ハリウッドを怒らせた!トランプ大統領とセレブ達の関係
今週のクローズアップ
共和党のドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領になったことで、民主党支持者が多いと言われるハリウッドが揺れています。性別、人種、宗教、人権などに対して、差別的な発言をする新大統領に、ハリウッドセレブたちが声を上げて猛抗議するニュースが連日飛び交っている中、トランプ大統領とセレブ達の今や過去、そしてエンターテインメント業界との関係ついて紹介します。(編集部・香取亜希)
大物たちがこぞって公に批判
民主党のヒラリー・クリントン支持者として知られる大物オスカー女優のメリル・ストリープが、大統領選前にトランプ氏に成り切って舞台に立ち話題になりました。どうやって女性の心をつかむかという曲を、トランプ氏そっくりの身振り手振りを交えて歌い、女性蔑視発言で女性からの支持率が低いトランプ氏を揶揄して会場を沸かせました。過去に3度のオスカー受賞歴を持ち、元イギリス首相マーガレット・サッチャーや女性料理家ジュリア・チャイルドなど、実在の人物を演じることに関して神がかった才能を見せるメリルのトランプ氏ぶりは、ブラックユーモアたっぷりで人々の関心を誘いました。そして、トランプ氏が次期大統領に決まった後には、第74回ゴールデン・グローブ賞のセシル・B・デミル賞を受賞した壇上で、名指しこそしていませんが明らかにトランプ氏について批判的なコメントを発表。それに対しトランプ氏がTwitterで、「メリル・ストリープはハリウッドで最も過大評価された女優の一人だ」と大人げない反撃をしたことでさらに話題になりました。
メリル以外にも、社会派ジャーナリストとして知られ、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞の経歴を持つマイケル・ムーア監督、泥沼離婚や破産寸前説などトラブル続きのジョニー・デップ、人道支援活動に積極的なアンジェリーナ・ジョリー、故ジョン・レノンさんの妻でありアーティストのオノ・ヨーコなど、そうそうたる面々が自身のTwitterや各メディアで声を大にして反トランプを訴えています。
過激!若手も人気者も抗議デモに参加
日本の芸能界では政治的発言はタブー視される傾向が強いですが、ハリウッドは違います。政治色の強い発言や行動を起こす意識の高い俳優らは、ベテランや若手を問わず数多くいます。
有名どころでは、民主党のクリントン候補の支持者として選挙運動に参加していたレディー・ガガ。クリントン陣営の集会でパフォーマンスを見せたり、クリントン氏への投票を呼び掛けたりなど精力的に活動していました。かねてより自身の楽曲やファッション、生き方自体を通してマイノリティーを応援してきたガガ。差別的な発言の目立つトランプ氏の大統領当選には相当ないら立ちがあったのか、トランプ氏の自宅があるトランプタワーの前で、トランプ氏の名前の一部「trump(トランプ)」に掛けた「Love trumps hate. =愛は憎しみに勝る」というプラカードを掲げ抗議する姿を自身のSNSに投稿しました。
ほかにも、映画『トランスフォーマー』シリーズで知られるシャイア・ラブーフが抗議デモに参加、その最中に暴行容疑で逮捕される騒ぎを起こしました。また、大統領就任の翌日には、女性蔑視発言のトランプ大統領への抗議デモとして、ワシントンやニューヨークをはじめとするアメリカ各地で「ウィメンズ・マーチ」が行われ、女性の権利を主張する抗議デモということで、多くの女性セレブの姿が見られました。ワシントンではマドンナ、シェール、スカーレット・ヨハンソンらが演説を行ったほか、エマ・ワトソン、クロエ・グレース・モレッツ、ケイティ・ペリー、ジェシカ・チャステインらが一般人と一緒に行進し、ニューヨークではウーピー・ゴールドバーグ、ヘレン・ミレン、シンシア・ニクソンが演説、サンダンスではシャーリーズ・セロンが行進に参加していました。女性セレブを始め、本当に多くのハリウッドの住民らが反トランプを公言し、実際に行動を起こしています。
毒舌生かし、リアリティー番組の人気者
すっかり暴君として君臨しているトランプ大統領ですが、元は不動産王として大成功したやり手のビジネスマンで、アメリカで2004年から放送されているリアリティー番組「アプレンティス」シリーズのホストとして人気を博していた過去があります。一般参加者を「Apprentice=見習い」として、そのビジネススキルをトランプ氏が審査し、生き残った勝者をトランプ氏の会社で雇うというもの。生易しい番組ではなく、「お前はクビだ!」という決めゼリフと共に、敗者をばっさばっさと切り捨て、たった一人の勝者を決めるという過激な内容が大受け。日本でいうところの「¥マネーの虎」を100倍エグくしたようなイメージといえば伝わりやすいはず。一般人だけでなく、『スター・ウォーズ』シリーズとのコラボ企画を放送したこともあり、ダース・ベイダーと一緒にストームトルーパーをクビにしたり、チューバッカの言語を誰も理解できないという理由で「お前はクビだ!」と切り捨てたりと、ノリの良いエンターテインメント性も兼ね備えた人気番組です。
第7シーズンからは「アプレンティス / セレブたちのビジネス・バトル」として生まれ変わり、セレブたちがチャリティーへの寄付金を集める趣向へシフト。その後もシリーズ化して人気を維持していましたが、トランプ氏が大統領選に出馬したため番組を去り、代わりのホスト役にトランプ氏が属する、共和党支持者のシュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーが抜てきされ、今後も大注目の長寿番組です。
本人役でカメオ出演が大好き
今でこそセレブに嫌われているイメージが強いですが、カリスマ性の強いトランプ氏は、数々の映画やドラマに本人役でカメオ出演しています。『ホームアローン2』で、マコーレー・カルキン演じるケビンが、ニューヨークのプラザホテル内で受付はどこかと聞くシーンがあります。話し掛けられた紳士、こちらがトランプ氏です。撮影当時プラザホテルのオーナーだったことから、特別出演に至ったようです。
「SEX AND THE CITY」のシーズン2にも登場しています。キム・キャトラル演じるサマンサが、大金持ちのおじいちゃんにナンパされるというシーン。ナンパするおじいちゃんの役ではなく、その連れとしてバーにいるという設定。「トランプタワーにいる」というセリフまであります。サマンサとトランプ氏が絡んだら面白そうですが、残念ながらそこまでの大役ではありませんでした。
本人は出演していませんが、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』に登場する悪役ビフ・タネンはトランプ氏をモデルにしているというのは有名な話。見た目のギラギラした感じや髪形など、一目瞭然です。
そのほかにも、『トゥー・ウィークス・ノーティス』『ズーランダー』など、基本的に本人役でカメオ出演している作品が多いです。ハリウッドセレブとの良好な関係ゆえの出演……というか、それだけのカリスマ的価値がある人物ではあるようです。
どうなる第89回アカデミー賞授賞式
ハリウッドにアンチトランプが大勢いることは周知の事実。そんなハリウッドで、セレブが集う映画業界最大の祭典である第89回アカデミー賞授賞式が、2月26日(現地時間)に開催されます。映画界だけでなく、全世界が注目する一大イベントということで、この場でトランプ氏に対する政治的な発言をする人もいるのではと注目されています。しかも、生放送で全世界に発信されるので、発言を編集できないというのがポイント。
司会者のジミー・キンメルは、大統領選間近に開催された第68回エミー賞授賞式でも司会をしていましたが、その際トランプ氏に対して辛口ジョークを言っていたので、アカデミー賞授賞式でも何かしら爆弾発言を投下してくることが予想されます。
ほかにも世情を反映してか、ノミネート作品に『ムーンライト』『ラビング 愛という名前のふたり』『エル(原題)』『ヒデン・フィギュアーズ(原題)』など、人種や性差別に関する作品が多数見受けられます。ノミネート者についても、近年「Oscars So White=白すぎるオスカー」と批判されがちなので、今年はより一層その点に気を配ったと思われる人選が目立ちます。
トランプ大統領の影響を確実に受けた出来事として挙げられるのは、外国語映画賞にノミネートされているイラン映画『セールスマン』の主演女優タラネ・アリシュスティが、授賞式をボイコットすると自身のTwitterに投稿したこと。それは、イランを含む7か国からの入国を一時禁止するという大統領令への抗議の意味が込められています。
このように、今年はいつになく政治色が強くなることが予想されるアカデミー賞授賞式は波乱含み。反トランプ祭りとなるのか、純粋に映画の祭りとなるのか。受賞結果と併せて見守るとともに、今後のトランプ大統領とハリウッドセレブの関係に注目です。