第28回:ウーマンラッシュアワーの『バケモノの子』談義
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、村本が愛してやまない細田守監督の新作アニメーション『バケモノの子』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
村本:僕ね、細田守監督の映画が大好きなのよ。これまでの作品は全部、ブルーレイとDVDを2種類ずつ持ってるし。
中川:それはすごいな! 僕は初体験やったけど、(主人公・九太の)小っちゃいときから大人になるまでの成長過程が描かれてて、観ていてすごい満足感があった。ズシッと来るというか。すごく壮大で感動したわ~。
村本:僕はずっと(九太)と自分を照らし合わせてしまって。子供のころに傷ついたり、めっちゃ喜んだことを思い出して、観ている間に何回も目頭が熱くなったわ。でも、細田監督の作品は見終わった後に必ず青いきれいな空が頭に浮かぶというか。すごく爽やかな気持ちになるからな。
中川:まさに夏の映画って感じやな。
村本:旅行とかに行かなくても夏休みがすごく充実した気分になるというか。しかも今回は、渋谷が舞台でしょ。(バケモノたちが)「ここが渋谷か!」って僕らが知っている単語を1個言うだけで、映画がグッと近い感じになる。
中川:その渋谷からバケモノたちの住む渋天街(じゅうてんがい)に入っていくと、そこがまた『千と千尋の神隠し』的な世界で。身近な部分が全く違う所につながっているかもしれないというドキドキ感があって良かった!
村本:「ここは知っているけど、この細い真っ暗な路地を行ったら、知らない街があるんじゃないか?」っていう、それこそ子供のころに味わったような、誘われている感覚で異世界に入っていける。
中川:これはちょっと、家族を連れて観に行きたい。それにほかの細田作品、『時をかける少女』とか『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』も観てみたくなったわ! 自分、持ってるなら貸してよ。
村本:ええよ。TSUTAYAより安いで!
中川:金取んのかい!
村本:それにしても、熊徹(人間の九太を弟子にするバケモノ)は僕のおやじそっくりやったわ~。
中川:あんな、映画みたいに荒々しいおやじさんなんか。
村本:荒々しい! 人の意見は聞かないくせに自分の意見は押し付けてくるし。「芸人になりたい」って言ったときも「それはちゃうやろ!」って怒られて、映画の中で九太が「人間の世界に戻りたい!」って熊徹に言うシーンなんかそっくりやったで。いくらお笑いが好きって伝えても「おまえは何にもわかっていない! 地元で生きていけ!」って言われて、こっちも「おやじも僕のこと何もわかってへんやんけ!」って返したり。高校を辞めるときも、一升瓶をテーブルにパシャーンって!
中川:こわ!
村本:まぁでも、おやじは自分のお父さん、僕のおじいさんを早くに亡くしていて、お父さんがいないまま育ってるのよ。せやから、子供の育て方がわからないんじゃないかと。要は子供なのよ。僕の方が親になってもうてて、熊徹と九太が修行していて、周りからどっちが師匠でどっちが弟子かわからないなぁって言われるシーンなんかまんまやで。
中川:ウチとは違うなぁ。僕のおやじは、リリー・フランキーさんが声をやっていた(優しい修行僧)百秋坊みたいなおっとりした感じの人やったから。
村本:でもな、この前、おやじがいつも行っているすし屋に行ったら、そこの大将に「THE MANZAI優勝の瞬間は大変やったんやで」って言われて。僕らの優勝が決まった瞬間、おやじは一言もしゃべらなくなって、下向いて泣きだしたらしいのよ。それ聞いたとき、「頑張ってきて良かったな」と。不器用でも、結局は思ってくれているというか。今なんて、子供にそれが伝わっていない家族もいっぱいあると思うから、熊徹や僕の父親みたいな構い過ぎて腹立ってくるようなおやじがうらやましくなる人はいっぱいいるんじゃない?
中川:何や、ええ話やなぁ……。
村本:ホンマ、おまえのとこみたく感情のない家族がうらやましいわ……。
中川:何でや! 感情しかないわ!
村本:数字で呼び合っている家族やろ?
中川:いや、呼ぶか。そら九太の話やろ!
村本:成長といえば、あんなに小さくて弱かった九太が成長して熊徹を投げ飛ばす、親を超えたんだっていう瞬間があったでしょ? 日常でもああいう瞬間て、寂しくなるよな。
中川:でも、僕も最近あったで。この前、3歳の長男におやじ超えされたわ。
村本:どういうことやねん? 普通はもっと大きくなってからやろ。
中川:いやね、ウチはいつもお風呂に入るとき、僕の●●●●●を子供に引っ張らせて、こっちは一歩も動かへんていう、「綱引き」ゲームをやるのよ。子供の力なんて弱いから、まぁ負けへんぞって思っていたんやけど、この前、塩サウナがあるスーパー銭湯に行ったときに子供がいきなりやりたいって言いだして。「よし、来い!」と言うたはええけど、子供が塩サウナの塩をつかんだまま引っ張ってきたから激痛が走って! あまりの痛みによろめいてもうて、「ああ、これがおやじ超えか」と悲しくなったわ……。
村本:3歳にしておやじ超えやんか!
中川:もう、頭が上がらんわ!
村本:九太といい感じになる楓ちゃんも良かったな! (声を担当している)広瀬すずちゃんまんまのかわいさというか。図書館で騒いでいるやつらを一人で注意しに行く場面なんか、正義感があって、自分をしっかりと持っている感じで良かったわ~。
中川:でも、普通はあんな素晴らしい娘なんておらんで。
村本:いや、あそこまでじゃないけどおるよ。僕らの後輩に一徹(トリテン)っておるやろ。あいつの彼女! 一徹は体重が120キロぐらいあって、バイトもせずに親から月20万円ぐらい小遣いをもらって、ネタも作らんとやることないから、だっさいリュックに臭いぬれタオルやらを詰め込んでいろんな銭湯を回っているっていう、とんでもない「バケモノの子」なのよ。でも彼女はめちゃめちゃきれい!
中川:僕も写真で見たことがあるけど、ホンマにかわいらしい娘やったな。
村本:しかも、「一徹さんって本当に面白い。二人でいられるだけでいいの」って言うような、一徹よりも年下なのに全部注ぎ込んでくれる娘なのよ。大手アパレルショップの店員さんやから服もおしゃれ!
中川:ホンマに裏はないんかな?
村本:それが全くないのよ。聞いたら、その子が今まで好きになったタイプが体重100キロ以上で、小学校の運動会でビリになるような、クラスの端っこにいるような男だったらしいで。一徹なんて、しっかり当てはまっているやんか。この前も、その彼女がLINEで一徹に「友達と焼き肉食べています!」って送ってきた写真に、吸わんはずのタバコと灰皿が写り込んでて。一徹が「男の子と一緒なら言ってね」って指摘したら、「違うの! ほかの席の方が写真を撮りやすくて、移動した席にあった灰皿が写り込んだだけ!」って泣きながら言うんで許したって言うてて。
中川:へー! そら本物やな。
村本:でもな、何か怪しいと思って一徹のLINEを見せもらったら、僕がいままでに見たことがないぐらい、大量のメッセージを彼女に送ってんねん。「何で灰皿写っているの?」「誰といるの?」とか、どっさり……そりゃ彼女も泣きながら謝るで。あれこそバケモノやわ。
中川:あいつめっちゃ不安になってるやんか! そんなめんどくさい九太見たないわ……。
『バケモノの子』
『サマーウォーズ』などの細田守が監督を務め、人間界とバケモノ界が存在するパラレルワールドを舞台に孤独な少年とバケモノの交流を描くアニメーション。人間界「渋谷」で一人ぼっちの少年と、バケモノ界「渋天街」で孤独なバケモノ。本来出会うはずのない彼らの修行と冒険が展開する。バケモノと少年の声を役所広司と宮崎あおいが担当するほか、染谷将太や広瀬すず、津川雅彦、リリー・フランキー、大泉洋、黒木華ら人気俳優が声優陣に集結。
(C) 2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。