企画から3年…ついに劇場公開!「『1人1食100円で』~女優・中原翔子、初めてのプロデュース~」第21回
実録!映画製作
これまで数多くの映画に出演してきた「知る人ぞ知る」女優・中原翔子が、映画を作ると決心! プロデューサー早川ナオミとして一本の映画を完成させる、立ち上げから劇場公開までの道のりを追う。理想と現実のはざまで揺れながら繰り広げられる予算との仁義なき戦い! われわれの想像を超える、壮絶な「映画作り」を目撃してもらいたい!(取材・文:壬生智裕/カバー写真:高野広美)
幾多の苦難を乗り越えて完成させた、『愛∞コンタクト』。11月5日の劇場公開がいよいよ近づいてきました。そこで今回は、3人の女性監督たち(渡辺あい・深井朝子・淺雄望)に直撃インタビュー! 完成した映画に対する思い、大変だった現場、ナオミとのコラボレーション、現場を支えた食事などの話を通じて、現在の率直な心境をまっすぐに、そして熱く語りました。
■完成した映画を観て
深井:不思議な映画だと思います。いびつというか、ゴツゴツしているというか。そういうところが面白いなと思います。
渡辺:最初はエネルギーが強すぎて受け止めきれなかったですね。撮影当時はとにかくがむしゃらだったので、その時のエネルギーが真空パックされているようで。想定していなかった強さを感じました。
淺雄:いわゆる整理整頓された映画というよりも、パッションあふれる映画というか。初めて観る人を、混乱させるようなパワーがある映画になりました。
渡辺:きっと観るたびに感じることが違うと思うんです。自分たちでもその都度、発見があるし、印象がちょっとずつ違ってくる。そこが面白いポイントなので、何回も観てもらいたいです。
■プロデューサー・早川ナオミについて
深井:中原(ナオミ)さんは正面からぶつかってくるんで、うちらもぶつかっていかなきゃと思いました。
渡辺:中原さんの持っているエネルギーをものすごく直に感じて。時にはそれを受け止めきれない時もありました。でもその期待には応えたいし、それについていかなきゃという気持ちはありました。とにかくものすごいエネルギーで、誠実にもの作りに向き合っている方だなと思いました。
深井:わたし、中原さんとしゃべる時はなるべくごまかさないようにしゃべろうと意識していたんです。人間ってなかなか100%本当のことを言うのって難しいじゃないですか。でも、中原さんに対しては、より自分に近い言葉でしゃべらなきゃと思って。時には誤解されることもあったと思いますけど、そうでなければなと思っていました。
渡辺:それは中原さんがぶつかってきてくれたからだよね。わたしたちと同じ目線で一緒に悩んでくれたから。
淺雄:中原さんは、効率的にやろう、お金をできるだけかけないようにしよう、というプロデューサーではなく、何か問題があったら一度立ち止まってみよう、一緒に考えてみようというタイプのプロデューサー。とにかく予算とか時間は一回置いておいて、最終的な作品のクオリティーを高めることが第一。一歩一歩立ち止まってもいいから作品のことをもっと考えようよと言ってくれた。それはすごくいい経験になったし、人間としても成長できる良い機会となりました。
■1食100円!撮影現場の飯
淺雄:豚丼が印象に残っています。豚丼におろしがのっているのを見た時は、今日も頑張れると思いました(笑)。結構ギリギリの予算で、100円で間に合ったのかよくわからないんですけど、時々リッチな日があったりした時はうれしかったですね。
深井:でも、わたしは撮影現場で食べていた丼の器がいつも同じだったので、今でもたまに夢に出てきます(笑)。
渡辺:わたしはおいなりさんが印象に残っています。(オムニバスの3本目)『LOVE REVOLUTIONS』を撮影している時に、いいタイミングで出てきたんですよ。あれは染みわたりました。1本目の『感電』の時はいろんな意味でまだ慣れていなくて。食事も喉を通らなかったくらいなんですけど、それでもご飯がおいしいというのは本当にありがたいことで。揚げ物だらけのロケ弁とは全然違いますからね。
深井:野菜もちゃんと入っていたし。
淺雄:全部手作りですからね。ありがたかったです。わたしも今まで現場でなかなかご飯を食べられなかったんですよ。でも今回は全部食べられました。ご飯の力ってすごいなと思います。
渡辺:撮影現場だけじゃなくて、準備期間の時も中原さんの家でお鍋を囲んだりとかしていましたからね。
淺雄:みんなで同じ物を食べるって大事ですよね。気持ちが通じ合うというか、一心同体という感じになります。
■現場は大変だった?
淺雄:大変じゃなかった日はなかったですよ。
渡辺:涙なしには語れない(笑)。わたしは仲間内でしか映画を撮ってこなかったので、外部のスタッフと短い期間でしっかりとコミュニケーションをとる、という撮影は初めてでした。初歩的なことかもしれませんが、ちゃんと(考えを)言語化して伝えなきゃいけないんだな、ということをあらためて感じて。口下手なので、それは苦労しました。スタッフが本当に優秀な人たちだったので、何とか切り抜けられましたけど、本当に必死でした。
深井:それは本当にそう。スタッフの方が優秀であればあるほど、自分の至らなさを感じましたね。
淺雄:映画は1人じゃできないんだということを本当に痛感しました。自分が1人で考えていることをみんなに共有してもらって、よーいドンでやるというのはしんどいことだけど、それが面白いところでもあります。
深井:他人に委ねるということはすごい大事だと思いましたね。(原作・代々木忠の著書にもあった通り)自分を明け渡すことで、開けるんだなと感じました。
■撮影を終えて…
深井:今回、脚本を書くことの楽しさが、さらに深まりました。それが今回の現場で得たことですね。映画に対する向き合い方が変わったような気がします。
淺雄:自分が強くなった気がしますね。自分が監督したのは3本の映像をつなぐ幕あいの映像だったんですが、撮影時間は1日しかなかった。それを一気に撮りきるというのは、自分の中の整理が追いつかないところもあったし、大変な部分もあったんですけど、何か乗り越えたなという気持ちがあって。自分にとっての分岐点になりましたし、自信がつきました。おそらく今回のオムニバスに関わらずに映画を撮り続けていたらどこかで挫折していただろうし、これから頑張っていくにあたって、いい出会いになりました。
渡辺:いい出会いだったなと思います。すごく変わったと思います。わたしもちょっと強くなったかな。
淺雄:現場中は地獄というか、こんなことがまだあるのかというくらいに追い打ちをかけられて、へたりこむこともありましたけどね。
渡辺:でも、それだけ3人の結束力も増したと思います!
映画『愛∞コンタクト』は11月5日よりユーロスペースにてレイトショー 11月21日より別府ブルーバード劇場にてレイトショー
■『愛∞コンタクト』予告編!
中原翔子 PROFILE
熊本県出身。明治大学在学中よりモデルとして活動後、女優デビュー。高橋洋作品の常連であり、三池崇史や井口昇など海外でも支持されている監督の作品にも多数出演。国内外を問わず、知る人ぞ知る女優である。ニックネームは“地獄のしょこたん”。
<近況> 11月5日より2週間、映画『愛∞コンタクト』上映時は連日ユーロスペースに顔を出す予定ですので、お気軽にお声掛けください! また、11月20日には第1回Beppu凱旋映画祭にて『愛∞コンタクト』や出演映画『旧支配者のキャロル』(監督:高橋洋)も上映されます。
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さらに、11月23日には別府ブルーバード劇場にて『FULL METAL 極道』(監督:三池崇史)の特別上映も決定!