なぜ、スピルバーグのSF作品は名作ばかりなのか?人々が熱狂するワケ
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『未知との遭遇』『E.T.』『A.I.』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『グレムリン』『メン・イン・ブラック』……これら傑作とも呼ばれるSF大作の共通点は? もちろん「スティーヴン・スピルバーグが関わっている」ことだが、これらの作品にはほかにも“共通項”が存在していた。スピルバーグのSF作品が人々を熱狂させる理由を探る。(編集部・井本早紀)
◆近未来を意識したガジェットがとにかくカッコイイ
スピルバーグの近未来SFといえば、「かっこいいガジェット」がマストだ。『A.I.』でママが走らせる三輪駆動車、『マイノリティ・リポート』のグローブで操作できる映像ソフト、製作総指揮作品の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『メン・イン・ブラック』も含めれば、この項目で挙げたいガジェットはキリがないが、どのガジェットもSF史に残る名品ばかりだ。
何よりもそれらのガジェットが、「未来では本当にこんな道具が使えるかも」と子供から大人までワクワクできる機能性だけでなく抜群のクオリティーであることが、人々の心をくすぐる。スピルバーグは基本的に「(誰かが)監督が決まった時点で僕は、口出しをしないように努力する」というポリシーの持ち主だが、製作総指揮作品でもワクワクしない道具はNGのよう。スピルバーグは以前英Empire誌で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でロバート・ゼメキス監督に対して唯一口出ししたのは、「(創作する上では)男の子にかえれということ」だったと明かしていた。この言葉からも、童心を大事にする彼の心意気がうかがえる。
そしてさらに自身の監督作で、ガジェットをより“リアル”なものとしようとするのがスピルバーグの特徴。『マイノリティ・リポート』では、マサチューセッツ工科大学の協力を得て、理論上開発することが可能なグッズのアイデアを膨らませた。ガジェット一つで観客たちに“実現可能な未来”を見せようとするスピルバーグの熱意が、人々の心を彼の作品へと突き動かしているのかもしれない。
◆人工物と子供の無限の可能性を信じるスピルバーグ
アンドロイドが感情を手に入れる『A.I.』(監督)、悪ガキたちが冒険を繰り広げる『グーニーズ』(製作総指揮)、スクラップ置き場で見つけたロボットを子供が改造して父と共に最強のロボットに仕上げる『リアル・スティール』(製作総指揮)。スピルバーグ作品において、ロボットと子供は重要なファクターに位置している場合が多い。
監督作の『未知との遭遇』で消息不明になる少年バリーが、地球外生命体に対して恐怖を覚えることなく、好奇心のまま母親を振りほどき進んでいく姿も印象深い。ただひたすら母親の愛を得たいと願った『A.I.』のデイビッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)しかり、「純真さ」に満ちた存在の行動は、恐れや損得勘定に制限されることなく、人の考えをはるかに超えた行動や奇跡を生み出すことにつながっている。かつそれを、悲劇として描こうとしないのがスピルバーグだ。だからこそ最後の奇跡に観客は救われた気持ちになれる。
『ジュラシック・パーク』にもその傾向は見られ、人の手によって生み出された恐竜たちが己の生存本能に従い、次々と予想外の可能性を提示していくさまは、生命の力強さが満ちあふれ、人を食らう場面でさえ感動を覚える。恐竜から逃げるため、大人だけではなく子供の手を借りるシーンが差し込まれているのも子供の可能性を信じるスピルバーグらしさを感じる。
◆宇宙人&人間、親子の絆にあふれるロマン
宇宙人と人間の友情が描かれた名作『E.T.』のように、「絆」で泣かせてくるのもスピルバーグのSF作品の特徴だ。『A.I.』ではとあるアンドロイドが「見えないものを信じるのがオーガ(人間)だ。僕らとは違う」と語っていたが、スピルバーグは人特有の「目には見えない絆」こそが、科学や未知の生命体を際立たせる要素だと考えているのかもしれない。製作総指揮作品の『トランスフォーマー』も、地球外生命体と結ぶ友情物語という側面を有している。
また友情だけではなく、親子愛もスピルバーグ作品にとって欠かせない。『ディープ・インパクト』『宇宙戦争』で子のために行動する親の姿はグッとくるものがあり、何度も生き返るロボットやエイリアンとは違う、たった一つしかない人間の儚い命を一層まぶしく輝かせる。子を持った母・父は強いというイメージもスピルバーグポイントか。『グレムリン』(製作総指揮)でグレムリンをレンジでチンする母親には、勝てない。
◆いいとこ取り!全てを詰め込んだ新作SF!アクションもたまんねえ!
そして今度のスピルバーグ作品では、人々が彼に求めていたSF要素を大集結させている。それがドラマ「エクスタント」だ。同作はエイリアン、子供のアンドロイド、親子愛、近未来的ガジェット……と、彼の過去作を見た人であれば胸躍るようなSF要素がてんこ盛り。『A.I.』をほうふつさせる純真な少年アンドロイド、『マイノリティ・リポート』のようなかっこいい車、『トランスフォーマー』のマイケル・ベイの影響かと思われる爆発シーン。とにかくスピルバーグのロマンが詰め込まれている。
またスピルバーグ作品には珍しく、敵か味方かわからないエイリアンも見もの。主演のハル・ベリー演じる宇宙飛行士モリーに宿り生まれてくるエイリアンは、友好的な訪問者なのか、はたまた侵略者なのか。人体を利用して増殖をくり返すエイリアンたちの本当の目的、人の手によって生み出されたアンドロイドがたどり着いた答え、人類が戦うべき本当の敵……ドラマの全ての謎が明らかになったときに、スピルバーグがSF作品を通して描きたかったことが見えてくる。
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