第27回:ウーマンラッシュアワーの『マッドマックス 怒りのデス・ロード』談義
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、荒廃した近未来を舞台に、伝説の男マックスの活躍を描く『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
村本:僕ね、映画好きなもんやから、仕事終わったらすぐ家に帰って、寝る前に映画観てるのよ。ジブリとか、山田洋次監督の作品とか……。
中川:優しいのが好きやんな。
村本:そう、「これやったら心が癒やされる」っていうやつ。だから『マッドマックス』はギャップがすごかった! スポーツして一汗かいたみたいな衝撃やで。観たらポカリの味が濃くなる感じ。登場人物がみんな攻撃的で、ものっすごい引き付けられたわ。(作り手の)「この面白さを観ろ!」みたいな気合を感じた。
中川:休む暇がないよな。何かもう、「死ね」言われてるんちゃうかっていうくらい。呼吸が止まるかと思ったわ!
村本:あっというまや。面白かったな~。すご過ぎて何回か笑ってしもうたわ。
中川:わかる。自分の発想を飛び越え過ぎてて、驚きのあまりプッとなってまうよな!
村本:車の上でひたすらギター弾くだけのやつとか。あいつ、主人公のマックス(トム・ハーディ)にボコボコに殴られた後もまだ弾いてたやろ。太鼓たたくだけのやつとかも面白かったわ~。あと、デブの人食い男爵みたいなやつ! あいつなんて、偉そうにしとるけど一人で車に乗られへん、みたいな(笑)。
中川:あんなギターのやつみたいな状態でずっと漫才し続けることになったらどうする? 砂埃まみれになって、石とか当たってくるんやろうな。絶対嫌やわ~。
村本:ネタ飛ぶわ! 「何でしゃべらんの?」「何やったけ?」みたいな。
村本:女の人たちも良かったな! 砂漠を支配するイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の子供を産むための美女軍団なんか、きれいな娘ばっかりで。特におなかに赤ちゃんがいたあの人。
中川:ロージー・ハンティントン=ホワイトリーさんやて。いやー、きれいやった。
村本:何が良かったって、映画の中でフュリオサ(シャーリーズ・セロン)に「銃に弾を込めろ!」って言われても彼女らは知らなかったでしょ。あんな荒廃した恐ろしい世界で弾の入れ方を知らないということは、よっぽど良い暮らしをしていたわけや。ああいう箱入り娘みたいなところがいいのよ。
中川:箱入り娘の方がええんや?
村本:弾込めに慣れている女は、男の扱いにも慣れてる気がするやん。銃のいじり方と男の扱いは一緒やで。
中川:それ、ただの下ネタちゃうんか。
村本:フュリオサみたいな強い人は、カッコええとは思うけど付き合うのは嫌かな。あと、若いうちだけきれいともてはやされて、「わたしたちはきれいよ」って調子に乗っているやつ! そういうのは早く年取ってほしいわ~。
中川:何の話してんの?
村本:いやね、「わたしのどこが好き? 顔でしょう?」って言った娘と知り合ったことがあって。だから、僕は謙虚な人がいいなと。あと、途中で寝返ろうとしていた娘がおったやろ! ああいうのも嫌やわ~。「やっぱり自分がかわいいんかい!」って。貧しくとも誇りを大切にするタイプがいい。……その点、おまえの嫁やったら絶対、ジョーのとこに戻りよるよな。
中川:嫁の話は出すなよ!
村本:しかし資源のない世界で命懸けで戦う人々の物語って考えれば僕たちも『マッドマックス』的な人生を歩んでいると言えるよな。
中川:僕はそんな命懸ける感じはないけどね。
村本:まあネタ作ってるのは僕やからな。僕なんか高校だって辞めて、まともに働けるところなんてない。漫才に懸けているわけや。おまえかて、僕について行くって判断をしたわけやんか。
中川:いつでも引き返したろかなっていう気はしているけど……。
村本:ちゃうで! 映画の中でも、ジョーから逃げてたフュリオサたちが、マックスに説得されてジョーと戦うために引き返すやろ? 僕たちも今、大きな夢に向かっている途中で、例えるなら二人で(ジョーの)とりでに向かっている最中なわけや。
中川:飛び出たばっかりだと!
村本:そうそう!……で、おまえはニュークス(ニコラス・ホルト)みたいに一人トラックで突っ込んで爆発するっていう。
中川:自分ピンになるみたいな話やめて! 「オールナイトニッポン」もおまえだけ復活したけども。
村本:番組、ピンになってしまったからな。おまえを取り残して「オールナイトニッポン」を一人で走っているというところなわけや。
中川:いやでも、わからんよ。あのマックスっていうのは、奥さんと娘を亡くしてああなった男なわけやから僕だって……。
村本:確かに……。おまえのとこなんていつ別れてもおかしくないからな。
中川:そこは否定しろや! しっかりつながってるわ。
村本:しかし、マックスはかっこよかったな! あの警戒心が強い感じ。今って、人を信用するやつがかっこいいみたいな風潮があるけど、マックスくらいの方がかっこいいと思うわ。僕も何も信用せえへんで。楽屋でお弁当を食べてるときとか、トイレとか行くときには絶対にカラアゲの数を数えてから行くし。マックスも多分、カラアゲ数えてるで。
中川:やらんやろ……。
村本:でも本当の理想はイモータン・ジョーやな! マジな話、僕は自分の国を造りたいのよ。国民が10人でも5人でもいいから、自分の思うがままの国を造りたい。ツイッターだって国みたいなもんやで。僕の場合、いわば29万人のフォロワーがいる一つの国。よくツイッターで外部のやつから「バカ」とか言われたときに、フォロワーさんに手伝ってもらってそいつを退治すんのも、自分の国に侵略者が来たから追い出しているだけ。だから僕はツイッター界のイモータン・ジョーですよ。
中川:嫌やな~そんな国。
村本:でも、何だかんだいってジョーになるのは無理かな……。僕ね、小学校のとき、タクちゃんっていういじめっ子にいじめられてて。これがまた恐ろしいやつで、友達同士の二人に「今日、図書室に来い」って声掛けて連れて行くのよ。で、お互いに殴り合えって言うてくんのよ。それで殴らんかったらタクちゃんに殴られるっていう。
中川:えっ? 友達同士で殴り合えってこと?
村本:せやで、しかもタクちゃん、あえて親友同士を選ぶのよ。
中川:タチ悪いやつやな~!
村本:そこで、やめろー! って言ったら、タクちゃんが僕と親友のユウくんでケンカしろって言うてくるわけ。僕はもう、「おまえ、おかしいんじゃないか!」「こんなことやったらみんな離れていくぞ!」って叫ぶんやけど、クラスのみんなは恐怖に支配されていて、僕に賛同してくれないのよ。しかもそのときユウくん、鉄棒でこけて腕を骨折していたから、包帯だらけで。
中川:それでそれで、どないしたん?
村本:僕? ユウくんをボコボコにしてやったわ!
中川:最低やんか……。
村本:生き残るために、マックス(MAX)でボコボコにしたったわ!
中川:どマックスやないか!
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
荒廃した近未来を舞台に妻子を暴走族に殺された男の壮絶な復讐(ふくしゅう)劇を描き、主演のメル・ギブソンの出世作となった『マッドマックス』シリーズ第4弾。同シリーズの生みの親であるジョージ・ミラーが再びメガホンを取り、主役を『ダークナイト ライジング』などのトム・ハーディが受け継ぐ。共演にはオスカー女優シャーリーズ・セロン、『ウォーム・ボディーズ』などのニコラス・ホルト、1作目で暴走族のボスを演じたヒュー・キース・バーンら多彩な顔ぶれが集結。
映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』オフィシャルサイト
(C) 2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。