『暗殺教室~卒業編~』山田涼介インタビュー
「週刊少年ジャンプ」で連載中の松井優征による人気コミックの劇場版第2弾『暗殺教室~卒業編~』が公開される。おなじみ殺せんせーと生徒たちの絆がさらに深く描かれる本作に、主演の山田涼介も確かな手応えを得ている様子。前作『映画 暗殺教室』からの変わらぬ思い、そして続編ならではの見どころ、さらには映画というメディアに寄せる気持ちなどを率直に語った。
Q:まず、今回の続編が決まったときはどう思いましたか?
(前作の)公開後に初めて聞いたんです。ファンの皆さんと同じタイミングで知ることができて、うれしかったですね。
Q:前作から半年から1年後を描く物語ですが、そのモチベーションは?
またあのメンバーに会えるし、あの場所に帰れるんだと思ったら、うれしかった。それがモチベーションに繋がったと思います。実は前作を撮影していたときから、羽住(英一郎)監督や出演者とそういう話はしていたんです。「続編もやれたらいいね」「いや、やるんじゃないの?」って。なので、どこかでまた会えるような気がしていました。
Q:では、前作を撮っていたときから「これで終わり」とは思っていなかった?
そうですね。でも、それはたくさんの方に観てもらわないと叶わぬ夢だったんで。なので、観てくださった方には本当に感謝しています。
Q:前作はどうして受け入れられたと思いますか。
「なぜか?」と考えたら、理由はわからないけど、僕たちは原作に真摯(しんし)に向き合っていたし、その愛が伝わっていたのかな……と思っています。生徒の中には台詞のない子もいたけど、そういう子たちも真面目に原作をたくさん読んで、自分の役はどういう特徴なのか、ちゃんと考えながらやっていました。そういう一人一人の思いが映像に出て、反響を呼んだのかなと思います。
Q:山田さんは原作のどういうところを大切に演じたのですか?
僕は体がわりとゴツいので、どれだけ華奢に見せるか、潮田渚っぽく見せられるか。自分が(この役に)選ばれたことの意味も考えながら、渚を徹底研究して挑んだつもりです。
Q:華奢に見せるって大変ですか。
無理ですよ(笑)。骨格を変えるってことですからね。仕草とかでなんとか見せました(笑)。
Q:2作目では、そういう見せ方は慣れていた?
でもこれが厄介なことに、今回は男っぽいシーンがあるので。そことの兼ね合いで、渚をうまい具合に見せるのが難しかったですね。
Q:では、今回はハードルが上がっている?
そうですね。観てくださるお客様の期待も、前回以上にあがっていると思いますし。僕自身はそのハードルを越えていると思うんです。
Q:山田さんがリスペクトしている菅田将暉さんとの再共演はいかがでしたか?
楽しかったですよ。前作よりも将暉と演技で向き合うところが多かったので、やりがいありましたし、それを二人とも望んでいたので。ぜいたくを言うと、もっとぶつかり合いたかったくらい。
Q:お二人の対決シーンはすごい迫力でした。
映画の中でCGなしのアクションシーンは、唯一じゃないかな。体がぶつかり合うアクションシーンは、この作品では貴重ですからね。CG入りのアクションシーンと比べて観るのも、この作品の楽しみ方の一つだと思います。ただ、撮影は大変でしたね。砂ぼこりにまみれながら撮っていたので、撮影後はなかなか耳から砂が取れなくて。シャワーで落としたと思ったら、3日後ぐらいにまた出てきました。「え? まだいたの?」って(笑)。
Q:今回の物語で感じたことは?
人間ドラマになっていること。「人対人」なんだなと。1作目では明らかにされていなかった殺せんせーの過去もわかりますし。人と人とのぶつかり合いが繰り広げられて、そのなかで生まれている愛だったり、友情だったり、そういう人間臭い部分がこの『暗殺教室~卒業編~』では観られると思います。
Q:映画ならではの醍醐味というものを、より感じるようになりましたか。
この作品が羽住組だったというのは大きいと思います。やはりスタッフの皆さん、プロ中のプロで。部署の垣根を越えて、言葉なしでもみんなが動く。衣装さんが照明さんの手伝いをしたり、人が足りなかったら、どこかの部署の人が補う。さすがに、照明部さんがメイクさんになることはないけど(笑)。僕はほかのチームのことをあまり知らないのでわからないんですけど、撮影の速さだったら、日本一なんじゃないのかなと思うくらい速いですね。アクションシーンとはいえ、60カットを半日で撮っちゃう。あれはビックリしました。
Q:演じる上で、映画とドラマでは違いはありますか?
ドラマも映画も、自分が演技するスタンスはまったく変わらないですし、どちらも全力でやるけれども、わざわざ映画館に観に来てもらうとなると「気持ちが変わる」というか、何か違うと思うんですよね。それに、映画館で観ると自分だけの空間になりますよね。あの空間に包まれている時間というのは、そこでしか味わえないものなので、観ている方を包み込みたいなと。スクリーンだからこそ起きる「奇跡」をたくさんの方に届けたいなと思います。
Q:映画は共同作業ですね。山田さんは俳優部の一人として、どんなふうに撮影現場に立ちたいと思いますか。
なるべく溶け込みたいです。スタッフと共演者ではなく、一つのチームの一員としていたいなと思っています。自分が主役だからスタッフさんが気を遣うとか、本当にやめてほしいし。みんな僕より年上ですし、ベテランの方ばかりですから。なので気を遣わないでほしいし、適当に扱ってくれたほうがいいです。そっちのほうが自然体でいられるし、山田涼介という人間を見てもらえるかなと。俳優としての僕を見てもらうんじゃなくて、人としての僕を見てもらった上で、現場に立ったらお互いスイッチを入れる。その瞬間の一致。そこを求めているし、だからこそ自然でいたいし、溶け込みたいなと。
Q:撮影現場の一員であると同時に、人間の一人だということですね。
そうですね。同じ人間じゃん! 気にしないでいこうよって。そのほうがありがたいです。
Q:「適当に扱って」っていいですね(笑)。
適当でいいんですよ。だからといって現場に先輩がいたら、僕は絶対適当には扱えないですけどね(笑)。それは無理です。あくまでも「僕に対しては適当に」という話です!
「体がゴツい」と本人は言うが、それ以上に精神が男っぽい人である。フレンドリーに、しかし端的に、どんな質問にも答えていく様から感じられる骨太さ。そんな山田涼介だからこそ、『暗殺教室』2作の主人公、潮田渚はしっかり構築されたキャラクターなのだということをあらためて知る。とくに、「俳優として」よりも、ものづくりに関わる「一人の人間として」の意識が高い点は、同性から見ても惚れ惚れするカッコよさだ。(取材・文:相田冬二)
映画『暗殺教室~卒業編~』は3月25日より全国公開
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