第7回:藤井まゆみのとまとさんの言うとおり!? - 2015年12月公開作品編
とまとさんの言うとおり!?
アメリカの大手映画レビューサイト Rotten Tomatoes の批評家満足度を基に、12月公開作品をランキングでご紹介。さらに Rotten Tomatoes の批評家たちが選んだベスト5に対して、ニコニコ生放送「元祖シネマざんまい」にも出演している映画コメンテーターでモデルの藤井まゆみが、独自の視点で切り込みます!
第1位:『禁じられた歌声』 批評家満足度:99%
第2位:『ストレイト・アウタ・コンプトン』 批評家満足度:89%
第3位:『アンジェリカの微笑み』 批評家満足度:88%
第4位:『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』 批評家満足度:85%
第5位:『ヴィオレット-ある作家の肖像-』 批評家満足度:84%
(2015年11月20日時点)
『禁じられた歌声』
美しい砂漠の街、ティンブクトゥ。西アフリカ・マリ共和国にある同都市がイスラム過激派により支配されたことをきっかけに、住民たちは自由を奪われ、さまざまな悲劇が生まれた。本作はフランスで活動する監督、アブデラマン・シサコが幼少期に暮らしたマリの地で、実際に起きた2012年の事件をヒントに製作。フランスの第40回セザール賞では最優秀作品賞を含む7部門で受賞し、第87回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされた。“ジハーディスト”と呼ばれる過激派兵士たちの定める法により住民たちの生活は脅かされ、法に反した住民への処刑シーンなどは衝撃的。しかし複数の人物を描きすぎてしまったために、物語のメインでもある3人家族のドラマが薄く感じられたのが悔やまれる。
警察からの差別や暴力行為や、先の見えない毎日への不満や怒りをアグレッシブな“ハードコアラップ”でブチまけ、80年代にブームを巻き起こしたLAコンプトン育ちの伝説のヒップホップグループ「N.W.A.」。彼らの結成から成功をつかむまでを丁寧に描く。犯罪が多発するエリアで育った黒人である彼らにスポットを当てたからこそ浮き彫りにされる問題など、エンターテインメントとしてだけではなく、社会派ドラマとしても価値のある作品。白人俳優ポール・ジアマッティの配役も功を奏している。「モンスタービーツ」のヘッドフォン人気に火をつけたドクター・ドレー、コメディー映画俳優としてブレイクするアイス・キューブに、問題児イメージだったイージー・Eら、個性的なメンバーの原点は、音楽ファンでなくても十分に楽しめるはず。上映時間2時間27分と長めの作品だが、一時も途切れない映画のパワーに圧倒される。
『アンジェリカの微笑み』
ポルトガルの小さな町に移り住んできたカメラが趣味の青年イザクは、雨の夜に若くして死んだ娘の写真を撮ってほしいと富豪の家に招かれる。イザクがカメラを向けると、なんと死んだはずの娘アンジェリカがこちらに向かってほほ笑んでいるように見えてしまった……。今年106歳で他界した映画監督、マノエル・ド・オリヴェイラの2010年の作品が、5年の歳月を経て日本公開。ほほ笑むアンジェリカのとりこになっていくイザクの心を中心に描き、シンプルで観心地の良い仕上がりに。ポルトガル北側に位置するドウロ河周辺の美しさ、全編に流れるピアノのメロディーに優しく包まれ、癒やされる古き良きライトコメディーとして観られる。
I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』
世界の誰もが愛するビーグル犬「スヌーピー」が登場する人気コミック「ピーナッツ」のキャラクターたちを、ふんわり質感の3Dアニメーションで楽しめる初の映画。妄想好きなスヌーピーの世界も劇中で展開していくため、何をやってもダメなチャーリー・ブラウンと飼い犬スヌーピーの絆のみを期待してしまうと、若干話がそれがちのように感じられる。しかし、現代社会に不可欠なパソコンやスマホなどは一切登場させずに、コミックのヴィンテージ感を生かした雰囲気には、ノスタルジックな気持ちに。また前向きに頑張るチャーリー・ブラウンの奮闘ぶりは子供ならずとも応援したくなる。しゃべらないスヌーピーのかわいらしいオーバーリアクションにも注目だ。
『ヴィオレット-ある作家の肖像-』
1946年、非嫡出子という自身の出自や性と向き合った鮮烈な作品を世に発表したフランス人女流作家、ヴィオレット・ルデュックの孤独な人生を描く。フランス映画特有のテンポの中で主人公が際立つ構図に、もう一人の小説家シモーヌ・ド・ボーヴォワールとのプラトニックな同性愛をなじませているのが興味深い。小説を読むように全編をチャプターで区切った展開は、2時間19分という長さに適していて観やすいが、前半の暗いトーンに引きずられてしまい、面白いストーリーが単調に見えてしまって少々残念。しかし、女優エマニュエル・ドゥヴォスが、過激な性描写の小説とは裏腹に私生活では誰にも愛されずに育ったヴィオレットの精神を見事に演じ、エンディングまで観客を引きつけ続ける姿は素晴らしい。
第1位:『ストレイト・アウタ・コンプトン』
第2位:『禁じられた歌声』
第3位:『ヴィオレット-ある作家の肖像-』
第4位:『アンジェリカの微笑み』
第5位:『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』
2015年の最後を飾るのは、驚くほど嗜好(しこう)がバラけたベスト5。今回はエネルギーが強い作品をランキング上位に持ってきた。上位3作品は実話がベース。中でも『ストレイト・アウタ・コンプトン』は、ヒップホップというテーマながら一般受けしやすい作品に仕上げた監督の演出力と、勇気と希望を与えてくれる登場人物たちの人生観などのポジティブイメージを高評価。『禁じられた歌声』『ヴィオレット-ある作家の肖像-』は、それぞれ素晴らしいストーリー性だが、映像での説得力がもう少し欲しかった。『アンジェリカの微笑み』と『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』はコンパクトな尺で、ライトにいろいろ層が楽しめる作品ではあるものの、もっと時間をかけて色濃くメッセージ性を押し出してもよかった。
◆ 藤井まゆみ Mayumi Fujii
Twitter:@mayumi_fujii
オフィシャルブログ:『藤井まゆみのシネマジャーナル』2010年に第一回 国民的"美魔女"コンテスト「美肌魔女賞」を受賞。以降、Team美魔女のメンバーとして各方面で活動中。大の映画好きがきっかけで6年間ロサンゼルスの映画留学を経験した豊富な知識を生かし、 "映画を観て美しくなろう!"をコンセプトに「美に効くサプリ」として映画を紹介する、映画 "ビューティ" コメンテーターとして活動をスタート。
【映画関連】
<記事>
・2013年5月~ 映画エンタメ情報『シネマカラーズ』、美に効く映画[サプリ]連載
・2014年12月~ トレンドミックスマガジン『VANITY MIX ヴァニティ・ミックス』、藤井まゆみの魔ジカルCINEMA 連載
【雑誌・広告】
2010年~ 光文社「美STORY」
2012年 小学館 「週刊ポスト」グラビア出演
2014年 ショップチャンネル 藤井まゆみプロデュース「BE GENE」
2014年~ 美サロ イメージキャラクター