第30回:ウーマンラッシュアワーの『キングスマン』談義
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、オスカー俳優コリン・ファースがキレキレのアクションを披露! 『キック・アス』の監督が手掛けたスパイ映画『キングスマン』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
村本:音楽でいえば秒単位でサビがくる感じというか。常に目が離せなくて見とれてしまったわ! アクションもすごくて、多少グロい描写もあるんやけど、何かおしゃれなものを観た気分になる。
中川:濃かったなぁ。テンポもよくて2時間あるように感じさせへん。無駄がなかった!
村本:監督が『キック・アス』のマシュー・ヴォーンなんやけど、この人はいつも、やんちゃ過ぎて危なっかしいのがいい! 人が殺されるとこでもアートな感じで演出していて画面にくぎ付けになる。もう、イカレてるのよ。そんな人が監督していて、常識外のことばっかり起こるからハラハラするというか。
中川:あそこまでやられると笑ってしまうわ。それでいて、ここでキメてほしいっていうところではちゃんと濃いセリフがしっかり入ってくるし。
村本:さらに、活躍するのはいわゆるアメコミ映画とかに出てくるヒーローとは真逆の英国紳士。「キングスマン」っていうイギリスの諜報(ちょうほう)組織のエージェントで、特殊な(仕掛けのある)高級傘で戦ったり。スーツ、アイテムとかとにかくおしゃれなのよ。スパイ映画やけど女の子が観ても楽しそう。僕的には『キック・アス』よりも面白かった!
中川:ホンマ、最初から最後まで全部が良かったわ~。普通、映画の最初でスタッフの名前が出てくるなんかは飛ばしたくなるやん? でも、この映画は最初から引き込まれて、全くそんな気分にならんかったわ。
村本:イギリスの貧乏な不良青年が、死んだ父親の所属していたキングスマンにスカウトされるっていう話で、「生まれが貧しいからって人生は決まらない」みたいなことを言われるやん? 僕も暴走族的な友達と遊んだり、学校に行っていなかったりとかして、頭も茶髪にして。そんで、高校をやめてお笑いを始めて仕事がうまいこといって……って道をたどったからか、主人公とちょっと似ている部分がある気がしたわ。
中川:頭を使ってお笑いでノシ上がっていくっていう道を歩んでいるという意味では、共通するものはあるんかな?
村本:お笑いって、結局は言葉を紡いでしゃべっているわけやから、貧乏な出でもどこか品があるというか、「紳士」でないとダメみたいなところがあると思うのよ。そういうところは似ている!
中川:今は特に、お笑いってインテリじゃないとできないみたいな感じあるかもな。
村本:やっぱり、スタイリッシュで、言葉に品があるからこそかっこいいわけや。キングスマンも、メガネにテーラードスーツを着て傘を持ちながら、いざスイッチが入ったらそのまま人の首やら手をはねる、血で血を洗うような戦いをしている。そのギャップがまたかっこいい。漫才師かて、舞台に上がったときは大体スーツ着てるやろ? その見た目やからこそ、言葉一つ一つに説得力が出てくるわけ。
中川:この映画観ていると、スーツがかっこよく思えるよな。「スーパーマン」のコスチュームみたい。
村本:まあ、でも僕ら二人が「キングスマン」なわけではないけどな。あくまでも「キングスマン」は僕だけ。おまえは主人公が連れていた犬や!
中川:あれパグやんか! もうちょっといいのにしてよ!
中川:青年を鍛えるキングスマンのハリーを演じたコリン・ファースが、教会でとんでもない人数相手に大立ち回りするでしょ。あのアクションは特にすごかった!
村本:あそこの撮影、ほぼワンカットやって! この人いくつ? 55歳って……すご過ぎやろ。
中川:ハリーに倒される人たちもすごいよな。乱闘シーンやから、全員が次に誰を襲って倒されるとかいう段取りを考えて、同じタイミングで進んで動かんと、全部ずれていくもの。あの人数で「吉本新喜劇」やるって考えたら恐ろしいで!
村本:新喜劇でやったら誰一人として合わんやろ。いまだにこけるタイミングがずれている人いるからな。
中川:でも、100パーセントずれずにやるなんて無理やろ。
村本:いや、僕らは、ネタの終わりが全くずれへんやん。大体、舞台で出番があるとネタの持ち時間が10分で、短いと7分台で終わったりする人もおるわけ。でも僕らは、「はい、どうも~」で始まってから、「ありがとうございました」までで、10分ちょうど。ほかの人では、あんまり見たことないよ。
中川:確かに、ぴったり10分00秒はあまりないと思うわ。
村本:それをキメたときの気持ち良さみたいなものをこの映画の緻密なアクションに感じる! やっぱり、このヴォーン監督はアクションが好きなんやろうな。
中川:銃を撃たせへんために相手の人差し指を切ったり、銃を奪ってそのまま後ろのやつを撃ち殺したりとか、流れが緻密。何か空手の「型」を見ているような気分やったわ!
村本:ドラマでいえば、テレビドラマの「リーガルハイ」で堺雅人さんの長ゼリフが決まったときみたいな気持ち良さ。それのアクション版や!
中川:コリン・ファースもやけど、役者みんながハマり役やったよな。
村本:台本の読み合わせで役者陣が、「みんなおいしいですねぇ」って言い合っていそう。両足が刃物みたいな義足になっている女の子! あの娘、かっこよかったな~。
中川:彼女のボスを演じたサミュエル・L・ジャクソンもよかったわ~。地球のために人口を減らそうとする悪役で、IT富豪なのにヒップホッパーみたいな格好が似合ってんのもおもろい。
村本:何をやるかと思えば、「世界中の人にタダでSIMカード配ります!」って。
中川:実はそこから神経に作用する信号が出て、世界中の人がみんな、狂ったようにお互いを襲うようになる。青年のお母さんも、まだ小さい妹を殺そうとして……。
村本:いやね、僕はあの場面、どっか懐かしい感じがしたのよ。
中川:は?
村本:いや、青年のお母さんが包丁を持って襲うやろ? あそこでおまえの嫁を……。
中川:何でや! まぁ、実際あの子供ぐらい僕がおびえているときはあるけどな。
村本:そらおまえが浮気するからやろ! ただの「浮気ングスマン」やないか!
中川:浮気ングスマン、キングスマンと違ってぜんぜん身元隠さへんで!
『キングスマン』
『英国王のスピーチ』などのオスカー俳優コリン・ファースを主演に迎え、『キック・アス』などのマシュー・ヴォーン監督がメガホンを取ったスタイリッシュな痛快スパイアクション。世界を股に掛けて秘密裏に活躍するスパイ機関所属の主人公が、最強の敵相手に奮闘する姿が描かれる。『ダークナイト』のマイケル・ケインやサミュエル・L・ジャクソンらが共演。エレガントな衣装、小道具やウイットに富んだ会話に加え、切れ味のいい怒とうのアクションに圧倒される。
(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。