オシャレすぎ!お手本にしたいNYファッションがいっぱいの『キャロル』
提供:ファントム
1950年代の冬のニューヨークを舞台に、不幸な結婚生活を送ってきた上流階級のキャロル(ケイト・ブランシェット)と、写真家を目指す若きテレーズ(ルーニー・マーラ)という年齢も立場も違う二人の女性が惹かれ合うさまを描いた美しいラブストーリー『キャロル』。ビジュアルに深いこだわりを持つトッド・ヘインズ監督(『エデンより彼方に』)と3度のアカデミー賞衣装デザイン賞に輝くサンディ・パウエル(『シンデレラ』『恋におちたシェイクスピア』)の黄金コンビがタッグを組んだだけあって、同作にはオシャレなニューヨークファッションがいっぱい! 思わずまねしたくなるファッションの数々をご紹介します。
裕福でエレガントなキャロルの場合
原作は、「太陽がいっぱい」などで知られる作家パトリシア・ハイスミスの1952年に発表された同名小説です。「キャロルは裕福な女性だから、彼女の服にはお金をかけることができた」と語るパウエルがキャロルの衣装の参考にしたのは、1952年冬から1953年にかけて発行された「VOGUE」や「Harper's BAZAAR」といった高級ファッション誌。キャロルはまるでそうした雑誌から飛び出してきたような上質で洗練された着こなしをしています。
テレーズとキャロルが出会ったのはクリスマスシーズンでにぎわう高級百貨店のおもちゃ売り場で、売り子のアルバイトをしていたテレーズは、百貨店に足を踏み入れたキャロルにすぐに目を奪われてしまいます。
その時キャロルが着ていたのは、彼女のブロンドにマッチする薄いブラウンのラグジュアリーな毛皮のコート。コートの首元からちらりとのぞくドレスと手袋はトープ色(茶色がかった濃い灰色)、帽子とスカーフはネイルと口紅に合わせたコーラル色と、彼女の育ちとセンスの良さを端的に示す統一感のある装いで、テレーズが思わず魅了されてしまうのも納得です。
パウエルによると、キャロルの靴は全て1940年~50年代のフェラガモで、バッグは当時のビンテージ、ジュエリーはフレッド・レイトンやヴァン クリーフ&アーペルに借りたものなのだそう。彼女は「上品でエレガントでファッショナブル、でもやりすぎない感じにしたかった。テレーズのような女性がお手本にしたいと思うような感じにしたかったの」とキャロルのスタイルを作る上でのコンセプトを明かしています。
また、パウエルとキャロル役のケイトは、女性の体のどの部分が一番エロティックかという点で「手首」「首」「足首」と意見が一致。当時人気だったというセーラー調のネックラインのドレスをはじめ、キャロルの首、手首、足首を見せた大人のセクシーさは参考になりそうです。
写真家志望のキュートなテレーズの場合
キャロルが当時の高級ファッション誌から生まれたのとは対照的に、テレーズの衣装は当時のストリートファッション。普通の学生やアーティストなどのファッション写真を参考に製作されました。チェックのマフラーに、ポケットやフードに毛糸の刺繍が入った可愛いコート、ガーリーなカチューシャが基本のスタイルです。
「彼女は写真家だから、“若いアーティスト”だというところから始めた。自分の外見や他人からどう見られているかをあまり気にしない、普通の女の子に見せたかったの。でも意外な組み合わせを自然に着こなしたりもする感じね」とテレーズの衣装を解説したパウエル。胸元がV字に開いたワンピースの下に着る物を変えるなど、着回し力の高いワードローブとなっています。
そしてテレーズは、キャロルとの出会いを通じて美しく花開いていきます。彼女が変身を遂げたときには、そこには確かにキャロルと過ごした時間の影響が見て取れるなど、衣装でキャラクターの感情をも語るパウエルの職人技も見どころといえるでしょう。
社会的な立場から本当の自分を隠さざるを得ないキャロルと、本当に自分が求めるものにまだ気付けていないテレーズ……。二人が辿る切なくも美しい愛の旅路を衣装に注目して観るのも一興です。第88回アカデミー賞では、主演女優賞(ケイト)、助演女優賞(ルーニー)、衣装デザイン賞(パウエル)を含む6部門でノミネートを果たしており、洗練された衣装とそれをまとう女優陣の演技力は折り紙付きです。
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