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9月はこれだ!第76回:『アンフェア the end』『Dearダニー 君へのうた』『ピクセル』『草原の実験』『合葬』

今月の5つ星

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今月の5つ星

 芸術の秋、到来! 今年も残すところあと4か月を切り、ファン待望のシリーズ完結編『アンフェア the end』がついに公開される。また、ゲーム好きにはたまらない『ピクセル』や、アル・パチーノの深い哀愁が漂う『Dearダニー 君へのうた』、売れっ子脚本家・渡辺あやの腕が光る『合葬』、全編セリフなしの『草原の実験』など、幅広い名画が出そろった。

『アンフェア the end』

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『アンフェア the end』
©2015 関西テレビ放送/フジテレビジョン/ジャパン・ミュージックエンターテインメント/東宝/共同テレビジョン

今度こそ本当の『アンフェア the answer』
 舞台は前作で描かれたネイルガン連続殺人事件から4年後。2006年に連続ドラマとしてスタートし、約10年にわたって続いた『アンフェア』シリーズがついに完結する。これまでも篠原涼子演じる主人公・雪平夏見のセクシーシーンがたびたび話題になったが、本作では冒頭いきなり一糸まとわぬシャワーシーンの大サービスで、篠原の本作に懸ける強い思いが伝わってくる。また今回、雪平の最後の相棒にふんするのは、ドラマで同じく雪平の相棒を演じた瑛太の実弟・永山絢斗。ふとした表情や声が兄の演じた安藤を思い起こさせ、シリーズファンにとっては何ともたまらない憎いキャスティングだ。そして、前作では『アンフェア the answer』と銘打ちながらも、何が「the answer」だったのかわからずじまいだったが、今度こそドラマからの謎だった雪平の父親殺しの犯人も明らかに。裏切りに次ぐ裏切りで先が読めない『アンフェア』らしい展開に、最後まで目が離せない。(編集部・中山雄一朗)

映画『アンフェア the end』は9月5日より公開

作品詳細はコチラ

『Dearダニー 君へのうた』

『Dearダニー 君へのうた』
©2015 Danny Collins Productions LLC

叫ばないアル・パチーノが、偶像化されるセレブの悲しみを体現
 大ヒット作で一財産を築き上げた往年の歌手「ダニー・コリンズ」は豪邸に暮らすセレブで、若いブロンド美女と付き合い、明るいステージで人々を魅了する。そんな偶像化された「ダニー・コリンズ」であろうとしながらも、本質はひどく弱く、優しすぎるダニー・コリンズに名優アル・パチーノがふんする。アネット・ベニングクリストファー・プラマーなどのベテラン勢だけではなく、他のキャストの持ち味をも引き立てるアルの協調性と、『ラスト・ベガス』『ラブ・アゲイン』などでオヤジの良いところを引き出したダン・フォーゲルマン監督の脚本が見事にかみ合い、これまでの作品で見せてきたような「叫び」を入れずとも、俳優アルの実力が十分に発揮されている。「セレブはこんなに苦しいんだぞ!」という、うるさい主張はなく、冷たくどこかおびえが潜んだ瞳で嫌味なくセレブの苦しみを体現するアルの妙技はさすがの一言。また一種のファンサービスのような「クスリ」のシーンが入ることで、役柄だけでなくアル自身の境遇が重なり、より深い哀愁を生み出している。(編集部・井本早紀)

映画『Dearダニー 君へのうた』は9月5日より公開

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『ピクセル』

『ピクセル』

こんな愉快な世界の終わりならありかも!?
 パックマンドンキーコングスペースインベーダーなど、日本の名作ゲームのキャラクターにふんしたエイリアンが地球侵略をしにやって来るユニークなストーリー。1980年代の人気ゲームキャラたちが、ゲーム会社の垣根を越えて一堂に会するというだけでも心躍るが、さらに当時はドット絵だったキャラが3Dとなって登場するシーンは圧巻。そして襲いくるゲームキャラが、日常にあるさまざまな物を“ピクセル化”していくさまはイルミネーションのようにきれいで、世界の終わりがやって来ていることを忘れて見とれてしまう。映像が良いばかりにストーリー展開がやや単調に感じられるが、パックマン開発者の岩谷徹(東京工芸大学)(デニス・アキヤマ)がパックマンに語り掛けるシーンにじんわりするなど小ネタは豊富。世界の終末を描いた映画は数知れず、その多くが血なまぐさい描写を伴っているが、本作にはそれがなく、大人のロマンがたくさん詰まった愉快な作品だ。(編集部・石神恵美子)

映画『ピクセル』は9月12日より公開

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『草原の実験』

『草原の実験』
©Igor Tolstunov's Film Production Company

やっぱり映画はセリフで説明するものじゃない
 全編セリフなし。そう聞いただけで興味が湧いた人にドストライクの映像叙情詩。旧ソビエト連邦の核実験という史実を物語の背景に据えることで、平和の尊さや当たり前の日常の貴重さを浮き彫りにする。主人公の少女の日々をつぶさに収めた映像は、計算された結果から生まれるアーティスティックな美しさで、三つ編みをした長い髪を少女が解きほぐすたびに、窓の向こうから赤い夕日がちらり、ちらりと顔をのぞかせる。こうしたテクニックは全編通して使用されており、実際どのカットも絵になる。そして、セリフを排除した分、日常の何でもない動作の一つ一つや、自然が発する音に観客のフォーカスが合ってくる。おのずと自分の頭で考え状況を理解する必要性が生じるため、これまで思いもしなかった気付きを与えてくれる秀作といえるだろう。オリエンタルな雰囲気を持つ少女を一言のセリフもなく見事に演じ切ったのは、韓国人の父とロシア人の母を持ち、撮影当時14歳だったエレーナ・アン。彼女を見るためだけでも劇場に足を運ぶ価値がある。(編集部・小松芙未)

映画『草原の実験』は9月26日より公開

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『合葬』

『合葬』
©2015 杉浦日向子・MS.HS/「合葬」製作委員会

杉浦日向子の怪奇趣味を取り入れた渡辺あやの脚本が秀逸
 300年近くにわたる江戸幕府が終焉(しゅうえん)を迎え、明治に移り変わる時代。杉浦日向子氏の名作漫画をベースに、幕府の解体と共に水戸に追放された徳川慶喜と江戸市中を守るために結成された彰義隊に属した若者たちの刹那的な青春を描いた本作。瀬戸康史ふんする青年・柾之助が動物のむくろをまたごうとした瞬間、横の家屋をのぞくと「何やらしれぬモノ」が腐っていた……という冒頭からして、死のにおいが充満する、暗く静かな映画だ。上様を見送ったときから、「この命、ささげ奉るものなら、かほどの喜びはなし」と、彰義隊に全てをささげようとする極(柳楽優弥)と、養子として入った家を追い出され成り行きで極と運命を共にしようとする柾之助。幼なじみ同士の青年二人の対照的な生きざまも体現した柳楽&瀬戸の好演もさることながら、「百物語」など怪談に造詣の深かった杉浦氏の怪奇趣味を反映するかのように、映画オリジナルの摩訶(まか)不思議なエピソードを挿入した渡辺あやの脚本が秀逸だ。中でも興味深いのが、酔った男が寺の境内にあるクスノキの根元で眠ったことから生涯、妻をめとらず夜な夜なクスノキの根元で眠り続けたという話、そして極の夢枕に将軍・慶喜が立ったという話……。どちらの男も、何かに取りつかれている。そんな神秘的なムードが、新政府軍の総攻撃によりわずか1日で壊滅した彰義隊の悲しい末路を、美しく彩っている。ラストで極の元いいなずけ・砂世(門脇麦)が披露する、極にまつわるもう一つの奇妙な話も、観る人によって解釈の異なる趣となっており、余韻を引く。(編集部・石井百合子)

映画『合葬』は9月26日より公開

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