『秘密 THE TOP SECRET』岡田将生 単独インタビュー
見るのはOK!見られるのはダメ!
取材・文:高山亜紀 写真:杉映貴子
迷宮入りした事件の真犯人を脳内捜査で暴きだす『秘密 THE TOP SECRET』。『るろうに剣心』などの大友啓史監督最新作は生田斗真主演で描かれる、衝撃のミステリーエンターテインメント。生田ふんする天才的頭脳を持つ薪の下に配属され、時に正義を貫くために熱くなる、まっすぐすぎる新人捜査官・青木を演じたのは岡田将生。先輩・生田との共演を楽しみにしていたという彼が、気合い十分で臨んだ初めての大友組。その独特の空気感を振り返る。
120%を要求される、究極の大友組の撮影現場
Q:2回、3回と観れば観るほど理解が深まる作品ですが、最初に台本を読んですぐに理解できましたか。
ちゃんとした理解というのは、なかなかできなかったのですが、台本から熱量をものすごく感じました。大友監督のいろんな作品を観せていただいてきて、今回はアクションがほぼないと聞いていたので、「いったい、これを監督が手掛けたら、どういう映像になるんだろう」と最初の頃は読みながら想像を巡らせていました。
Q:青木は頭脳明晰でありながら、正義感が強く、突っ走るところもあるキャラクター。これまでの岡田さんのイメージとは違いますね。
家族を殺されて、犯人を見つけるために(死者の脳をスキャンし、生前の記憶を映像化する技術を捜査に用いる)第九チームに入るのですが、どんな目に遭っても、ずっと一人で生きていかなければならないという背景があり、精神的にもつらい役柄でした。撮影に入る3、4か月前から、監督と会って、話をしていて、その頃から僕自身に一回り大きくなってほしいということをずっと言われ続けていました。なので、撮影が終わった時は「こんなにうれしいことはない」というくらい、「やっと終わった!」と思いました。
Q:セットも衣装も作り込まれており、その世界観に驚きました。
大友組は「最高のセットを作り、最高の芝居場を提供する。その代わり、役者側も120%で来い」という現場なので、毎回、本気でやっていました。衣装も素敵だったし、セットも入っただけで自然とスイッチが入るというか、実にどんよりしているんです(苦笑)。カットがかかると、みんなすぐ外に出て、ため息が出るくらい緊張感がありました。なかなかない現場でしたね。
Q:120%を出し続けるのは大変ですよね。
同じシーンを1日かけて撮るスタイルなのですが、基本的に芝居の質が落ちることは許されないんです。テンションもそう。やればやるだけ、よくなっていかなければならない。それまでの芝居を維持しながら、だんだんと向上していかなければいけない。気力と体力が必要でした。
なんでも許される現場で生まれた禁断の超接近シーン!?
Q:医師役のリリー・フランキーさんはボクシングするとは聞いていなかったそうですが、岡田さんは突然聞いて驚いた演出などはありましたか。
監督とは「こういう風にやれたらいい」「セリフはこう言った方がいい」など、すべてに関して話をしてきたので、僕の場合はあまり驚くようなことはなかったですね。もしかしたらあったのかもしれませんが、本当に毎日、新鮮な感覚で現場に行って、それを当たり前と受け止めていたので、あんまり動じなかったのかもしれません(笑)。熱い現場ですよ。話を聞いていたから3か月やり遂げられたようなものの、大友組は入った人にしかわからないものがあります。
Q:柔道シーンは撮影前から準備していたのですか。
撮影に入る前から週3、4回は練習していました。柔道は精神的に強くなれて、とてもいいですね。気合いも入るし、やって本当によかった。青木は柔道をすることで、なんとか精神を保っている。柔道がないと吐き出す場所がないので、監督もあのシーンは大事にしていました。撮影中も撮影が終わると、柔道の稽古に行っていました。先生方がとても素敵で、受け身など、一から教えていただき、僕自身もいい時間を過ごせました。
Q:大事なシーンといえば、青木が薪に抗議する場面では、二人の顔が数センチまで近づくので、ドキドキしました。あれはどんな演出だったんですか。
大友さんは「こういう風にやってくれ」とは言わないんです。現場に入ったら、「とりあえず1回、やってみて」という感じ。言われてみると、確かになんであんなに近づいちゃったんだろう。何の意識もなかったです(笑)。その時はきっと、そういう気持ちだったんでしょうね。例えば、そんな風に僕が勝手にそうなってしまっても、なんでも許される現場なんです。もちろん、違ったら違うと言われます。あのシーンは僕が部屋に入ってくる場面からの長回しで、とても緊張していました。
絶対に脳内を見られたくないのは生田斗真
Q:撮影がアップした後、最初にしたことは?
最終日は朝一から撮影して、夕方には終わる予定だったのですが、次の日の昼過ぎまでかかって、やっと終わって、くたくたになりながら帰って、ただ寝たという(笑)。僕が撃たれて、病院で血まみれになりながら、幻覚を見るシーンだったので、終わって一番にやったことはシャワーを浴びたことです。これまで何年もやってきましたが、本当にいまだかつてない撮影現場でした。いまではもう懐かしいくらいです。社会派的な作品はいくつかやらせてもらっていますが、わりと気持ちよく観られるものが多かった。でも、今回はまれに見る難しい題材ですし、久々にそんな現場を体験してうれしかったし、楽しかった一方、やっぱり、どこか辛かったとも思います。
Q:完成した作品を観ての感想は?
MRIスキャナーをつけて人の脳を見る場面では、何も見えないなかでやっていたので、完成した作品を観て、「CGこんな風になってたんだね」「すごいね」と斗真くんとも話しました。もちろん、「こういう風にはなります」とは聞いていましたが、どういう風にやっていいかわからなくて、演じるときは手探り状態でした。いま思うと、顔だけで演技するって難しかったですね。でも、その時は無我夢中でした。
Q:脳を見るか、見ないか。とても倫理的なテーマでもあります。
実際にありそうですよね。完全にSF的というより、どこか現実味がある。いつかは起こりうるのかもしれないと思わせてくれるような映画ですしね。僕自身は絶対に見られたくないですが。怖いですよ。見られたくないこともたくさんありますし、大切にしたい思い出もありますから。
Q:やはり嫌ですか。
この映画の取材ではどうしても、脳を見るかどうかともう一つ、「秘密を教えて」という展開になると思うのですが、言えないんですよね。だって、秘密ですから。一度、斗真くんと(松坂)桃李くんと3人で、「毎回聞かれるだろうから、一度お互いに真剣に言える秘密を決めておこう」って結構、赤裸々に秘密を語り合ったんですよ。我ながらみんな真面目だなと思うのですが、割と真剣に2、3時間話し合った結果、全部言えない話でした(笑)。
Q:じゃあ、脳を見る方はいいですか。
見る方は楽しいじゃないですか。「この人、こんな風に思ってるんだ、見てるんだ」とかわかる。でも自分となると、あくまでも「ごめんなさい」となります。
Q:今回の共演者で脳を見たい人は誰ですか。
斗真くんは見てみたいですね。あと、大森(南朋)さんです。そばで見ていても、そのすごさに圧倒されました。でも、言われてみると、いろんな人の脳を見たくなっちゃいますね。
青木は岡田将生にとって、これまでのイメージを覆すような捜査官役だった。新たなステージで、新たな表情を見せ続ける岡田。テレビドラマ「ゆとりですがなにか」もそう。実際に会ってみると、透明感やピュアさはそのまま、顔つきはずいぶんと精悍になった。大友組をやり抜いた自信が彼を一回り大きく見せているのかもしれない。これから目まぐるしく変わっていくのであろう彼から、ますます目が離せない。
(C) 2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会
映画『秘密 THE TOP SECRET』は8月6日公開