシネマジャーナル』
2010年に第一回 国民的"美魔女"コンテスト「美肌魔女賞」を受賞。以降、Team美魔女のメンバーとして各方面で活動中。
大の映画好きがきっかけで6年間ロスアンゼルスの映画留学を経験した豊富な知識を生かし、 "映画を観て美しくなろう!"をコンセプトに「美に効くサプリ」として映画を紹介する、映画 "ビューティ" コメンテーター として活動をスタート。
【映画関連】
<記事>
・2013年5月~ 映画エンタメ情報『シネマカラーズ』、美に効く映画[サプリ]連載
・2014年12月~ トレンドミックスマガジン『VANITY MIX ヴァニティ・ミックス』、藤井まゆみの魔ジカルCINEMA 連載
【雑誌・広告】
2010年~ 光文社「美STORY」
2012年 小学館 「週刊ポスト」グラビア出演
2014年 ショップチャンネル 藤井まゆみプロデュース「BE GENE」
2014年~ 美サロ イメージキャラクター