樹木希林のロック語録!“勝手に”言葉の裏を感じ取れ!
提供:ポニーキャニオン
日本を代表する大女優にして、ユーモラスで歯に衣着せぬ発言でも人気の樹木希林さんは、名だたる海外映画祭に出品された主演最新作『あん』のプロモーション中も舌好調! 彼女が残した“ロック語録”の数々を紹介するともに、その裏に隠された思いを勝手に読み解いてみました。(編集部・市川遥)
【樹木希林のロック語録】あんの映画なのに「粒あんは当分食べたくないわね」
『あん』で樹木さんが演じたのは、徳江という名の朗らかな老女。どら焼き屋「どら春」の雇われ店長・千太郎(永瀬正敏さん)の前に突然現れ、アルバイトに志願するという驚きの行動に出ます。徳江が高齢であることに千太郎はためらいますが、彼女が粒あん作りの達人であることがわかり、二人は一緒に粒あん作りを始めます。
ホクホクで本当においしそうな粒あん作りの過程が見どころの一つとなっている本作ですが、樹木さんはインタビュー中「粒あんはもともと大好きだったんですけど、当分は食べたくないわね」とコメント。しかし、その真意はお菓子の学校に通うなど普段以上に役づくりに挑み、撮影中は劇中同様、まだ月が出ている超早朝から毎日粒あん作りに励むなど粒あん三昧の生活を送ったからこそ! 樹木さんがあんと向き合い続けた結果、映画を観た人はすぐにでも粒あんが食べたくなってしまう絶品のシーンが出来上がりました。
【樹木希林のロック語録】「本当の主役は永瀬さん。ですが、シニアのお客を呼び込むためにわたしが表に出ているわけです」
樹木さんのユーモアが冴えわたるこの発言は、第68回カンヌ国際映画祭での会見で飛び出しました。この映画の主演女優である樹木さんが、共に映画を作り上げた俳優・永瀬正敏に感服しているからこそ出た言葉だったのではないでしょうか! マイペースな徳江と不器用な千太郎の思わずクスリとさせられる軽妙な掛け合いは、一対一で演じた樹木さんと永瀬さんの相性の良さがあってこそ。永瀬さんも、撮影中は徳江さんが愛しくてしかたなかったと打ち明けていました。
また、公開の約半年前に記者会見が開かれた際には「樹木さんの遺作として(宣伝側が)売りたいのではないでしょうか」と河瀬監督と冗談を言い合っていたと明かした樹木さん。「死ぬ死ぬと言って(死なないから)詐欺みたいね」とカラリと笑う姿はまさにロック!
【樹木希林のロック語録】孫娘の内田伽羅が言葉に詰まっていると「もう泣いちゃいなさいそこで!」
「どら春」の常連である女子中学生・ワカナ役を務めたのは、樹木さんの孫娘である内田伽羅さん(父:本木雅弘、母:内田也哉子)です。是枝裕和監督作『奇跡』(2011)にも共に出演している二人ですが、本格共演はこれが初めて。どこか社会になじめない徳江・千太郎・ワカナという三世代の心の交流を描く本作で、伽羅さんが見せるみずみずしい演技も見どころとなっています。
2010年に『FURUSATO-宇宙からみた世界遺産-』で映画デビューを果たした彼女ですが、現在はイギリスで学業中心の生活を送っている身。それだけにカンヌでの会見では緊張のあまり言葉に詰まる場面もありましたが、そんなときに「もう泣いちゃいなさいそこで!」と鋭く指示を飛ばして伽羅さんを笑顔にした樹木さん。河瀬直美監督の創造性に触れることは貴重な経験になると伽羅さんにオーディションを受けるよう勧めたのも樹木さんだったといい、撮影中は河瀬監督から物語の展開上「あまり口を利かないように」と言われていたそうですが、厳しくも温かい目で孫娘を見守っていたようです。
【樹木希林のロック語録】「河瀬監督は仕事場に入ると豹変する」
第40回トロント国際映画祭では『朱花(はねづ)の月』(2011)以来2度目のタッグとなる河瀬監督について「こんなに華奢でこんなに女性らしくしているのに、仕事場に入ると豹変する」と語ってトロントの観客を沸かせた樹木さん。これは信念を持って映画作りに取り組む河瀬監督に対する樹木さん流の称賛で、そんな監督の作品だからこそ参加したかったと続けています。
さらに、河瀬監督についてはカンヌでも「こんな男性的にバサーッと作品を処分(編集)していくっていうか、そういう力強さにびっくりしました。参りましたね」と独特の表現で敬意を表し、フォトコール(写真撮影)の際には「ナオミー! ナオミー!」と河瀬監督が海外のカメラマンたちから圧倒的な人気だったと明かして監督をたじたじにしていました。
【番外編】河瀬監督が明かす樹木希林のロックエピソード
本作には、水を蓄えた木に朝日が差し込むことで蒸気が立ち上ってくるという印象的なシーンがあります。このシーンは、何と監督なしで樹木さんが撮影のアイデアを出して撮ったものなのだそう。河瀬監督は「『木がね、息してるの』と、モニターチェックしているわたしに徳江さんが声をかけ、これは滅多に見れるもんじゃないからと監督なしで撮影をされてました。それがこの作品の最後の徳江さんの姿になろうとは」と驚きをもって語っています。監督が「撮影中、わたしの言葉を瞬時に理解され、何もいわず、形にして表現してくれる姿は流石でした」と樹木さんとのコラボレーションを振り返る通り、ロックな樹木さんは日本のみならず世界から愛される河瀬作品の中で一層の輝きを放っています。
映画『あん』ブルーレイ&DVDはポニーキャニオンより発売中
映画公式サイト ブルーレイ&DVDサイト
(c)2015映画「あん」製作委員会/COMME DES CINEMAS/TWENTY TWENTY VISION/MAM/ZDF-ARTE