ダニエル・ラドクリフ、カメラの前で丸刈りに!壮絶ネオナチ役づくり
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世界の映画産業の中心・アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新! 全米HOTムービー」。今回は、大手映画批評サイト「ロッテントマト」で86%(8月29日時点)という高い支持率を獲得しているダニエル・ラドクリフ主演スリラー『インペリアム(原題) / Imperium』を特集! ダニエルはネオナチに潜入することになった若きFBIエージェントにふんし、シャープでリアルな演技が批評家から称賛されている。ダニエルと、本作の基となった体験談を提供した元FBI捜査官マイケル・ジャーマンが語った。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
実際にカメラの前で丸刈りに!
放射能汚染を狙った爆弾製造を計画する白人至上主義のテログループへの潜入捜査を任されたFBI捜査官ネイト・フォスター(ダニエル)の姿を描く本作。潜入捜査のためネイトが丸刈りにするシーンでは、実際に毛をそり落とした。「あれは一発で撮ったんだ。頭の形がデコボコじゃなかったから、上手く一発で丸刈りにできたんだ。すごく緊張して撮影したよ」とダニエルが語る通り、スクリーン越しでもその意気込みと緊迫感が伝わってくる。
また、ダニエルは事前の役づくりとして、1980年代~1990年代にかけて14年間FBIで潜入捜査をしていたマイケル・ジャーマンから話を聞いた。「潜入捜査では一つのミスで命を失うことがある」と認識することが重要だと教えられたダニエルはそれを軸にして役柄に入り込み、数多くの白人至上主義の本を読み、サイトを訪れ、演技の準備をした。実際に白人至上主義の考え方、価値観を持って日々を過ごすことはかなり不快だったという。
そして丸刈り&タトゥー姿でネオナチに成り切ったダニエル。白人至上主義グループの目の前で、街で歩いていた黒人男性と白人女性のカップルにわざと大声を出して威嚇して見せるシーンなど、そのドスの利いた声はとても『ハリー・ポッター』シリーズからは想像できないものになっていた。
撃ち合いなんてあり得ない!リアルな潜入捜査とは?
元FBIのマイケルによると、潜入捜査官には社交性や知識が重要で、よく映画で描かれているような撃ち合いや、暴力によって人を支配することなどないとのこと。一見孤独に捜査をしているように見えるが、多くの潜入捜査官はチームで動いているといい、「そのチームの内にはケースエージェントという人物が居て、FBIという機関内で生じる問題を解決しながら、潜入捜査官に指示を出していく」と明かす。もし潜入捜査官に何か問題が起これば、そのケースエージェントも出世のリスクを背負うことになるのだ。
また、潜入捜査が失敗すれば自分だけでなく助けるべき人々まで危険にさらしてしまうことになるため、「潜入捜査中はできる限り通常の日々として過ごすことを心掛けること」が重要だという。さらに「捜査対象者と会合する際は、2時間かけて会話が成り立つように準備をし、1時間の会合を行ってから、さらに2時間かけてその会話を文字に起こす。僕の潜入捜査官時代は1980~1990年代で今日のようなテクノロジーはなかったから、録音用のカセットテープを90分ごとにひっくり返す必要があり、そのために毎回トイレに立っていた」と振り返ったマイケル。劇中では、そんなリアルな潜入捜査が忠実に描かれている。
ダニエルが最もストレスを感じたシーン
劇中ネイトが乱暴な運転をするシーンがあるが、ダニエルは昨年ようやく運転免許を取ったばかりだったため、かなり緊張していたという。「普段はニューヨークやロンドンに住んでいて車を使わないから、運転したことが本作で一番ストレスを感じたことだったよ」。
ダニエルは本作のメッセージについて「白人至上主義といったヘイトグループの発言に対し、嫌悪感や恐れを持つのは当然の感情だと思う。だけどヘイトグループに対する攻撃的な反応や退け方は、ヘイトグループにとっては全てが彼らに対する陰謀にしか見えないこともあるんだ。もし問題を解決しようとするならば、ヘイトグループがなぜそのような考え方に至ったかを問うべきだ」と説明していた。
『ハリー・ポッター』シリーズのイメージを払拭するため、舞台「エクウス」では全裸になり、映画『ホーンズ 容疑者と告白の角』では角の生えた男役、『スイス・アーミー・マン(原題) / Swiss Army Man』では万能な死体役と果敢に挑戦を続けてきたダニエル。すでにアメリカでは大人の演技派俳優として世間にも認識され始め、近い将来アカデミー賞にノミネートされる可能性も十分あるように思える。「より挑戦的な役柄の方がより楽しみながら演じられる」と語るダニエルは、本作でまた一皮むけたといえるだろう。
(c) Lionsgate Peremire
【今月のHOTライター】
■細木信宏/Nobuhiro Hosoki
海外での映画製作を決意し渡米。フィルムスクールに通った後、テレビ東京ニューヨーク支局の番組「ニュースモーニングサテライト」のアシスタントとして働く。現在はアメリカのプレスとして活動中。