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『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』ができるまで!監督・キャストを直撃

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『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』が出来るまで!監督・キャストを直撃

 トム・クルーズふんする敏腕スパイ、イーサン・ハントの活躍を描く人気アクションシリーズ第5弾『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』が日本でも大ヒットを記録しています。今週は、4月中旬にロンドンで行われた監督・キャストインタビュー、そして8月の来日会見の模様から同作ができるまでに迫ります。(取材・文・構成:編集部 市川遥)

『ミッション:インポッシブル』シリーズはトムの子供

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『ミッション:インポッシブル』
記念すべきシリーズ第1作『ミッション:インポッシブル』 - Paramount Pictures/Photofest/MediaVast Japan

 俳優トム・クルーズが初めてプロデュースしたのが、シリーズ第1弾『ミッション:インポッシブル』(1996)です。トム自身「『ミッション~』の数年前に、映画を製作・監督してみないかと聞かれたことがあったが、そのときが来たと思えるときが来るまで待っていた」と語るように、満を持してプロデュースに挑みました。

 テレビドラマ「スパイ大作戦(原題Mission: Impossible)」(1966~1973)を観て育ったトムは、その大好きな作品を映画化しようと決意。自らスタジオに企画を持ち込み、「当時は、皆『彼はテレビシリーズを映画化して何をしようっていうんだ』と思っていたのを覚えている」と振り返るほどの逆境の中、『ミッション:インポッシブル』を世界的ヒットシリーズへと成長させました。

 第3弾で映画監督デビューを果たし、以降製作として本シリーズに関わっているJ・J・エイブラムスは、本シリーズの成功の鍵として「トムが早くから決めていたのは、それぞれの作品に創造性を持たせるために、新作ごとに違う監督を起用すること」があったと明かします。

『ミッション:インポッシブル』シリーズ
毎回記憶に残るアクションシーン有り! - 左から第1弾、第2弾、第3弾、第4弾 - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 第1弾ではサスペンスの巨匠ブライアン・デ・パルマ監督(『キャリー』『殺しのドレス』)、第2弾では独自のアクション表現に定評のあるジョン・ウー監督(『男たちの挽歌』『レッドクリフ』)とタッグを組み、第3弾で『スター・トレック』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』と今やハリウッドの売れっ子監督となったエイブラムス、第4弾ではピクサーのアニメ作品などで活躍していたブラッド・バードを見いだしたトム。シリーズの連続性を保つ一方で、それぞれの作品をその監督の個性を強く反映させた独自のものにすることで、息の長いシリーズとなりました。

 謎の女スパイ・イルサ役でシリーズに初参加したレベッカ・ファーガソンもプロデューサーとしてのトムに脱帽し、本シリーズを「トム自身。彼の子供」と表現します。

レベッカ:「トムは始まりから関わっている。そしてもちろん演技もする。彼がどうやって睡眠時間を確保しているのかわからないわ。彼はほかの人の仕事を奪わずに、そこに居てサポートして助けてくれる。わたしは演技だけだけど、プロデュースとなると“映画を作る”ということを考えなくてはいけない。本当にたくさんやることがあるわ。彼はどこにでも居て、映画製作が進むように尽力していた」

第5弾に反映されたクリストファー・マッカリー監督の色

クリストファー・マッカリー
クリストファー・マッカリー監督 - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 そしてシリーズ最新作となる第5弾の監督に選ばれたのが、『ワルキューレ』(2008)に始まりトムとは5度目のタッグとなるクリストファー・マッカリーです。彼が本作のメガホンを取るという話は思いがけず持ち上がりました。

マッカリー監督:「『オール・ユー・ニード・イズ・キル』でトムと脚本の作業をしていたある晩、これまで過去に一緒に仕事をしてきた作品、これから一緒にやりたい作品の話になった。そこでトムが何げなく『ミッション:インポッシブル』の監督をやるべきだと言ったんだ。僕はあまり深く考えないで『そうなったら最高だね』と答えた。ただ、もちろん正式な話をしているわけではないと思っていた。それからしばらくたって、『よし、みんなに話しておいた。君が監督に決まったから』と言われた(笑)」

 共にアルフレッド・ヒッチコック監督のスリラーが好きで、なぜその映画が好きなのかも同じだというトムとマッカリー監督。長い説明なしに互いの考えをすぐに理解することができるため、撮影現場には、あるシーンについてどちらかが語り始めるともう一人がその文の後半を言うというような、あうんの呼吸がありました。

マッカリー監督:「特にこのプロセスにまだ慣れていないレベッカにとっては大変だったと思う。三人であるシーンのことを話していて、トムと僕は何が起きているかはっきりとわかっているのに、レベッカが『ちょっと待って! 今何が起きているのか全くわからない』と言うこともあるんだ(笑)。毎日がそんな感じだね。誰かがやって来てデザインやセリフなど何か提案しようとすると、トムと僕は互いに目配せして『いや、それはあり得ない』となるんだ。また、あるときには僕たち2人とも『その通り。まさにそれだよ』となる」

クリストファー・マッカリー、トム・クルーズ、レベッカ・ファーガソン
撮影現場で談笑するクリストファー・マッカリー監督、トム・クルーズ、レベッカ・ファーガソン - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 トムと組んだ監督作『アウトロー』では、ハードボイルド小説「ジャック・リーチャー」シリーズの世界を近年のアクション映画とは一線を画す泥くささで、まさに“ハードボイルド”に描いたマッカリー監督。本作の派手でありながらもリアルなアクション描写も、実際に自ら危険なスタントに挑むトムとマッカリー監督のタッグのたまものといえます。

マッカリー監督:「今日のアクション映画の撮影に使われるテクニックは、カメラを揺らし、実際には危険はないという事実を隠すというものだ。危険に見えるのはカメラワークによってなんだ。僕たちがやろうとしたのは、そこから一歩引いて、アクションを傍観して展開させるということ。安全なやり方でアクションをやるより難しくなるけれど、僕たちはそうやっている」

 また、『ユージュアル・サスペクツ』の作り込まれた脚本で世界を驚かせたマッカリー監督が脚本も手掛けただけあって、本作にはヒッチコックをはじめとした作品へのオマージュやサスペンスの伏線がちりばめられています。レベッカが演じた女スパイのイルサという名前もその一つです。

レベッカ:「クリス(クリストファー・マッカリー監督)と座っていて、イルサはスウェーデン人なのか、という話をした。そんなにスウェーデンっぽい名前じゃないと言ったのを覚えている。次第に『ああ、イルサは『カサブランカ』(1942)で(スウェーデン出身の)イングリッド・バーグマンが演じたヒロインの名前ね!』と気付いた。クリスはそうしたアイデアを指摘するんだけどミステリアスで、一人になって次第にわかってくる。そしてイルサは(モロッコの)カサブランカへイーサンたちを導くでしょ。いくらでも深読みできるようになっているの」

物語の核はイーサンとベンジーの関係

サイモン・ペッグ
ベンジー・ダン役のサイモン・ペッグ - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 本作では、イーサンがベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)、ウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)、ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)らスパイ組織IMFのメンバーの力を今までになく必要とします。中でもイーサンが最初に助けを求めるのがベンジーで、彼らの仕事を超えた友情が物語の核となっています。

サイモン:「ちょうど今朝、ベンジーを10年近く演じていると気付いた。こんなに成長する役柄を演じることができて俳優として幸運だと思う。初登場の第3弾では彼はオフィスで働くITエンジニアで、イーサンに恋していた。イーサンはIMFの大スターだからね。第4弾でエージェントになったときは、現場ではまだ新人でその仕事にはしゃいでいた。本作での彼はもう新人ではなく、経験者になっている。いまだにイーサンのことを自分のヒーローだと思っているけど、経験を積んでいるから恐れてはいないんだ」

トム・クルーズとサイモン・ペッグ
今ではすっかり仲良しになったトムとサイモン - (c) ABImages

 トムと自分の関係は、イーサンとベンジーの関係の鏡になっていると考えているというサイモン。トムとも10年近い付き合いで気心知れた友人となったといいます。

サイモン:「ベンジーはイーサンに憧れていて、最初に会ったとき『ワオ! イーサン・ハントだ! 世界最高のシークレットエージェントだ!』と思ったわけだけど、それって僕がトムに対して思ったことだから。『ワオ! トム・クルーズだ! 世界最高の映画スターだ!』って(笑)。でもトムは想像するより普通だったんだ。彼のパブリックイメージはとても複雑でミステリアスだけど、実際はとてもおかしくて面白い“ただの男”。セットで一緒だととても楽しい」

サイモン・ペッグとアレック・ボールドウィン
アレック・ボールドウィンもいい味出しています - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 ちなみに、トム主演作『アウトロー』のヒロインはロザムンド・パイクで、サイモン主演作『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』『しあわせはどこにある』のヒロインもロザムンドでした。ある意味二人は“同じ女を愛した”男同士ともいえるのではないでしょうか……?

サイモン:「そうだね(笑)。ロザムンドのことはすぐに好きになっちゃうんだよ。『アウトロー』を監督したのはクリスということもあるし、ロザにはハーイ! って『ミッション:インポッシブル』の現場からメッセージを送ったよ。ちょうどオスカーにノミネートされたときだったから祝福の言葉もね。ロザムンドのことはすごく好き。素晴らしいよ。彼女は今、手にしている全ての成功にふさわしい。僕のお気に入りの人さ(笑)」

イーサンに匹敵する頭脳・身体能力を持つヒロインが決まるまで

レベッカ・ファーガソンとトム・クルーズ
強く美しい女スパイ・イルサ役のレベッカ・ファーガソン - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 レベッカがイルサ役の候補に挙がったのは、撮影に入る前のギリギリのタイミングでした。トムとマッカリー監督は長いことイルサにふさわしい女優を探してきましたが、これぞ! という人には会えないでいました。

マッカリー監督:「トムと僕はこのキャラクターがどのような人物であるべきかはっきりとしたイメージを持っていたんだが、そのイメージを打ち破るプラスアルファの部分を期待していた。多くの女優と会ったが、皆素晴らしかった。そんな中、急きょレベッカの5分ほどのセリフ読みを目にすることになり、トムと僕はすぐに『彼女しかいない。僕たちがずっと話していたのは彼女のような人だったんだ』と確信した」

 そこでマッカリー監督はレベッカにトムとのシーンを実際に演じてみてもらうため、彼女をロンドンに呼び寄せることにしました。

マッカリー監督:「確か時間がなかったと記憶している。レベッカが部屋に入ってきて、トムとレベッカが雑談を始め、そのままずっと話をしていたので、ついに誰かに『あまり時間がないので、そろそろオーディションをやりましょう』と言われた。そこで僕は彼らに『いや、大丈夫だ。彼女はすでにこの役を手に入れた』と言ったんだ。部屋に入ってきた瞬間、彼女がこの役にピッタリだとわかっていた。それから形式上、シーンのセリフ合わせをしてみたんだが、彼女はとにかく最高だった」

レベッカ・ファーガソンとトム・クルーズ
トムとの相性も抜群! - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 ロンドンへ来てほしいと連絡があったとき、レベッカはモロッコの砂漠でほかの作品の撮影中で、ラクダに乗っていたそうです。そしてすぐにロンドンへ飛び、トムと初対面したときのことをこう明かします。

レベッカ:「美しい家に行った。歩いて入るとお茶があって、座って、深呼吸してストレッチなんかをしていると、ボーン! トム・クルーズが登場したわけよ。マッカリー監督と会うのも初めてだったけど、彼らとは昔からの友人みたいな感じがした。コーヒーを飲んでおしゃべりをして、そしてトムといくつかのシーンを試してみた。彼はわたしがやりやすいようにカメラの後ろに居てくれたりもした。彼は素晴らしい人よ。とても思いやりがある」

『ミッション:インポッシブル』を作るプロセス&唯一のルール

ワールドプレミア
ワールドプレミアはウィーンのオペラ座で行われました - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 今回ロケ地の一つとなるウィーンは、過去の『ミッション:インポッシブル』シリーズのためにロケハンを行っていた場所でした。

マッカリー監督:「その際は何らかの理由で実現しなかった。それが『ミッション:インポッシブル』を作るプロセスなんだ。まずやりたいこと全てを持ち寄り、その後、その中でできること全てを発見する、というのがね」

 地上約1,524メートルの高さを時速400キロで飛ぶ軍用飛行機スタントもそのプロセスの中で誕生しました。

マッカリー監督:「何かを思い付くと、それに対して『それならできるよ』と言ってくれる人々がいる。飛行機の模型を見ていたとき、トムに『この外側に君が居るなんてどうだろう?』と言うと、人々が『それは可能だ。どうやってやるかをお見せする』と言うんだ。すごいね。唯一自分を制限するものがあるとしたら、それは自らの想像力だ」

軍用飛行機スタント
まさかの軍用飛行機スタント! - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 そんな本シリーズの製作にあたりトムが唯一定めているルールが、「イーサン・ハントは彼がやることをやりたいわけじゃない」ということです。

マッカリー監督:「イーサンはものすごいことをやってのけるけど、向こう見ずで衝動的なわけじゃないし、スーパーヒーローではないんだ。イーサンがやるクレイジーなことを“やらなくてはいけない”状況を作り出すことが大事。それがこの映画(の脚本)を書くのをとても難しくしている。映画を作るにあたりトムと僕はどこへ向かうのかいつでも明確なプランを持っているが、『ミッション:インポッシブル』は『ノー。そっちじゃなくてこっちに行くんだ』と言う。常に変化していくこのシリーズを作るのはとても困難だけど、観客と同じように驚かされるというのは面白くもあるよ」

過激な軍用飛行機スタントの裏側

 本作の目玉の一つである、地上約1,524メートルの高さを時速400キロで飛ぶ軍用飛行機のドア外部に身一つでしがみつくというトムの超絶スタントは、何か月もテストパイロットやエンジニアと話し合いを持った上で作り上げられたものです。これまでエアバスの外部にカメラをぶら下げたことがなかったばかりか、飛び立つシーンを見せるためにはトムと地面を同時に映す必要があり、二つのレンズサイズのカメラを載せることになりました。

 風圧やゴミから目を守るため眼球全体を覆うコンタクトレンズをし、ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』(1959)へのオマージュのため凍えるような寒さにもかかわらずスーツ姿になったトム。しがみつく部分はエンジンから排気ガスが直接来るため、立っているのがつらい場所でもありました。

トム・クルーズ
飛行機の翼の上を走るトム! - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 また、トムはテストパイロットに「角度を付けて上ってもらわなくちゃいけない」と言い続けていたと言います。なぜならトムとマッカリー監督は、上昇するときにトムの足が足場から離れて体が機体と平行になるというのを計画していたからです。でもテストパイロットはただ笑って「それは問題じゃないと思うよ」と返したそうです。

トム:「滑走を始めて彼の笑顔を思い出していた。そしてなんで彼が笑っていたのかがわかった。滑走路の時点でも足を足場に着けておくのが大変で、体が機体と平行になっちゃうんだよ。『まじかよ』って感じさ。カメラのレンズを見て、ベンジーがあの辺りにいるなというのを考えて、どんどんスピードが増していく中で思ったのは『これはやっぱマズかったかな』ということ(笑)。結局8回撮ったけどね」

トム・クルーズ
こんな風に撮影しました - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 危険なスタントですが、トムが飛行機から落ちてしまうというのは懸念事項の中で最も小さいものでした。

マッカリー監督:「面白いもので、彼が飛行機から落ちないようにしたのはパイロットだったんだ。ある地点以上まで飛行機が行ってしまうと、何をやってもトムをそこに乗せたままにすることはできない。ホッチキスで彼を留めていたとしても無理だっただろうね。だからそれは全てパイロットに委ねられており、トムのパイロットに対する信頼によって成り立ったんだ。あの飛行機を操縦したのは、とても優秀なパイロットだった」

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
全体像も捉えます - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 それ以外の不確定要素には、飛行機が滑走路を猛スピードで走る際にかけらか何かがトムに当たってしまうこと、上空に行ってからのバードストライクがありました。あのスピードでゴミや鳥がトムに当たったらそれまでです。

マッカリー監督:「運転のスタントをやったときは、彼は経験が豊富で車をコントロールしているが、シートベルトを着け安全ハーネスを着用している。もちろん何が起こるかわからないからね。何度か車が反転しそうになったが、大丈夫だった。全て問題なかったが、そういうことがトムのコントロール下における不確定要素なんだ。運転をするのはトムで、彼はどれだけスピードが出せるかわかっている。あの飛行機の上ではそんな要素は全て彼のコントロール下にはない。運に任せるしかないんだ。だから心配でたまらなかった。本当に恐怖に満ちた2日間だったよ」

トムにつられてアクションに挑む共演者たち

クリストファー・マッカリー、サイモン・ペッグ、トム・クルーズ
サイモンだけこの表情……! - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 自ら危険なスタントに挑むトムにつられて、ほかの出演者たちもアクションシーンの数々に挑戦しています。カサブランカでトムが運転するBMWがバイクに乗る敵の追撃を受けながら狭い街道を猛スピードで駆け抜け、敵をかわすためドリフトで急回転、さらにアクセル全開のままバックで階段から落ちるという大迫力カーアクションシーンの助手席には実際にサイモンが座っていました。

サイモン:「トムは全ての運転を自分でしていたから、僕も自分でやらなきゃ意味がなかったわけ。トムに乗せてもらうだけだし(笑)。でも実際に車に乗らないとあの通りがどれだけ狭いか想像できないと思う。クリスは車の外からではなく中から撮りたがったから、僕たちのリアクションを見ることができるよ。車が回転するシーンだけワーナー・ブラザースのリーブスデン・スタジオで撮ったけど、ほかは全てカサブランカで撮った。クリスは一日中笑っていたけど、僕はむち打ち状態になってぼんやりしたよ。激しかったけど楽しかった。クールなファイトシーンもしたし、できることは全てやったよ」

『トム・クルーズ
トムはもう慣れたものです - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 トムのスタントシーンを間近で見て「時々嫉妬した」というサイモンですが、空を飛ぶ軍用飛行機の外部にしがみつくスタントは別だったそうです。

サイモン:「劇中ではイーサンを地上からサポートしているベンジーだけど、飛行機が上がったとき、実は誘われて僕もコックピットに居たんだ。トムはずっと飛行機の外にいてクレイジーなスタントをしていた。『ああ自分じゃなくて本当によかった』と思っていたよ(笑)。タダで空の散歩ができてよかったって(笑)」

 レベッカは、イーサンに匹敵する頭脳・身体能力を持つ女スパイという役柄だけに、撮影に入るまでに1か月半かけて、ピラティス、筋トレ、スタントなど1日6時間週6日間トレーニングしました。

レベッカ:「この役をもらってロンドン・ヒースロー空港に着いたら、車に乗せられて、そのままジムに連れて行かれた。『あーそういうことなの!』と思ったわ(笑)。彼らは賢くて、『(スタントは)これとこれとこれとこれ』って言うんじゃなくて、『小さなバイクに乗らなくちゃいけないよ』、そして1か月後に『ところでちょっとした落下シーンをやらなくちゃいけないんだ』ってちょっとずつ言うの(笑)」

レベッカ・ファーガソン
男たちをばったばったとなぎ倒していくレベッカ - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 高い所は嫌いでエレベーターすら苦手だったという彼女ですが、トムにしがみついて一緒にウィーンのオペラ座の屋根から地上まで降下するスタントを自ら行いました。

レベッカ:「このシーンのトレーニングをスタジオでしたことを覚えているわ。トムに脚を巻き付けた状態でクレーンでかなりの高さまでつられていった。『ファ○ク!×5 こんなことやりたくないわ(泣)』って思わず口にしたら、彼は『わかっているよ、ベイビー。でも行っちゃおう』って言ってそのまま飛び降りたから、『あなたなんて大っ嫌いよー!』って(笑)。でも降りたら『すごく楽しい! もう1回やろう!』ってなったわ(笑)」

 レベッカは本作で最も大変だったのは、恐怖心をコントロールすること、そしてトムと一緒に走ることだったと言います。

レベッカ:「メンタル面がチャレンジだった。スタントは無理にやれとは言われなかったんだけど、『カモン、レベッカ! これは「ミッション:インポッシブル」よ。なぜやらないの?』って自分の中で声がするの。あと走るのが大変だった。トムと走るんだけど、彼みたいに動く人を今まで見たことがなかった! わたしのためにスピードを落とさせたらいけないから大変なの」

トムが無遅刻無欠席の理由

トム・クルーズ
観客のことを第一に考えているトム。この日のワールドプレミアでは約4時間(!)のファンサービスを行いました - (C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 「作品に参加するたびに生徒のような気持ちになる」。トムがそう語るのは、彼が現場で映画作りを学んだ人だからかもしれません。

トム:「(メインで出演した)初めての映画『タップス』(1981)の現場で学んだ。僕には映画学校や演劇学校に通うチャンスがなく、もし次の役がもらえなかったらと思ったから細かなことまで一つ一つね。脚本家と初めて一緒に働いたのもそのときだし、映画作りのあらゆる分野のことを勉強したんだ」

 いつでも観客のことを第一に考え、映画のプロモーションでレッドカーペットを歩けば長時間のファンサービスを行い、どんなにハードなスケジュールであってもおなじみの笑顔を絶やすことはないトム。そんなことが可能なのは、彼が大好きな映画を作ることができることへの感謝を今でも忘れていないからです。

トム:「4歳の頃から映画を作り、世界を旅したいと望んできて、その夢を実現することができた。それは特権だと思っていて、その感謝の気持ちを忘れない。毎日映画を作っているけど、現場に遅刻したことは一度もない。もちろん休むこともない。なぜならそれは僕が本当に大好きなことだし、そうできることは幸運だと知っているから。こういう会見の場でも感謝の気持ちを持っている」

 『ミッション:インポッシブル』シリーズのような大作で主演とプロデューサーを務めるプレッシャーは並大抵ではないはずですが、トムはそうしたプレッシャーすらも「特権」だと考えると言います。わたしたちを2時間11分の心躍る冒険にいざなうのは、「常に何か学び、限界に挑んでいる。いつでも観客のことを第一に考えていて、持てる力を全て発揮して、観客のために上質なものを作って楽しませたいと思っている」というトムの思いそのものなのでしょう。

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