第10回:藤井まゆみのとまとさんの言うとおり!? - 2016年3月公開作品編
とまとさんの言うとおり!?
アメリカの大手映画レビューサイト Rotten Tomatoes の批評家満足度を基に、3月公開作品をランキングでご紹介。さらに Rotten Tomatoes の批評家たちが選んだベスト5に対して、ニコニコ生放送「元祖シネマざんまい」にも出演している映画コメンテーターでモデルの藤井まゆみが、独自の視点で切り込みます!
第1位:『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』 批評家満足度:98%
第2位:『父を探して』 批評家満足度:95%
第3位:『人生は小説よりも奇なり』 批評家満足度:94%
第4位:『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 批評家満足度:88%
第5位:『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』 批評家満足度:87%
ニューヨークのカルチャーシーンに多大な影響を与え、著名人や有名デザイナーからもリスペクトされる94歳のファッションアイコン、アイリス・アプフェルに迫るドキュメンタリー。大きな丸メガネに大きなアクセサリーがトレードマークのアイリスは、1950年代からインテリアデザイナーとして活躍し成功を収め、広告モデルとしても活躍するなどメディアに引っ張りだこに。夫カールとの関係を大切にする彼女のモットーは、「人生を楽しむこと」。映画に登場するアイリスの名言から多くを学び、彼女のような歳の重ね方をしたいと思わせてくれるバイブル的映画。昨年公開されたファッションに情熱を注ぐ60代から90代の女性たちを追った『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』に続き、高齢になっても輝き続ける女性パワーが止まらない。
世界の映画賞で多数の受賞を記録し、本年度のアカデミー賞長編アニメ映画賞に南米作品初のノミネーションを果たしたブラジルのアニメーション。出稼ぎに行ってしまった父親を追いかけて旅に出る、少年の成長が描かれる。新興国であるブラジルという国をダークに映したストーリーだが、映像は色彩豊かでポップな明るい印象。クレヨン、色鉛筆、切り絵、油絵具などの画材を使い分けて描かれる世界には、セリフらしいセリフはなく字幕もない。繊細で味わい深いビジュアルに圧倒される。独特な世界観で勝負しており、ハッピー映画なのかアンハッピー映画なのかということも含めて、解釈は観客に委ねられている。
39年連れ添ったベンとジョージのゲイカップルは祝福を受けて結婚した。しかしこれがきっかけでジョージは教師の職をクビになり、順風満帆だった二人の生活は周りを巻き込みながら崩れていってしまう。ベンとジョージを演じるベテラン俳優、ジョン・リスゴーとアルフレッド・モリナの演技だけでも大満足の映画だが、脇役としてオスカー女優のマリサ・トメイも登場。「愛と人生」をテーマにしたヒューマンコメディーを、素晴らしいキャスティングで仕上げている。現代のニューヨーク・マンハッタンを映すような慌ただしさはなく、ヨーロッパ映画のような柔らかい色彩とピアノの音色で包み込んだ、美しく切ないラブストーリーに涙が出る。
2005年、アメリカ住宅バブルの真っただ中、世界的な金融危機“リーマンショック”の訪れを予測した、金融トレーダーと銀行家らによる「勝ち組」の行動にフォーカスし、コメディータッチで痛快に描いたドラマ作品。ベストセラー作家マイケル・ルイスの著書を基に、お笑い番組「サタデー・ナイト・ライブ」の脚本家として頭角を現し、マーベル映画『アントマン』の脚本も書いたアダム・マッケイが監督と脚本を手掛ける。難解な言葉が並ぶストーリーを笑いに転換し、観客にわかりやすく解説する手法は、コメディークリエイターのマッケイらしい高い創造力と独特なセンスのたまものだ。クリスチャン・ベイル、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、そしてブラッド・ピットの出演配分も絶妙で、コメディー俳優としてのカレルの良さが引き立っている。
ミッチ・カリンの小説をベースに、探偵業から引退し隠居生活を送る93歳のシャーロック・ホームズが未解決事件に挑む娯楽作品。ホームズの視点から過去をフラッシュバックさせ、謎解きのヒントを徐々に開示。後半はスピーディーな展開で謎が明かされていく演出が効いている。名優イアン・マッケランが30年前の現役時代のホームズと、年老いた93歳のホームズをそれぞれ演じ分け、話し方さえ歳相応に変えてみせるカメレオンのような演技が最大の見どころ。演技派女優ローラ・リニーふんするホームズの家政婦マンロー夫人とその息子ロジャー、そしてホームズとの3人の関係の変化も同時進行し、ホームズの元相棒ワトスンのようにホームズに付き添うロジャーの“歳の差コンビ”に心温まる。違った角度からシャーロック・ホームズを見つめた一作だ。
第1位:『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』
第2位:『人生は小説よりも奇なり』
第3位:『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
第4位:『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』
第5位:『父を探して』
ニューヨークを舞台にした作品が多数並んだ3月。今回は、この活気あふれる街で描かれる人生の素晴らしさを浮き彫りにした映画を上位に選んだ。『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』からはアイリスの女子力に元気をもらい、『人生は小説よりも奇なり』では強い愛に感銘を受けた。一方、ウォール街を陥れたリーマンショックの裏側を描く『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、不況の反対側で稼ぐ人間たちを見るシニカルな面白さがあった。また主人公が高齢な作品も多く、『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』の余生を送るリアルなシャーロック・ホームズ像に愛着を感じた。また今回の基準では最後になった『父を探して』だが、5本の中でも卓越した芸術性があったように思われる。
◆ 藤井まゆみ Mayumi Fujii
Twitter:@mayumi_fujii
オフィシャルブログ:『藤井まゆみのシネマジャーナル』2010年に第一回 国民的"美魔女"コンテスト「美肌魔女賞」を受賞。以降、Team美魔女のメンバーとして各方面で活動中。大の映画好きがきっかけで6年間ロサンゼルスの映画留学を経験した豊富な知識を生かし、 "映画を観て美しくなろう!"をコンセプトに「美に効くサプリ」として映画を紹介する、映画 "ビューティ" コメンテーターとして活動をスタート。
【映画関連】
<記事>
・2013年5月~ 映画エンタメ情報『シネマカラーズ』、美に効く映画[サプリ]連載
・2014年12月~ トレンドミックスマガジン『VANITY MIX ヴァニティ・ミックス』、藤井まゆみの魔ジカルCINEMA 連載