超人アクションから本格派サスペンスまで!おすすめ新・海外ドラマ特集
最新!全米HOTムービー
世界の映画産業の中心・アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新! 全米HOTムービー」。アメリカでは9月から学校の新学期が始まり、テレビ業界も新しいシーズンを迎える。その時期を前に、ハリウッドの有名スタジオが盛大に行う毎年恒例の「LAスクリーニング」(新番組お披露目イベント)に参加し、2015下半期~2016上半期の最新ドラマをひと足先に観てきた筆者が、皆さんにこっそりおすすめ作品をご紹介!(文・写真:明美・トスト/Akemi Tosto)
記憶をなくした入れ墨美女が超人アクション!
「ブラインドスポット(原題)/ Blindspot」
舞台はニューヨーク。タイムズスクエアのど真ん中に放置された巨大なバッグの周囲に爆弾処理班が集結する。うごめき始めたバッグを処理隊員が恐る恐る開けると、中から出てきたのは一糸まとわぬ美しい女性だった。保護されジェーン・ドーと名付けられた彼女にはまったく記憶がなく、体に刻まれている無数の入れ墨にも覚えがない状態だった。
彼女の背中に彫られた「カート・ウェラー」という名のFBI捜査官が捜査に加わったと同時に、テロにも似た事件が勃発する。ジェーンの身に危険が迫ったとき、彼女の超人的コンバット術が火を放つ。一体、そんな技術をどこで身に付けたのか? 自分は何者なのか。やがてジェーンの入れ墨にヒントが隠されている可能性が浮上するが……。
主人公の入れ墨美女ジェーンを演じるのは映画『マイティ・ソー』シリーズのシフ役でおなじみのジェイミー・アレクサンダー。髪をバッサリ切り、新境地の大役に挑む。男子はもちろん、女子にもアピールする不思議な魅力を持つジェーン。ネットワーク番組での主演ということで、お茶の間の人気者になる可能性大だ。共演でFBI捜査官カート・ウェラーを演じるサリヴァン・ステイプルトンが少々淡白なのが気になるが、ジェイミーのカリスマ性とストーリーの面白さでグイグイ引っ張ってほしいところ。
ホラーファン必見、放送ギリギリの恐怖!シュワちゃんの息子も登場
「スクリーム・クイーンズ(原題)/ Scream Queens」
『ハロウィン』や『13日の金曜日』など往年のホラー映画要素てんこ盛りのホラーコメディー。舞台となるのは大学の女子社交クラブ。主人公シャネルが会長を務めるこのクラブは、生徒たちの規律に目を光らせている学園長から目を付けられている。そんな矢先、20年前の忌まわしい“レッド・デビル”連続殺人事件を彷彿(ほうふつ)させる殺人事件が発生し、キャンパスを恐怖の底に突き落とす。
ざっくり言うと、映画『スクリーム』を土台にしたドラマなのだが、製作チームに人気ドラマシリーズ「アメリカン・ホラーストーリー」のライアン・マーフィーを迎えていることから、道徳上、放送ギリギリの際どい作りになっていて楽しい。主演を務めるのは、こちらもアメホラでおなじみ(そしてジュリア・ロバーツのめいっ子!)のエマ・ロバーツ。また、元祖ホラー映画女王のジェイミー・リー・カーティスが女学部長役で目見えしているのも、ホラーファンにはうれしいところ。
人気歌手のアリアナ・グランデや、アーノルド・シュワルツェネッガーのイケメン息子パトリック(22)も主要キャラに抜てきされるなど、放映前からかなり話題となっている番組。
『アメリカン・スナイパー』俳優陣がドラッグサスペンスに挑む!
「リミットレス(原題) / Limitless」
映画『アメリカン・スナイパー』でハリウッドのAリスト(=トップレベルのタレント)入りをしたブラッドリー・クーパー。彼が2011年にロバート・デ・ニーロと競演した同名サスペンス映画のテレビドラマ化にあたるのがこの作品だ。ブラッドリー自らが製作総指揮に加わり、俳優としても映画版と同役でゲスト出演している。テレビ版の主役を務めるのは新星ジェイク・マクドーマン。『アメリカン・スナイパー』でブラッドリーと共演を果たしているジェイクは、ブラッドリーとはまた異なる魅力を持った、どちらかというと母性本能をくすぐるキュートなタイプの俳優だ。
両親の心配をよそにロックスター志願のプー太郎であった主人公ブライアンは、突如父親が倒れたことから自分の人生を見直さざるを得なくなる。そんなとき、投資家として大成功し、見違えるようになった昔のバンド仲間に行き合う。彼の成功は、服用すると頭脳の働きが異常に活発になり、一定期間だけ天才になれるNZTというドラッグのおかげだという。
ブライアンも少し分けてもらい半信半疑で試してみたところ、不治の病と診断された父親の治療法を一晩のリサーチで見つけることに成功。それまでに経験したこともない優越感と高揚感でドラッグが病みつきになったブライアンは、もっとドラッグを譲ってもらうために友人宅を訪れるが、殺されている友人を発見してパニックに。間もなくブライアンの周囲でNZTに関わった人間たちが次々と殺されていくのだった。
映画版に比べ、ドラマ版では登場人物をより深く掘り下げて描いているため、ストーリーに厚みが出ている。また、映画では明かされなかったNZTの出どころが突き止められる可能性もあるとのことで、映画ファンにとってもうれしいドラマシリーズになりそうだ。
“東洋のオーランド・ブルーム”はジャッキー・チェンを超えられるか
「ラッシュアワー」
タイトルを見て映画ファンならピンと来るように、ジャッキー・チェン&クリス・タッカーの大ヒット映画が原作の犯罪コメディードラマ。本作で注目すべきは、映画でジャッキーが演じたリー捜査官役のジョン・フー。中国・アイルランド系のイギリス人で、ちょっとタレ目の甘いイケメン。ドラマの中でもカーター刑事の女ボスから「東洋のオーランド・ブルーム」と色目を使われるシーンがあるほど(この場面では試写場が爆笑の渦に!)。だがジョンはその甘いルックスとは裏腹に、これまで『TEKKEN -鉄拳-』や『ヴァイキングダム』では硬派な役で活躍。とはいうものの、アメリカでも知名度はまだまだ低いため本作での飛躍が期待されている。
ドラマのストーリーは基本的に映画とほぼ同じだが、オリジナル版でのさらわれた少女を救い出すという設定から、女性警官でリーの妹を救い出すという筋書きになっている。カーター役のジャスティン・ハイアーズとリー役ジョンの相性も上々。このドラマはかなり期待できそう。
蘇生した老人…遺伝子工学を絡め描く、生存を懸けた重厚ストーリー
「ルッキングラス(原題)/ Lookinglass」
グッドウィン財閥のオットーは若いながら天才的な頭脳を持ち、姉メアリーと共に最先端の遺伝子工学研究所を築き上げていた。だがオットーは、極度の社会適応障害でもあり、姉の介護がなくては日常生活を送れない状態だった。メアリーががんで余命いくばくもないことがわかり、延命のためには遺伝子適合者から作った血清が必要であることが判明したとき、姉弟の時間との闘いが始まる。そんな折、グッドウィン姉弟のもとに汚職嫌疑で解雇を余儀なくされた元警官の老人レイ・プリッチャードが川に飛び込んで自殺を図ったというニュースが入ってくる。
閑静な住宅街に朝がやって来る。死んだはずのレイが自宅で目を覚ます。枕元には美しい女性がおり、わけのわからぬ状況説明を始める。彼女を追い出しつつ洗面所の鏡を見たレイは度肝を抜かれる。鏡に映っていたのが30代の自分だったからだ。メアリーと名乗る女性は、レイに人生のやり直しをオファーする。困惑するレイはメアリーを追い出すが、あとになり人間離れした怪力とスピードが自分に備わっているのがわかったとき、メアリーのもとを訪ねて事の成り行きを知る。決まった時間に注射を受けなければ死んでしまうレイ、レイの血清がなければがんに負けてしまうメアリー、そしてメアリーなしでは生きられないオットー。お互いがいなくては生存が成り立たない者たちの危険なドラマが開幕する。
本作は、LAスクリーニングの時点では「フランケンシュタイン・コード」というタイトルで試写されていたのだが、ヒーローが蘇生されたという部分のみが「フランケンシュタイン」に似ているだけで、他の筋書きはオリジナル性が高いことから、視聴者が「フランケンシュタイン」にとらわれないようにとの計らいで「ルッキングラス」(=鏡)に変更された。映画のリメイクやコミックのテレビドラマ化が多い中で、本作は現代医療の注目分野である遺伝子工学を巧みにストーリーに織り込みながら、ユニークな物語展開を試みており、なかなかの期待どころだ。
以上、主観たっぷりで注目の新番組を紹介したが、これはほんの一部。ほかにも、ひと昔前にスティーヴン・スピルバーグ監督&トム・クルーズ主演で大ヒットした映画『マイノリティ・リポート』のテレビドラマや、ラスベガスを舞台にしたウェズリー・スナイプス主演のサスペンスドラマ「ザ・プレイヤー(原題)/ The Player」、人気ドラマ「ゴシップガール」の人気俳優チェイス・クロフォードとドン・ジョンソンが美女と油田を懸けて(!?)醜い争いを見せるドラマ「ブラッド&オイル(原題) / Blood & Oil」、そしてスーパーマンのいとこであるカーラ・ゾー・エルを主人公にした「スーパーガール」など新番組がめじろ押し。
これらに新シーズンを迎えるドラマシリーズ、例えば「アメリカン・ホラーストーリー」「ARROW/アロー」「FARGO/ファーゴ」「エージェント・オブ・シールド」「HOMELAND/ホームランド」などを加えると、録画が追いつかないほど観たい作品がドッサリだ。日本でもNetflixが9月から映像配信サービスを開始したように、日本で海外ドラマを視聴するための環境が向上している。紹介したような面白い最新ドラマが、これまでよりもっと早く日本で見られるようになるかもしれない。
【今月のHOTライター】
■明美・トスト / Akemi Tosto高校よりロサンゼルス在住、CMや映画の製作助手を経て現在に至る。全米映画協会(MPAA)公認ライターとしてだけでなく、監督としても活躍中。短編作品『ボクが人間だったとき/When I Was a Human』がアカデミー賞公認配給会社ショーツ・インターナショナルより配給され、iTunesとAmazonで日本版発売中。ツイッターもよろしく!→@akemi_k_tosto■明美・トスト / Akemi Tosto高校よりロサンゼルス在住、CMや映画の製作助手を経て現在に至る。全米映画協会(MPAA)公認ライターとしてだけでなく、監督としても活躍中。短編作品『ボクが人間だったとき/When I Was a Human』がアカデミー賞公認配給会社ショーツ・インターナショナルより配給され、iTunesとAmazonで日本版発売中。ツイッターもよろしく!→@akemi_k_tosto