黙れ小僧!『もののけ姫』のセリフを日常で使うタイミング
今週のクローズアップ
今年公開された映画『君の名は。』は興行収入で『もののけ姫』を上回りました。それでも『もののけ姫』の方が好きなんです、僕は。なんといってもセリフがいい。日常生活でも使いたくなる。いつ使えばいいかわからないって? この特集でそんな悩みも解決だ!(編集部・海江田宗)
(1)「黙れ小僧!」
<このセリフについて>
「あの子を解き放て! あの子は人間だぞ」と言うアシタカ(松田洋治)にモロの君(美輪明宏)が言い放ったセリフ。2016年のNHKの大河ドラマ「真田丸」で西村雅彦演じる室賀正武(むろがまさたけ)が言った「黙れ小童!」と似ている。
<このセリフの使い方>
当然ですが「小僧」以外にこの言葉をぶつけると相手に怒られます。しかし、最近の小僧は大人の前では静か。もしうるさくても「黙れ小僧!」なんて言ったら周りの大人にドン引きされるかもしれません。なので、このセリフは吠えてうるさい犬に向かって使いましょう。オリジナルの逆をいくのです。あなたがモロ。犬がアシタカ。犬がキョトンとしているって? アシタカもそんな反応です。通じている通じていないは問題ではありません。あなたの気持ちがすっきりします。
(2)「賢(さか)しらにわずかな不運を見せびらかすな」
<このセリフについて>
サン(石田ゆり子)とエボシ御前(田中裕子)の間に入り、群衆に「みんな見ろー!」とタタリ神の呪いを見せるアシタカにエボシが言うセリフ。「その右腕、切り落としてやろう」と続く、劇中きっての恐怖セリフ。エボシの攻撃を避けてサンとエボシを一瞬で気絶させるアシタカの無双っぷりはさすが。そして「誰か、手を貸してくれ」と優しく呼びかけるアシタカの態度の豹変ぶりは数秒前まで呪いを見せていたとは思えない。
<このセリフの使い方>
突然友達が右腕にタトゥーを彫って登場したときに使いましょう。もちろん馬鹿にしようというネガティブな意味で言うのではありません。正直、タトゥーをいれた友人にかける言葉って見つからないですよね。でも沈黙は気まずい。突然のシチュエーションのときの咄嗟のセリフとして、頭の隅っこにストックしておきましょう。友達と気まずくなるんじゃないかって? 大丈夫、たいていの人は活字にしないとこのセリフの意味はわかりません。
(3)「4日5晩、踏み抜くんだ」
<このセリフについて>
おトキさん(島本須美)たちの仕事を手伝うアシタカが、「厳しい仕事だ」と感想を述べたときにおトキさんが言い放つセリフ。ブラック企業も真っ青のブルー企業になるような驚きの労働環境が明らかにされるセリフ。おトキさんのドヤ顏と無言のアシタカが切ない。
<このセリフの使い方>
映画『8 Mile』でエミネムがやっていた、即興で相手を“ディスる”ラップバトルが流行しているのをご存じですか? そのラップバトルで重要なのが“韻を踏む”ということ。一般的には馴染みが薄い“韻を踏む”という技は、「お前の見た目はモノノケ! だからさっさとソコドケ」のように母音が同じ言葉を使うことを意味します。このセリフは「ラップバトルで勝ちたいなら、『4日5晩、踏み抜くんだ』」というように使いましょう。
(4)「私は自分でここへ来た。自分の足でここを出ていく」
<このセリフについて>
石火矢で打たれたアシタカがサンを担いで、みんなに止められながらも「たたら場」を出ていくときに言うセリフ。なにがなんでも出ていくというアシタカの強い気持ちが感じられる。このセリフのあとに10人の力で開けるという扉をアシタカが開けるシーンは、すべての男子の憧れ。
<このセリフの使い方>
劇中では男性が使っているセリフですが、現実では女性用です。ある日の合コン。イマイチなメンズに飽き飽きして、もう帰ろうというときに「もう終電ないじゃん! わかった。タクシーで送るよ」と言われたときに使いましょう。帰りたい気持ちがストレートに相手に伝わります。男性のみなさんもこれを言われたらあきらめましょう。万が一男性陣があきらめなかったときは、「まだ言うか! 人間の指図は受けぬ!」と続けてください。
(5)「あんたも女だったらよかったのさ」
<このセリフについて>
シシ神を狩りに森に入るエボシを「必ずお守りする」と言うゴンザ(上條恒彦)のことを信用できないおトキさんが、ゴンザに言ったセリフ。言ったあとに舌をベッと出すおトキさんが可愛すぎる。ゴンザはムッとするが、エボシはこれでもかというくらいに爆笑する。
<このセリフの使い方>
楽しい女子会に無理矢理入ってこようとする男性に対してかなり効果的な言葉です。言われた男性はゴンザのようにムッとならず、普通に凹むでしょう。男性はこのセリフを女性に対して絶対に使ってはいけません。使うなら仲のいい男友達に向かって使いましょう。いつもとは違った空気が2人の間に流れます。
(6)「ひどいにおい。鼻がもげそう」
<このセリフについて>
乙事主(森繁久彌)率いるイノシシたちと人間たちの戦いが始まる前に、人間がたいていた不思議な煙のにおいをかいだサンが言った言葉。サンも山犬並みに鼻がいいんだろうなと観ている者に思わせる。いったいどんなにおいなんだと気になって仕方がない。
<このセリフの使い方>
オナラという生理現象は、ある意味しかたのないものです。我慢をしすぎると体に悪いとさえ言われています。しかし、我慢しなさすぎの人もよくない。いくら注意しても聞かない人にはこのセリフをバシっと言ってあげましょう。「ちょっとオナラした?」「くさいんだけど」と言われ慣れているオナラ常習者も、このセリフはなかなか言われたことがないはずです。
(7)「いざとなったら溶けた鉄をぶっかけてやるさ」
<このセリフについて>
侍が押し寄せるたたら場にこもったおトキさんたちを心配するアシタカに、おトキさんが言ったセリフ。「この人、気強いんだろうな」という疑惑が、甲六(西村雅彦)に同情するレベルの確信にまでいく強烈なセリフ。鉄をかけられるのを想像すると、シシ神に命を吸われるのは理想の死に方にさえ思える。
<このセリフの使い方>
フットサル仲間を鼓舞するときに使うとチーム全体が「ウォーッ!」となります。また、試合前に「いざとなったら溶けた鉄をぶっかけてやろうぜ!」と円陣を組む相手に、敵は本気を出せないでしょう。溶けた鉄を相手の前まで持っていくのか、それとも溶けた鉄の前まで敵が来るのを待つのかは不明。『ターミネーター2』のラストでは溶けた鉄っぽいものの中にシュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーが自ら入っていき、涙を誘います。
(8)「母さんが生きていれば知恵を貸してくれる」
<このセリフについて>
「生き物でも人間でもないモノ」に囲まれたサンが山犬に、母さん(モロ)のもとに行くよう命じるときに言うセリフ。本作を初めて観る場合は、「生き物でも人間でもないモノ」への恐怖でいっぱいとなり、このセリフどころではない。
<このセリフの使い方>
劇中と同じく兄弟や姉妹で使いたいですね。ただし「生きて」の部分は省いて使うことをオススメします。使うシチュエーションとしては、リビングでくつろいでいる父親の前がベストです。「母さんがいれば知恵を貸してくれる」と子どもたちに目の前で言われた父親は、妻のありがたさと自分の未熟さに気づき、自分も子どもたちの役に立てるようになろうと努力を重ねるはずです。
・まとめ
駆け足でお送りしてきた「『もののけ姫』のセリフ使い方講座」はどうでしたか。明日使えそうなものもあれば、一生使わないのではと思うものまで様々でしたね。まもなくやってくる2017年、新しい自分を出していくために『もののけ姫』のセリフを使うかどうか。それは「曇りなき眼で見定め、決め」てください。