ウーマンラッシュアワーの映画たて・よこ・ななめ見!第36回:『家族はつらいよ』
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、村本の敬愛する山田洋次監督が、笑いたっぷりに家族の尊さを描いた『家族はつらいよ』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
村本、山田監督の家族像に共感
中川:僕ね、山田洋次監督の作品を、ほぼ観たことがなかったのよ。『男はつらいよ』とかも。ちょっと地味な印象があって……。でも、実際に観てみたらめちゃくちゃ笑った。食わず嫌いやったわ!
村本:珍しく手をたたいて笑ってたもんな! おまえみたいにスプラッター映画で人の首が飛ぶシーンでしか笑わないような人間にも、心の優しい一面があるということを見せてくれたわけや。
中川:ファンのおまえが「めちゃくちゃ面白い」って言っている意味がわかった気がする。別の作品も観たくなったし。
村本:俺はこの映画と同じキャストが出ている『東京家族』もめっちゃ好きやからな。おまえが面白いと思ったんは、この映画の軸に「家族」というものがあるからやと思う。山田監督の映画はどの作品にも、俺の家族がいる気がすんのよ。この映画でいえば、橋爪功さんの演じたお父さん(平田周造)がうちのおやじソックリ! ああいうややこしいおっさんでな。俺も将来ああなりそうな気がするからめっちゃ共感できた。
中川版『家族はつらいよ』って?
中川:笑い部分もよかったな~。みんなで家族会議しててケンカが始まるあたりとか、見事な流れやったわ。
村本:われわれは二人とも両親が離婚してるけど、映画みたいな家族会議なんてなかったよな。
中川:うん。親が大声でケンカしてても、「もう勘弁してくれよ」と思いながら見て見ぬふりしていた記憶があるなぁ……。
村本:やから、蒼井優ちゃんの演じている妻夫木くん(平田庄太)の嫁(間宮憲子)が、あの家族を見て「うらやましいです」って言ってた気持ちはすごくわかる!
中川:ケンカしてても家族全員がつながってる感じがするよな。
村本:いつかこの映画が地上波で流れて、居間で家族一緒になって笑いながら観ているとか……めっちゃ良くない?
中川:ええな! そんな感じで観たいわ~。僕はこの映画を観ていたら大家族がほしくなった。もともと両親との同居も賛成派やし、今は嫁と子供との3人暮らしやけど、自分がおじいさんになったときに、子供の家族とかも一緒に暮らせたら楽しそうやなって。
村本:……いや、おまえは自分とこをええ感じの家族みたいに言っとるけどな、この前、自分の嫁をほかの男に抱かそうとしとったような家庭やんか!
中川:それとこれとは話が別やん!
村本:何やねん、ほかの男に抱かさな興奮せえへんて。嫁は嫁でクラブ行って夜中まで帰ってこんかったとか。おまえらは山田監督に、『性癖が変わって過ぎてつらいよ』って映画を作ってもらえ!
誰の心にも山田洋次はいる!
村本:そういえば、演歌歌手の徳永ゆうきさんが出てたでしょ? うなぎ屋の役で。彼も山田洋次作品にはまったか~と思ってね、うらやましいわ~。俺の仲がいい芸人で、ボルトボルズってコンビおるやん。松竹芸能の。
中川:おるな。
村本:そのコンビの弓川信男ってやつが、山田監督が京都の大学生と一緒に撮った『京都太秦物語』に出とるのよ。しかも、打ち上げで山田監督と飲ませてもらったという話を聞いて、それもうらやましいと思って。
中川:自分かて、去年映画デビューしたやん。出られるんちゃう?
村本:俺には……もう無理やね。
中川:弱気やな!
村本:ああいう、声を張らない日常会話の感じはね……。あと、俺みたいな髪型のやつは多分、山田作品では一番嫌われると思うで。
中川:髪型って何……?
村本:こういう、ちょっと今を意識しているような髪型ってことや! 山田作品に出てくる人は、もう全員独自の世界を持った、今に流されない人ばっかりやからキツいやろうなと。それに……正直怖いんや! 演技するのは。
これだけは言いたい!ななめ見ポイント
村本:やっぱり山田監督の映画は何気ない日常を見せてくれるのがええわ~。踏切の音がカンカンカンって響く晩飯時みたいな。料理でいえば、里芋の煮っころがしに大根のみそ汁と白米とか、おいしい田舎の家庭料理を食べたような気分になって、ずっと見入ってしまう。
中川:どこにでもある風景なんやけど、どこか懐かしいような気がするというか。
村本:そうそう! 庄太が住んでる部屋なんかも実家感丸出しやん。それが懐かしいのよ~。ただ、これは愛があって言うんやけど、若い子はなかなか観いひんかと……。だって山田監督の映画が好きっていう女の子に出会ったことないもん!
中川:でも、それは僕と同じで観てないだけなんやろうな。
村本:映画行こうってなると『アベンジャーズ』とか、『スパイダーマン』を観ようって言ってくる。ハリウッドの恋愛映画とかね。
中川:それはでも、そうなるやろ。
村本:やから俺は、この映画が好きな女の子は、すごい素朴な心を持っていて、すごくいいおばあちゃんになる娘だと思うのよ! やから、好きな女の子を連れていって、試してみるのもいいかもな。というわけでカップルにもおすすめの一本や!
中川:僕も観てみたら、こんなにいいもんなんやと思ったからね。今までで一番声を出して笑ったかもしれん。僕らがこんなにシンクロするなんて、この連載で初めてちゃう?
村本:いやおまえ、この連載だと毎回「今までで一番」みたいに言うとるで! うさんくさいわ。言っときゃええみたいな。
中川:いや、今回はほんまやて……。
村本:おまえの「今までで一番」シリーズは信用できんわ! そういうこと言うやつほど、ほんまテキトーに会話しとるからな。
中川:いやいや……そう! 毎回、超えてきてんねんて!
今月の激オシ映画はコレ!
『男はつらいよ』シリーズや『たそがれ清兵衛』などの名匠・山田洋次監督によるコメディードラマ。結婚50年を迎えた夫婦に突如として訪れた離婚の危機と、それを機にため込んできた不満が噴き上げる家族たちの姿を描く。ベテラン橋爪功と吉行和子が騒動を引き起こす夫婦にふんし、その脇を西村雅彦、夏川結衣、妻夫木聡、蒼井優といった実力派が固めている。彼らが繰り出す濃密なストーリー展開に加え、笑いをちりばめながら家族の尊さを表現する山田監督の手腕も見もの。
(C) 2016「家族はつらいよ」製作委員会
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。