2016年はベン・ウィショーの年!出演作ガイド
今週のクローズアップ
新年明けましておめでとうございます。早いものでもう2016年になりました。……そうです! 2016年といえば、映画『007』シリーズのQ役で知られるベン・ウィショーの出演作が今までになく日本公開されまくるおめでたい年! というわけで、今年観られるウィショー作品をまとめました。(文・構成:編集部 市川遥)
『007 スペクター』(公開中)
まずはすぐにでも観られるところから。『007 スペクター』では、前作『007 スカイフォール』(2012)に続いてコンピューター&テクノロジーでジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)を支えるQを演じています。ボンドがこれまでの事件の裏にいた強大な敵とついに対峙するというストーリーだけに、Qもロンドンのラボという自らのフィールドを飛び出し、苦手なはずの飛行機に乗ってオーストリアに向かうなど大活躍。ボンドとの会話中にQが猫を2匹飼っていることも明らかになりますが、そうしたシーンをベンは「観客がリアリティーを感じるのは重要だと思います。彼らは仕事をしているただの人間で、スーパーヒーローじゃないんです」と分析しています。
Q役の役づくりとしては、これまでの作品を観て(お気に入りのうちの一つは日本が舞台の『007は二度死ぬ』なのだそう)、MI6やスパイの生活についての本を読んだというベン。しかし、今回Qを演じるのは2度目とあって「彼(Q)と一緒に居るのはとても快適で、現場に行ってすぐ演じることができました」と自然と役に入り込めたと振り返り、次の作品でも続投できたらと語っています。ちなみに、ベンのおじいさんは本物のイギリスのスパイで、第二次世界大戦中ドイツ軍に潜入していたそうです。
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「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」(配信中)
ベンが主演した「リチャード2世」を含むBBCのシェイクスピア戯曲ミニシリーズ「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」も、昨年12月14日からHuluで配信が始まりました。本国イギリスでは2012年に放送されたもので、ファンにとっては待望の日本上陸です。
ベンが演じたのは、英国王きっての美男子とささやかれ、華やかな宮廷での生活と市民からの過酷な徴税により、いとこであるヘンリー・ボリングブルック(後のヘンリー4世)に王位を奪われることになるリチャード2世の栄光と転落で、彼はこの演技で英国アカデミー賞テレビ部門の主演男優賞に輝いています。2004年に舞台「ハムレット」で主演して脚光を浴びたベンだけあって、シェイクスピア作品への理解はピカイチです。
『パディントン』(1月15日公開)
児童文学「くまのパディントン」を初めて実写映画化した『パディントン』では、パディントンの声を担当しています。ペルーのジャングルの奥地からイギリス・ロンドンにやって来た赤い帽子をかぶったクマが、親切なブラウン一家に拾われて「パディントン」と名付けられて家族となっていくさま、そして小さな体で巻き起こす大冒険を描いた心温まる良作で、パディントンとブラウンさん(テレビドラマ「ダウントン・アビー」のヒュー・ボネヴィル)のバディぶりも見ものです。
パディントンの声にはもともと『キングスマン』のコリン・ファースが決まっていましたが、コリンは「本当に僕でいいと思うの?」と役に合っていないと自ら指摘。そうしてベンのところに話が来たわけですが、当初は、過去に声優の仕事で苦い経験をしたため乗り気ではなく、周囲に説得されて嫌々オーディションに参加したそう。しかし、ポール・キング監督に「彼は呼吸の仕方から話し方まで本当にパディントンのようなんです」と見初められたベンは、役が決まってからは幼い姪っ子がいることもあって「彼女が僕の声の『パディントン』を観るかと思うと本当にうれしいです。彼女は“ベンおじさん”の声だって気付くだろうから」とMail Online に語っています。日本に先んじて公開された世界各国でヒットを記録しており、続編の製作も決まっています。
『白鯨との闘い』(1月16日公開)
ノンフィクション本「復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇」を基に、作家のハーマン・メルヴィルが今は年老いた元乗組員トム・ニカーソン(ブレンダン・グリーソン)からエセックス号で本当は何が起こったのかを聞き、名著「白鯨」を執筆するまでを描いた『白鯨との闘い』。ベンが演じたのはメルヴィルその人です。ひげもじゃです。
ベンの登場シーンは、クリス・ヘムズワースふんする主人公らエセックス号の面々が海上で体験した壮絶なサバイバルを前に進めて舵を取る“ナレーション”のような役割ですが、ブレンダンとのほぼ二人芝居は見応え十分。妻にさえエセックス号の真実を話せなかったトムの心に寄り添うメルヴィルを体現する一方、作家としての自らの悲哀も感じさせるところはさすがです。
『ロブスター』(3月5日公開)
独身の人はホテルという名の矯正施設へ送られ、そこで45日以内にパートナーを見つけられなければ動物に変えられ、森へ放たれてしまう……。その独創的な世界観とブラックな笑い、そして現代の人間関係への鋭い視線が第68回カンヌ国際映画祭で好評を博し、審査員賞に輝いた『ロブスター』でベンが演じたのは、主人公デヴィッド(コリン・ファレル)とホテルで出会ってつるむことになる“足の悪い男”です。
パートナーに浮気されたり、死なれたりした場合も“独身者”と見なされてホテルに放り込まれるという容赦のないこの世界で、“足の悪い男”は“鼻血の出やすい女”の前でわざと鼻血を出すという謎すぎる努力によって彼女とカップルになろうとします。クルクルのヘアスタイルを封印し、角刈り姿で“足の悪い男”役に挑んだベンは、この摩訶不思議なラブストーリーについて「とてもオリジナティーあふれる脚本だと思いました。詩的で、さまざまな受け取り方ができて、とてもエキサイティングだと思いました」と語っています。
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『リリーのすべて』(3月18日公開)
トム・フーパー監督とエディ・レッドメインが『レ・ミゼラブル』以来となるタッグを組んだことでも話題の『リリーのすべて』は、デンマーク人画家アイナー・ヴェイナー(エディ)が妻ゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)の頼みで女性モデルの代役を務めたことをきっかけに自分の内側に潜んでいた女性リリーの存在に気付き、ゲルダに支えられながら世界初となる性別適合手術を受けるまでを描く伝記ドラマです。
ベンが演じたのは、「アイナーの従妹」という触れ込みで、初めて女性として舞踏会に出席したリリーに心を奪われるヘンリク。紳士的でありながらもリリーをグイグイ口説いてキスを迫り、何もかもが初めての彼女を戸惑わせます。このシーンのエディの戸惑いの表情の美しさは圧巻で、ベンは肉食系男子としてエディのこの感情を引き出しています。
3月まででこの大豊作ぶりですが、参政権獲得のために闘った女性たちを描いた『サフラジェット(原題) / Suffragette』やBBCのスパイドラマ「ロンドン・スパイ(原題) / London Spy」など、イギリスなどでは昨年のうちに公開・放送されたベンの出演作も! 今後も日本公開作が増えていきそうな予感です。