第6回:藤井まゆみのとまとさんの言うとおり!? - 2015年11月公開作品編
とまとさんの言うとおり!?
アメリカの大手映画レビューサイト Rotten Tomatoes の批評家満足度を基に、11月公開作品をランキングでご紹介。さらに Rotten Tomatoes の批評家たちが選んだベスト5に対して、ニコニコ生放送「元祖シネマざんまい」にも出演している映画コメンテーターでモデルの藤井まゆみが、独自の視点で切り込みます!
第1位:『ハッピーエンドの選び方』 批評家満足度:93%
第2位:『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』 批評家満足度:92%
第3位:『美術館を手玉にとった男』 批評家満足度:91%
第4位:『みんなのための資本論』 批評家満足度:90%
第5位:『エベレスト 3D』 批評家満足度:72%
(2015年10月19日時点)
第71回ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ BNL観客賞などを受賞し、世界の映画祭で観客を虜(とりこ)にしたイスラエルのコメディードラマ。老人ホームに住む仲間たちが団結し、望まぬ延命治療をされている親友に安楽死を迎えさせようとするという重いテーマを扱いながらも、この映画のテイストは非常に明るい。オープニングから絶妙なタイミングで笑いが差し込まれ、老人たちの友情や裏切りによるアクセントは各人物の個性を輝かせる。エンタメ性を重視した約1時間半の綿密な脚本力にうならせられること必至。最後には心地よい涙があふれるだろう。本作で主演女優賞を多数受賞した、主人公の妻役のレバーナ・フィンケルシュタインの愛らしさも観る価値アリ。
飼い主の少女と離れ離れになったことで、人間たちのエゴにより野生的に目覚めていく雑種犬の目線で描かれたハンガリー発のサスペンスドラマ。第67回カンヌ国際映画祭では、ある視点部門賞と犬の演技をたたえるパルムドッグ賞を受賞。穏やかな性格だった犬・ハーゲンの不安げな顔が、徐々に怒りの表情に変わっていく過程は目が離せない。愛犬から引き離された少女の心は観ている者の胸を打つ。やり切れない思いに駆られるが、犬の目から卑劣な人間社会を映し出した犬版『猿の惑星』と言われても納得の強いメッセージ性が響く1本。
第86回ナショナル・ボード・オブ・レビューでドキュメンタリー映画トップ5に選ばれた本作は、歴史上の名画を模倣し続け、それらを無償で美術館に寄贈していた男、マーク・ランディス氏に迫る物語。30年間、贋作(がんさく)作家として人をだますことが“慈善事業”であると信じて行動するマークと、それをやめさせたい美術館職員マシュー・レイニンガー氏を対比しながら楽しめる。しかし、精神疾患のあるマークのユニークすぎるキャラクターがインパクトありすぎて、他の人間たちが描写されるたびに気が散ってしまうことが少々残念。カット割りの多さも目立ち、主人公に興味をわかせることが目的のドキュメンタリーとしては、キャラクターが十分に立っているマークの素顔だけ映していても観客は飽きなかったはず。もっとこの主人公を知りたいと物語の続きを観たくなる一作。
ビル・クリントン元大統領と大学時代からの友人であり、クリントン政権下で労働長官として活躍した身長147センチの経済学者ロバート・ライシュ氏。カリフォルニア大学バークレー校で教える彼の講義シーンを中心に、アメリカ経済の実態がひもとかれていく。大学の生徒たちを笑いの渦に巻き込む彼のトーク力は、まるでプロのコメディアン。愛車のミニクーパーを自分の分身のように乗り回し、人を魅了するスターオーラを備えたロバート氏の明るく流ちょうな語りから多くを学べる教科書的ムービーだ。上流階級が収入を得て、一方では貧困を余儀なくさせられる格差社会。資本主義において、お金はどう動いているのか、そして人々はどう考えどう行動したらいいのか。身近に起きている問題の将来を見据えた、楽しみながら勉強できるドキュメンタリー。
1996年、エベレストの登頂を目指す登山家たちが、突然の天候悪化で死と隣り合わせの極限状態に追い込まれるサバイバルドラマ。実話に基づいた説得力と、3Dによるビジュアルの魅力で見応えはある。しかし、ヒューマンドラマなのかサバイバルスリラーなのか、どっちつかずなメリハリのない展開により物語への感情移入が難しい。ジェイク・ギレンホールやキーラ・ナイトレイらが脇役という豪華なキャスティングで期待値が増してしまう分、見終わった後の疑問も大きくなりがち。観客を巻き込むインパクトがもう一つほしかったところ。
第1位:『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』
第2位:『ハッピーエンドの選び方』
第3位:『みんなのための資本論』
第4位:『美術館を手玉にとった男』
第5位:『エベレスト 3D』
批評家好みのアート系に比重が置かれた11月公開作品のランキング。今回は人間や動物の“生”と“尊厳”をテーマに、視点のユニークな作品を上位に選んだ。『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』はCGに頼らず、人間社会に脅かされて苦悩する犬の表情でぐいぐい引っ張る演出に圧倒された。『ハッピーエンドの選び方』は老人の最期を温かな笑いで包み、各登場人物の個性を生かした脚本が深い。ドキュメンタリー作品の『みんなのための資本論』と『美術館を手玉にとった男』は、どちらも主人公の強烈な個性が光る濃い作品だが、アメリカの経済問題をわかりやすく語ったロバート・ライシュ氏のパワー勝ち。「『エベレスト 3D』は、クライマックスに近づくつれ映像の迫力は増していくが、ストーリーがそれに並行しなかったことが惜しい。
◆ 藤井まゆみ Mayumi Fujii
Twitter:@mayumi_fujii
オフィシャルブログ:『藤井まゆみのシネマジャーナル』2010年に第一回 国民的"美魔女"コンテスト「美肌魔女賞」を受賞。以降、Team美魔女のメンバーとして各方面で活動中。大の映画好きがきっかけで6年間ロサンゼルスの映画留学を経験した豊富な知識を生かし、 "映画を観て美しくなろう!"をコンセプトに「美に効くサプリ」として映画を紹介する、映画 "ビューティ" コメンテーターとして活動をスタート。
【映画関連】
<記事>
・2013年5月~ 映画エンタメ情報『シネマカラーズ』、美に効く映画[サプリ]連載
・2014年12月~ トレンドミックスマガジン『VANITY MIX ヴァニティ・ミックス』、藤井まゆみの魔ジカルCINEMA 連載
【雑誌・広告】
2010年~ 光文社「美STORY」
2012年 小学館 「週刊ポスト」グラビア出演
2014年 ショップチャンネル 藤井まゆみプロデュース「BE GENE」
2014年~ 美サロ イメージキャラクター