ゾンビの恐怖が再燃!「ウォーキング・デッド」シーズン6現場潜入レポート!
ファン待望の「ウォーキング・デッド」のシーズン6がついにスタート。全米で10月11日に放映されたプレミアエピソードは、1,460万人の視聴者を獲得。昨シーズンのプレミア(1,730万人)よりも数字が減ったかと思わせたが、DVR(デジタル録画機)の普及によって、放映日とその後3日間における視聴者数は、1,950万人という驚異的な数字をたたきだした。
第6シーズンを迎えても勢いは衰えず、地上波、ケーブルを含む全ての番組の中で、「ウォーキング・デッド」が全米人気ナンバーワンのテレビシリーズであることを証明したといえるだろう。
プレミアの直前となった10月の初め、今年も同作を撮影中の現場を訪ねた。撮影が行われている、アトランタ郊外にあるセノアという小さな町は、「ウォーキング・デッド」ファンにとってはまさに聖地。シリーズが始まる前はぱっとしない田舎町だったが、ドラマの成功に伴ってファンが数多く訪れるようになり、今ではオシャレなレストランやお店が並ぶ人気スポットにさま変わりしている。
そのセノアにあるラリースタジオは、1990年にアカデミー賞作品賞に輝いた『ドライビング Miss デイジー』や、『ラスト サムライ』の撮影も行われたスタジオで、シーズン1からずっとドラマの本拠地になっている。そんな中、今年も撮影現場に入る前、ネタバレになるような情報を書いた場合は罰金100万ドル(約1億2,000万円・1ドル120円計算)を支払う……という誓約書にサインをさせられた。これだけの額の罰金が明記されている誓約書を用意しているドラマは、「ウォーキング・デッド」だけだ。
撮影現場はスタジオの敷地内にある森の中で、数多くのシーンがこの場所で撮影されている。シーズン6後半のエピソードを撮影中だったこともあり、当日現場で目撃した情報を明かすことはできないが、新たな脅威がリックたちを襲うことは確認できた。
ソンビの特殊メイクを手掛けるKNB EFXの創始者で、シリーズの監督兼プロデューサーを務めるグレッグ・ニコテロは、ショーランナー(脚本家チームのリーダーでプロデューサー)のスコット・M・ギンプルと共に、クリエイティブ面での中心を担う。アンドリュー・リンカーンやノーマン・リーダスら俳優たちからの信頼も絶大で、今や彼なしの「ウォーキング・デッド」は考えられない。
プレミアエピソードではかつてない数のゾンビが登場するシーズン6について、グレッグは「今シーズン、僕らはこの番組がゾンビの番組であるという点を見直すことにした」と語った。
「この番組は今まで、『単なるゾンビ番組じゃない。ゾンビの世界にいるサバイバーたちについての物語だ』とか言われてきた。でも、毎シーズンいろんな脅威がリックたちを襲う中で、ゾンビは常にそこに存在し続けた。それで、ゾンビの脅威をもう一度取り上げることにしたんだよ」。
続いて、主人公リック役として番組の人気をけん引するアンドリューは、今シーズン最もエキサイティングな点は、「自分たちが、あらゆる方面から攻撃を受けるということだ」という。「リックは今シーズンかなり苦境に立たされ、大きな脅威と向き合う。今まで彼の仲間たちが経験したものより、もっと恐ろしい脅威とね。そういったぶつかり合いが、(リックたちがたどりついた安全地帯)アレクサンドリアの塀の中でも、外でも起こるんだ」。
また、今シーズンでファンが気になる点は、アレクサンドラ・ブレッケンリッジ演じる女性キャラクター、ジェシーとリックとの間にロマンスが芽生えるのか、ということだろう。その点についてアンドリューは「アレクサンドラは素晴らしい女優だよ。(今シーズンの)最初の8エピソードで、彼女のキャラクターがとても早く成長するのがわかる。また彼女は、(妻の)ローリが死んで以来、リックがまだ触れておらず、視聴者もしばらく見ていない内面のある部分を、解放することになるんだ」とだけ語った。
リックと対照的な寡黙なヒーロー、ダリル・ディクソン役で俳優としての才能を一気に開花させたノーマン。圧倒的な存在感は、現場で見るとさらに強烈で、同行した他国のジャーナリストが、「あそこにダリルがいる!」と一ファンに戻って興奮するほど。シーズン6では、昨シーズンでアレクサンドリアの平和な環境になじめなかったダリルの変化にも注目だ。
ダリルについてノーマンは「社会が崩壊する前から、ダリルはそういった(アレクサンドリアのような)環境に興味を持っていなかった」と証言。「そして今、(塀の中の)世界が外と違うと装っているのを見て、彼は馬鹿げていると思っているんだ。そこにいる人たちのことじゃなく、そういった考えについてだけどね。ダリルは本当に正直な男で、ウソを言ったりはしない。でも彼は、仲間のために、(グループに必要な人間を探してくる役割の)リクルーターになるのは構わないと思っている。外にいる方が自分らしくいられると感じている、孤独なカウボーイみたいなんだ。一方で、アレクサンドリアの連中はダリルのような人間を欲していて、そのことが彼の心の支えにもなっているんだよ」と語った。
そんなシーズン6のハイライトの一つは、シーズン1でリックと絆を結んだレニー・ジェームズ演じるモーガンが加わったことだ。棒術を操り、どこか禅マスターのような落ち着きを感じさせるモーガンのキャラクターは非常に魅力的。
シリーズ復帰についてジェームズは、「素晴らしいね」と言いつつ、「今でも、来週にはまた番組を去ることになるんじゃないかという気がするよ」とニッコリ。「今回は、モーガンがどんな人間かといったことを、他のキャラクターたちとのやりとりを通して掘り下げることになる。特に、キャロル(メリッサ・マクブライド)とモーガンは両方とも子供や伴侶を失くしているし、二人の間には掘り下げるものがあるんだ」。
昨シーズンのフィナーレで、狂ったジェシーの夫を射殺したリックの表情は、狂気にとらわれ、シーズン2でリックが殺害した親友シェーン(ジョン・バーンサル)そのもの。家族を守るためならなんでもやるようになった彼の姿は、ファンに大きな衝撃をもたらした。人間のダークな面を真正面から描く番組の姿勢が、単なるゾンビ番組で終わらない深い人間ドラマを生み出しているのは明らかだ。
毎シーズン、シーズン半ばで全く違う展開が用意されている「ウォーキング・デッド」。今後どんな新たな敵や脅威がリックたちの前に立ちはだかることになるのか? そして誰が殺されることになるのか? 今年も、ファンにとって待ち遠しい月曜日の夜が始まった。(取材・文:細谷佳史)