『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』R・エメリッヒ監督&J・ゴールドブラム 単独インタビュー
20年ぶりの続編は、侵略者をもっとリアルに描いた
取材・文:吉川優子 写真:金井尭子
地球に攻めてきた侵略者と人類の激突をかつてない規模で描き、映画史に残るメガヒットを記録したローランド・エメリッヒ監督の『インデペンデンス・デイ』。彼らを撃退して生き残った人類が20年後、勢力を増して帰ってきた侵略者と戦うさまを描いた新作『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が公開される。再び監督を務めたエメリッヒと、前作で侵略者の弱点を見抜いた技師デイビッド・レヴィンソンを再び演じたジェフ・ゴールドブラムが、今作にかける思いや、撮影秘話を語った。
監督にとって自分の作品は子供
Q:続編はやりたくないと以前おっしゃっていましたが、なぜ20年ぶりに新作をやることにしたんですか?
ローランド・エメリッヒ監督(以下、監督):監督にとって、自分の作品は子供みたいなものだから、自分が作った作品の続きを描く義務のようなものを感じたんだ。前作が成功を収めたから、続編の話が来ることは予感していたしね。スタジオは、僕が(製作の)ディーン(・デヴリン)と前作を作ったことに敬意を払ってくれていて、「あなたが続編をやることに前向きになっていると噂で聞いたよ」と言われたから、オファーを受けたんだ。それにこれは普通の続編じゃない。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのように、ストーリーが続いているんだ。ジェフやビル・プルマンとまた仕事が出来るだけでもやる価値があったよ(笑)。
Q:20年を経たことで、前作にはなくて、今作に反映されていることはありますか?
監督:現代の世界は複雑になったと思う。だから今作には、前作にはなかった陰謀とかサスペンスといった要素が盛り込まれている。今作は前作に比べて映像のトーンを暗めにしている。そして、もし僕らが争いなどをしないで、一致団結すればどういうことを達成出来るかということを世界に見せようとしているところがある。20年間に、僕らがどれほど進歩したかということをね。古い世代から、新しい世代へとバトンタッチするということでもあるんだ。
Q:特撮技術が飛躍的に進化したことで、可能になったことなどはありますか?
監督:侵略者をもっとリアルに、たくさん見せることが出来たのは楽しかったよ。それに前作を撮影した時には、大体の場合、まだ実物のモデルを使った撮影しかできなかった。すでにデジタル合成技術はあったけど、とても限られたものだった。だから6、7年前に今作を制作しようとした時は、すごく興奮したよ。「ついに、いつも頭で考えていたすべてのイメージを、もっと壮大なやり方で出来るぞ」ってね。
20年間とっても忙しかったデイビッド
Q:再びデイビッド・レヴィンソンを演じるのはいかがでしたか?
ジェフ・ゴールドブラム(以下ジェフ):ローランドと仕事をするのは大好きだし、この役をまた演じられて、とてもうれしかったよ。今作のストーリーもとても気に入った。セーラ・ウォード演じるアメリカ初の女性大統領が登場するというのは、いいアイディアだったし、主人公ジェイクにふんするリアム・ヘムズワースも素晴らしい役者で、とても優しいイイやつだった。それに、僕は(共演の)シャルロット・ゲンズブールの大ファンでね。彼女が出演したラース・フォン・トリアーの映画『アンチクライスト』をまた見直したよ。
Q:リアムとの撮影で何か面白い出来事はありませんでしたか?
ジェフ:現場で僕らはよく大笑いしていたよ。劇中で「ヘイ、パンツにおしっこをもらしたのかい?」「いやあ、僕もおしっこしたよ」っていうやり取りがあるんだけど、全部アドリブだったんだ。それと映画のタイトルや役者の名前を当てるゲームをしたな。他にも、僕が「セールスマンの死」の台本を持って来て、リアムたちと一緒に通しで台本読みをしたりもしたよ。
Q:この20年間でデイビッドにはどんな変化が訪れているのでしょう?
ジェフ:前作ではケーブルテレビの修理技師として働いていたのが、今は地球防衛軍の部長という重職についている。同じ人間なんだけど、彼の人生はまったく違うものになっているんだよ。前作の戦いで、約30億人もの人々が亡くなったんだ。彼は世界を再建することで、この20年間とても忙しかったんだよ。
インデペンデンス・デイに生まれる
Q:最近、父親になられたということですが、デイビッドを演じる上で影響を受けましたか?
ジェフ:僕の息子のチャーリーはなんと7月4日に生まれたんだ。今作で、地球全体を守る責任を持つというのは、ある意味子育てみたいなものだよ。デイビッドは、最悪のシナリオを想像し、みんなを守らないといけない。彼のように息子についても同じことをしないといけなかったんだ。この数か月、家のすべてのものを赤ちゃんにとって安全になるようにした。それに、父親役のジャド・ハーシュは本当に素晴らしい役者で、彼を愛しているから、彼が父親だと想像するのは楽しかったよ。
Q:今作では、「他の人のために自分を捧げる」というテーマが描かれていると感じました。
監督:脚本を書いている時に、その点についてはよく議論したよ。古い世代は、常に子供たちに対して責任があると思う。安全な世界を彼らに残すというね。この映画では、アメリカの大統領だった男が、娘のため、または公益のために、自分を犠牲にする姿を描いているんだ。僕はそういった行動を取れる人々に畏敬の念を抱いている。そんな人たちこそ、本当のヒーローだと思うよ。
いつものエメリッヒの作品らしく、さまざまな人種のキャストが揃い、政治的風刺の要素もある今作。巨大化した侵略者や白い球体など、さまざまな謎も用意されており、エメリッヒ作品ならではの驚異的スペクタクルを楽しめる超大作に仕上がっている。作品の凄まじさとは対照的に、監督は相変わらず温厚で優しそう。また、息子チャーリーのとびきりかわいい写真をスマートフォンで何度も見せてくれたジェフが微笑ましかった。
映画『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は7月9日よりTOHOシネマズスカラ座ほか全国公開