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第5回:藤井まゆみのとまとさんの言うとおり!? - 2015年10月公開作品編

とまとさんの言うとおり!?

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とまとさんの言うとおり!?

 アメリカの大手映画レビューサイト Rotten Tomatoes の批評家満足度を基に、10月公開作品をランキングでご紹介。さらに Rotten Tomatoes の批評家たちが選んだベスト5に対して、ニコニコ生放送「元祖シネマざんまい」にも出演している映画コメンテーターでモデルの藤井まゆみが、独自の視点で切り込みます!

Rotten Tomatoes ベスト5

第1位:『光のノスタルジア』 批評家満足度100%
第2位:『裁かれるは善人のみ』 批評家満足度99%
第2位:『名もなき塀の中の王』 批評家満足度99%
第4位:『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』 批評家満足度94%
第5位:『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』 批評家満足度90%
(2015年9月25日時点)

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まゆみ’sチェック!
光のノスタルジア

『光のノスタルジア』

 2010年と2011年の賞レースで最優秀賞を多数受賞。ドキュメンタリー業界で評価の高いチリ生まれの監督、パトリシオ・グスマンによって「天文学」と「過去」に関する二つの事柄が神秘的に描かれるドキュメンタリー。美しさという点では目を奪われる映像ではあるが、ストーリーを理解するのはやや困難。チリのアタカマ砂漠は天文学の研究をする場所に適しているという未来を見据えた明るい語りで話は始まるものの、 長く続いたチリの独裁者政権下で起きた大虐殺の証拠がこの砂漠にも埋まっているという「過去」のダークサイドが後半目立つようになり、物語の核がどちらなのか見えにくくなっていく。しかし、これら二つの矛盾した事柄が「宇宙のエネルギー」でつながっていることが、監督自らの感性で前向きなメッセージとして解説される。テーマが身近なものではないために、それぞれの価値観によって好みが分かれそうだ。

裁かれるは善人のみ

『裁かれるは善人のみ』

 作品を世に送り出すごとに世界の賞レースの話題となる、ロシアの奇才アンドレイ・ズビャギンツェフの新作。第87回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、第72回ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞、第67回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。多数の賞レースでも受賞の功績を残した。生まれ育った海辺の土地を手放したくないばかりに、周りを巻き込み全てを狂わせてしまう主人公の男、コーリャの不器用さと苦悩が観ている者の奥底に響く。権力に打ちのめされる無力な一般市民であるコーリャとその妻、息子、友人たち。そして行政との間で、愛憎が絡み合うメロドラマ風に話が展開していき、とっつきやすさを狙った点も良い。暗いトーンで広がる海を背景に「神と真実は世の中に存在するのか?」と問い掛けられる。皮肉な現実は、ときにやり場のないほどの衝撃をもたらす。

名もなき塀の中の王

『名もなき塀の中の王』

 主演のジャック・オコンネルが、暴力でしか自分を表現できない少年エリックをキレキレに演じ、『ベルファスト71』とは違った一面がクローズアップされている。凶暴すぎるために少年院から刑務所に移送される19歳のエリックは問題を起こし続けるが、周りの人間たちの助けで感情を抑制できる人間に成長していく。父と子の関係性にもスポットが当てられた感動のヒューマンドラマではあるが、前半をドキュメンタリータッチに丁寧に描きすぎたばかりに後半が急ぎ足に。余韻に浸る時間がもう少し欲しいようにも感じた。オコンネルのカリスマ性と、映画『アニマル・キングダム』で評価を得たベン・メンデルソーンの演技に目を見張る。

ヴィヴィアン・マイヤー

『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』

 オークションでネガフィルムを手に入れた青年ジョン・マルーフによって、世界中に発信されたある写真。世界中で絶賛されたその写真を撮ったのは、ナニー(乳母)を職業にしていたヴィヴィアン・マイヤーという名の一般女性だった。第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた本作では、83分で、彼女を知る人たちのインタビューシーンを通じ、謎に包まれていたマイヤーの人間像がひもとかれていく。プロカメラマンではない“普通”の人がどのような生活を送っていたのか、マルーフ監督はシンプルに構成・説明しており、スタート10秒で観客は物語のとりこになってしまうはず。有名写真家も絶賛したマイヤーの写真には、彼女自身が得ることができなかったささやかな幸福が被写体からにじみ出ている。

アメリカン・ドリーマー

『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』

 1980年代初頭のニューヨークで、オイル会社を一代で築いた男、アベルに降り掛かる困難を描いた社会派ドラマ。薄暗いトーンの中に鮮やかに映える衣装の美しさや、主人公アベルを演じるオスカー・アイザックの口のうまい冷静な実業家ぶりが最大の見もの。演出は実にあっさりとしているため、監督ならではの特色がもう一つ欲しいようにも思える。ジェシカ・チャステインアルバート・ブルックスデヴィッド・オイェロウォら演技派への期待が高まるものの、この作品はアベルの精神的部分にもっと深く迫っていればアカデミー賞作品賞への候補入りは確実だったように感じる。

まゆみ’s ベスト5

第1位:『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』
第2位:『裁かれるは善人のみ』
第3位:『名もなき塀の中の王』
第4位:『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
第5位:『光のノスタルジア』

 良質のアート作品がずらりと並んだ10月公開の5本。今回は「心に訴える」要素の強い作品で順位付けをした。『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』は自分の身の回りにもいるかもしれない、隠れた才能を持つ一般人を探る過程がとても興味深く、オープニングから魅了された。『裁かれるは善人のみ』の皮肉な展開には目がくぎ付けになり、鳥肌が立つほどの衝撃を覚えた。『名もなき塀の中の王』は人間ドラマが素晴らしいだけに、尺の短さが悔やまれる。『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』『光のノスタルジア』はそれぞれの個性が光る面白い作品ではあるが、視点がハイレベル過ぎるように感じ、観客をもう少し意識した作りにしても良かったと思わせられた。

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プロフィール
プロフィール

◆ 藤井まゆみ Mayumi Fujii Twitter:@mayumi_fujii
オフィシャルブログ:『藤井まゆみのシネマジャーナル』2010年に第一回 国民的"美魔女"コンテスト「美肌魔女賞」を受賞。以降、Team美魔女のメンバーとして各方面で活動中。大の映画好きがきっかけで6年間ロサンゼルスの映画留学を経験した豊富な知識を生かし、 "映画を観て美しくなろう!"をコンセプトに「美に効くサプリ」として映画を紹介する、映画 "ビューティ" コメンテーターとして活動をスタート。
【映画関連】
<記事>
・2013年5月~ 映画エンタメ情報『シネマカラーズ』、美に効く映画[サプリ]連載
・2014年12月~ トレンドミックスマガジン『VANITY MIX ヴァニティ・ミックス』、藤井まゆみの魔ジカルCINEMA 連載
【雑誌・広告】
2010年~ 光文社「美STORY」
2012年 小学館 「週刊ポスト」グラビア出演
2014年 ショップチャンネル 藤井まゆみプロデュース「BE GENE」
2014年~ 美サロ イメージキャラクター

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