『ちはやふる -上の句-』広瀬すず&野村周平&真剣佑 単独インタビュー
配役が逆?の意見は気にしない
取材・文:イソガイマサト 写真:高野広美
累計発行部数1,600万部を突破し、いまも連載が続いている人気コミック「ちはやふる」を、『上の句』『下の句』の2部作で実写映画化。“競技かるた=百人一首”に情熱を傾ける高校生たちの友情や恋、青春を描いた本作で、ヒロインの千早を演じた広瀬すず、千早の幼なじみの太一と新にふんした野村周平と真剣佑は、本作の撮影を通して実際にすごく仲が良くなったよう。原作コミックの人物を演じる際の役との向き合い方、お芝居をする喜びを伝える三人の言葉の端々から、それが感じられるに違いない。
人気コミックを実写化する難しさ
Q:「ちはやふる」のようなコミックのキャラクターを演じるときに気を付けていることや難しさを教えてください。
広瀬すず(以下、広瀬):原作ファンの方の頭の中にはすでにできあがった千早がいるので、最初はそこに生身の人間として挑むのは怖かったです(笑)。でもマンガを読んで、アニメ版を観て、台本を読むと、マンガとアニメ版と映画で感じる雰囲気が全然違うなと思って。ただ千早が自由で、うそをつかず、真っ直ぐなところは共通していたので、そこだけを大事にのびのびと生きようと思いました。
真剣佑:原作に答えはあるんですけど、マンガと映画は違うものなので、そこにはあまり引きずられないように、監督ともお話してあえて読まないようにしていました。映画の世界の中で、自分の綿谷新を作っていきましたね。
野村周平(以下、野村):僕は自分が好きな原作が実写で映画化されたときは、原作をちょっとはリスペクトしてほしいなと思うので、原作に寄せつつ、自分のオリジナリティーを加えていくやり方をしました。だから、外見は太一にできるだけ似せました。ただ、彼の性格は誰にもわかんないので、僕なりの太一を演じました。
このキャスティングで正解だった
Q:キャストが発表される前にはいろいろなうわさが飛び交いましたし、発表後も野村さんと真剣佑さんの配役は逆なんじゃない? といった意見が出たりしました。
野村:言われましたね。失礼なもんですよ。でも、全然気にしていません。
真剣佑:僕もまったく気にならないです。それに僕には太一はやれない。あくまでも僕は新で、野村くんが太一だと思います。
広瀬:映画を観てもらえれば、みんな、絶対に逆じゃないでしょ! って思いますよ。
野村:僕も絶対にこれで良かったと思う。
広瀬:でもわたしは、千早役が決まったとき、原作の千早と真逆の性格だから、自分が最初に違うなって思った(笑)。
野村:そんなことないよ。千早は、日本ですずしかやれないと思う。
広瀬:ありがとう!
野村:いや、そうでもないか(笑)。
広瀬:ちょっと(笑)!
真剣佑:いやいや、そうだと思います。
広瀬:うれしい!
野村:でも、千早は本当に良かったよ。
真剣佑:うん。本当によかった。
野村:すずで良かったなって思うし、ほかの人だったら成り立ってないよ。
広瀬:(真剣佑に)聞いた? いまの。
真剣佑:いや、その通りだと思う。
Q:皆さんのオススメのシーンは?
野村:(広瀬に)あの言葉を言ってやれ!
真剣佑:えっ?
広瀬:あの言葉?
野村:「全部です!」じゃないの? さっきあんなに「全部です」って力説していたじゃん、二人とも(笑)!
広瀬:でも、わたしは太一が(競技かるたに)青春を全部懸けたところが好き。
真剣佑:あそこは僕、ウルッときました。
広瀬:ウルッときたよね~。
真剣佑:最高にカッコいいです。
野村:ありがとう(笑)。だけど、すずも終始かわいかったよね~。
真剣佑:いちいちね(笑)。
広瀬:マッケンくんは『上の句』で“肉まんくん”とかるたをやるシーンがめっちゃカッコいい。プロだ! って思った。
なぜ、お芝居をするのか?
Q:ところで、『ちはやふる』と出会ったこの1年の間に生活や周りの環境が変わったなと思うことはありますか?
真剣佑:僕は日本で俳優を始めてから半年で『ちはやふる』に出たんです。なので、以前と変わり過ぎているし、『ちはやふる』があったからいまの僕がいるんですよね。こんなに素晴らしい仲間と出会えたのもこの作品だし、お芝居の勉強にもなりました。ここからスタートだし、ホームですね。
野村:僕もこの現場がすごく楽しかったので、これ以降、笑顔が多くなりました。
広瀬:わかる! すっごく楽しかった。
野村:ずっとムードメーカーみたいな位置にいるから、それも面白くて。コミュニケーション能力も上がったような気がします。
広瀬:わたしもそれまでは基本、一人で台本を読んでいて、共演者の皆さんが談笑されているときもその場を抜けて台本を読みに行っちゃうことが多かったんです。でも、『ちはやふる』をやってからはキャストの人たちとすごく話すようになって。わたしもコミュニケーション能力が上がりました。それに『ちはやふる』のみんなとはいまも連絡を取り合っているし、安心感はかなりあります。
Q:最後に『下の句』のテーマ「なぜ、かるたをやるのか?」にちなんだ質問です。皆さんはなぜお芝居をするのですか?
真剣佑:僕はみんなに夢を与えるためです。
野村・広瀬:カッケー!
真剣佑:僕自身、ある日本映画を観たときにその作品に出ていた俳優さんから夢を頂いて、俳優になりたいと思ったから。自分も夢を与えられる人になりたいんです。
Q:それはどの映画の誰を見て?
真剣佑:それは誰にも言ってないんですよ。
野村:言ってよ!
真剣佑:すずちゃんは知ってるけど……。
広瀬:うん、知ってるかも。
真剣佑:ヤバい! すずちゃんしか知らない。
広瀬:ウソ~! (野村を見て)ゴメンよ(笑)。
真剣佑:僕のマネージャーさんとすずちゃんしか知らない。アメリカにいるときにその日本の映画を観てそう思ったんだけど、その方と共演させていただくことができたら、そのときに公表したいと思います。
広瀬:わたしは正直、最初はイヤイヤこの世界に入ったんです。ずっとバスケをやっていたので、そっちの方が自分にとっては大きかったんだけど、気付いたら事務所に入っていて。だから、そのときの自分を見ると、楽しくないんだろうなという顔をしているし、いろんなことが好きになれなかったんです。でも、生活の全てがお芝居になったいまはそれがすごく楽しくて。「学校のカイダン」というドラマをやったときにお仕事の存在が近くなりました。もっと自分をレベルアップさせて、みんなにいろいろなものが届けられたらいいなと思っています。
野村:僕はお芝居は好きじゃないんですよ。
真剣佑:みんな、好きになって!
野村:ただ、芝居は別に好きじゃないけど、映像に出るのは好きなんですよ。オシャレな撮り方やオシャレな光、その時代のリアルさの中で生きている人間が好きだから、映像作品にはもっと出たいですね。
お互いの言葉に耳を傾け、時に真剣に、時に突っ込みを入れながら、長期間にわたる撮影を振り返った三人。そこには確かな友情がしっかり築かれているのが感じられて、ほほ笑ましいような、うらやましいような気分に。そして、『ちはやふる』は間違いなく、役者としてこれからも生きていく彼らにとっていつまでも忘れることのできない大切な作品になったのは言うまでもない。日本映画の未来を担う彼らの、いまの“輝き”が鮮やかに焼き付けられている。
ヘアメイク:古久保英人、木内真奈美(オティエ)
映画『ちはやふる -上の句-』は3月19日、『ちはやふる -下の句-』は4月29日より公開