マーベルのヒーローチーム『ファンタスティック・フォー』とは何だ!前シリーズとの違いは?
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世界の映画産業の中心・アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新! 全米HOTムービー」。今回は、新たに制作された映画『ファンタスティック・フォー』のキャストを取材! そもそも「ファンタスティック・フォー」とは何なのか、キャストの素顔、前シリーズとの違い、映画の賛否にまで迫りました。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
「ファンタスティック・フォー」って何?
「ファンタスティック・フォー」はアメコミ界の巨匠スタン・リーとアーティストのジャック・カービーが1961年に創造した、マーベルコミックス最初のスーパーヒーローチーム。1960年代まだ小さな出版会社だったマーベルコミックスが同作を通して当時のポップカルチャーに影響を及ぼし、後に巨大な複合企業になっていくきっかけを作ったことはあまり知られていない。
ヒーローチーム「ファンタスティック・フォー」を構成するのは、予期せぬ事故で特殊能力を得てスーパーヒーローと化した4人の若者だ。
“Mr.ファンタスティック”ことリード・リチャーズ
天才的な発明オタク兼チームのリーダーで、手足をゴムのように自由自在に伸び縮みさせることができる。
“インビジブル・ウーマン”ことスー・ストーム
体を透明にすることができるシャイな女性科学者。
“ヒューマン・トーチ”ことジョニー・ストーム
体を炎に変化させて空も飛ぶことができるが、時々暴走してしまうスーの弟。
“ザ・シング”ことベン・グリム
石のような体で人並み外れた力と忍耐力を兼ね備えている。
新たな「ファンタスティック・フォー」を演じた俳優たち!
リード・リチャーズ役に挑んだのは、昨シーズンの賞レースを席巻した映画『セッション』で自身も数々の賞を手にし、若手俳優の中でも群を抜いて演技力がたけていることを証明したマイルズ・テラー(28)。ニューヨーク大学ティッシュ芸術校を卒業しておりスマートなイメージのマイルズだが、記者会見ではよくジョークを連発して会場を笑わせている。
スー・ストームを演じたのは、アメリカンフットボールチーム、ニューヨーク・ジャイアンツの上級副社長クリス・マーラを父に持つケイト・マーラ(32)。妹は映画『ドラゴン・タトゥーの女』に主演した女優のルーニー・マーラで、全くすごい家庭に育っている。10代のころから活躍してきたケイトだが、デヴィッド・フィンチャー監督が手掛けたテレビシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のゾーイ・バーンズ役で一気に株を上げた。実際の彼女は、今回の役柄と性格が似ているのか、育ちが良いせいなのか、記者会見では自ら主張するよりも聞き手に回っているタイプで、自分への質問でも他のキャストにも振るなど機転が利く。
ジョニー・ストーム役は、賞レースをにぎわせた『フルートベール駅で』に主演したことで、デンゼル・ワシントンのようにさまざまなジャンルで幅広い演技ができる黒人若手俳優として期待されているマイケル・B・ジョーダン(28)。サービス精神旺盛なクラスの人気者タイプで、ファンとの写真撮影のため自ら立ち止まることも多く、記者の間でも取材しやすい人物と評判だ。
ベン・グリムにふんしたのは、子役時代に『リトル・ダンサー』で主人公ビリーを演じたことで知られるジェイミー・ベル(29)。その後も『キング・コング』『父親たちの星条旗』といった話題作に出演し、子役出身の俳優にありがちな、道を外れることもなく着実にキャリアを積んできた。近年では『スノーピアサー』(韓国のポン・ジュノ監督)や『ニンフォマニアック Vol.2』(デンマークのラース・フォン・トリアー監督)などさまざまな国の監督たちと仕事をしている。子供時代から仕事をしてきたせいか4人の中でも一番落ち着いていて、まだ30歳前だが貫禄さえ感じさせる。ただ、時折おどけてみせるなど、少年のような表情を見せることもある。
『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』(2005)との違い
オリジナル版の『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』では、スー役のジェシカ・アルバとジョニー役のクリス・エヴァンスは当時20代だったが、リード役のヨアン・グリフィズは30代、ベン役のマイケル・チクリスに至っては40代に入っていて、原作と異なり年齢設定がバラバラだった。しかし、今作ではメンバー全員が30歳前後の同世代俳優となっている。
さらに、原作ではリードとスーは後に結婚する設定だが、オリジナル版ではリードとスーは元恋人の設定、今作ではいまだ恋人にさえなっていない設定となっている。
オリジナル版は興行的にはまずまずの成功を収めたが、スー役のジェシカはゴールデンラズベリー賞最低主演女優賞や最低スクリーンカップル賞にノミネートされるなどその演技は酷評された。だが今作では、実績のある若手演技派を意図的にそろえ、オリジナル版とはあえて異なるアプローチを取っている。
キャスト陣が明かす秘話!
マイルズ・テラー
『セッション』で演じたのが今作のジョニーのようなかんしゃく持ちだったため、もしジョニー役をオファーされていたら断っていたと語る。リード役に関しては、科学や発見に固執して人類の進歩を望む人物である点が好きで、他人の目を気にせず、異次元空間の研究に専念しているところが気に入っているという。
ケイト・マーラ
これまで数多くのスーパーヒーロー作品のオーディションを受けてきたが、今作まで一度もその役柄を手にしたことがなかったと語るケイト。これまでのスーパーヒーロー作品のオーディションではコスチュームに着替えていたが、今作では着替えもせずに他の3人のメンバーと息が合うかチェックしながらテストを受けたといい、それが起用につながったそうだ。
マイケル・B・ジョーダン
『クロニクル』でも今作の監督ジョシュ・トランクとタッグを組んだマイケルは、ある日、トランク監督とビデオゲームをしながら将来のことを話していた際に、このジョニー役をオファーされたと明かす。飛行シーンで宙づりにされた際、ワイヤーと安全用のベルトが体や股間を締め付けて非常に不快だったと告白しているが、本編では見事にポーズを決めてしっかり飛んでいる。
ジェイミー・ベル
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのゴラムや『猿の惑星』シリーズのシーザーなど、パフォーマンスキャプチャーの先駆者として映画界で活躍するアンディ・サーキスと『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』などで共演しているジェイミー。アンディがキャラクターを体現して世界中の観客を魅了してきたのを目の前で見てきたことが、今作でのパフォーマンスキャプチャーのアプローチにも役に立ったと明かしている。
仕上がりは監督の意図したものではなかった……?
今作の全米オープニング興行収入は2,568万5,737ドル(約30億8,228万8,440円)で初登場2位。通常の映画ならばまずまずの成績だが、マーベル作品としては正直あまり芳しくないのは事実だ。(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル120円計算)
8月7日にはメガホンを取ったトランク監督が「1年前はファンタスティックなバージョンができていた。素晴らしい批評も受けることができたかもしれない。だが、あなた方はおそらくそれらを観ることはないだろう」とツイートして物議を醸した。20世紀フォックスはトランク監督にファイナルカット(最終編集権)を委ねず、完成した映画は監督の思い通りの作品ではなかったようだが、映画内にはトランク監督の繊細なキャラクターへの配慮も見られる。
映画『ファンタスティック・フォー』は10月9日より全国公開
(C) 2015 MARVEL & Subs. (C) 2015 Twentieth Century Fox
【今月のHOTライター】
■細木信宏/Nobuhiro Hosoki
海外での映画製作を決意し渡米。フィルムスクールに通った後、テレビ東京ニューヨーク支局の番組「ニュースモーニングサテライト」のアシスタントとして働く。現在はアメリカのプレスとして活動中。