『PとJK』亀梨和也インタビュー
恋愛にどんな障害があっても、それを問題にしたくない
三次マキによる人気少女漫画を映画『ストロボ・エッジ』『オオカミ少女と黒王子』などの廣木隆一監督が実写化した映画『PとJK』。亀梨和也演じる生真面目な警察官・功太と、ピュアな女子高生・カコ(土屋太鳳)の、周囲には絶対内緒の結婚生活を描くラブストーリーだ。意外にも恋愛映画初主演作となる亀梨が、作品への思いや自身の恋愛観について語った。
■肩書きや年齢差などを超えたヒューマンドラマ
Q:警察官と女子高生の“年の差婚”が話題の本作。出演が決まったときのお気持ちは?
少女漫画原作の映画って、もっと若い世代の俳優さんが演じるイメージがあったんです。30歳の自分で大丈夫なのか? 本当に務まるのかな? と初めは思いました。台本のト書きに「壁ドン」って書いてあったらどうしよう、とか(笑)。ただ、現場に入る前に廣木監督と、「バキバキの少女漫画原作ではないようにしよう」と話し合って、徐々に自分たちなりの形に仕上げていった感じです。プレッシャーもありましたが、覚悟を持って撮影に臨みました。
Q:確かに、少女漫画原作ならではのキラキラ感は控えめにしているように感じました。
夢物語なところから入っていくのではなく、なるべくリアルな警察官をイメージするところから入っていきました。この作品は、肩書きや年齢差などを超えた者同士のヒューマンドラマだと思っているんです。立場の違う男女が、それぞれの持っているものをシンクロさせて結婚し、同じ人生を歩んでいく話。リアルとは言ってもドロッとしているわけではなく、ちゃんと現実的な物語に仕上がっているのは、廣木監督の手腕なんだと思います。
Q:功太とカコのような、立場の掛け離れた者同士の恋愛についてどう思いますか?
功太は警察官で、カコは女子高生。その立場や年齢差が障害として立ちはだかるところはあるけど、純粋な二人だからこそ向かっていけるんです。僕自身、その恋愛にどんな障害があろうとも、それを問題にしたくはないですね。
Q:功太は、自分が警察官だから女子高生のカコと軽々しく付き合えないと考え、ケジメとしての意味も込めて結婚を決意します。
恋愛としての向き方よりも、警察官としての責任のほうが先行していますよね。だからこそ、自分がカコを思う感情を扱いきれずに葛藤する。それがこの作品の面白さの一つであり、演じる上での難しさもありました。例えば、父親の立場だったり、息子の立場だったり、誰にでも自分の立場があって、その中でどういったバランスで生きていくのか考えることって、あるんじゃないかな。いろいろな立場や肩書きがあるけれど、それを取り払って個としての自分になったときに一番何が大事なのか、とか。そういったことを小難しく説くわけではなく、確かに感じさせてくれるエンターテインメント作品に仕上がっていると思います。
■土屋太鳳の印象は“キレイな魂”
Q:土屋太鳳さんが演じたカコが、最高にキュートでしたね。
土屋さんの印象をひと言でいうと、キレイな魂。彼女の持っている感覚や人間性が、カコというキャラを魅力的にしてくれました。この作品は、カコの純粋な魅力がすべてだと言ってもいいくらいだと考えていたので、土屋さんが役と真摯(しんし)に向き合ってくださって、本当によかったなと思います。
Q:母性も感じさせる女優さんですよね。
確かに、無垢な部分と大人の部分がバランス良く存在している人ですね。いい意味で純粋すぎるところと天然なところもあって、何にでも真っすぐで、ズルさがまったくなくて。キャパオーバーでも頑張ってしまう人なので、息切れしないように気をつけてほしいですね。そこが彼女のいいところだし、ずっとそのままであってほしいんだけど、「疲れたらちゃんと手を挙げていいんだよ」って伝えたい。僕の経験上のアドバイスです(笑)。
■女子高生妻にどう対応するべきか悩んだ
Q:女子が観たらキュンキュンするシーンが満載ですが、撮影はいかがでしたか?
自分が誰かをキュンキュンさせているとか、正直まったくわからないです(苦笑)。この作品をやるにあたって、そこを狙っていくような気持ちは持ち込まないでやったので、観ていただいた方に委ねます。ただ、この映画のカコはかわいかったし、功太との関係性もかわいかった。そんなカコが繰り出してくる無邪気なリアクションを、年上の警察官がどう対応したらいいのかが難しかったですね。例えば、リビングのソファーにカコの趣味でぬいぐるみが置いてある。それをどう扱ったらいいのか? カコに寄せすぎて、無邪気に付き合ってあげちゃうのも違うし(笑)。
Q:カコがお風呂から出た功太の前に立ち、目を閉じてキスを待っているシーンも、リアクションに苦労されたとか(笑)。
そう、そっけなさ過ぎるのも違うだろうし、笑っているのも余裕っぽくてイヤだし、そこはメチャクチャ考えました。結果、ちょっと我慢する、というところに落とし込みましたけど、すごく気を遣ったシーンです。二人きりなんだからもっとのろけてもいいのかな? でも、年上の警察官だからな……とか、その辺のさじ加減が本当に難しくて、ロケで泊まっていたホテルの部屋で一人悩みました(笑)。
Q:功太のストイックな部分は、亀梨さんご自身の素に近いのでは?
どうだろう? ただ、自分で言うのもなんですけど、どのシーンも「キマリ過ぎない」ように気をつけました。実は、仕事だとキメたがってしまうクセがありまして(笑)。監督も「キラキラの亀梨、全開でちょうだい」という感じではなかったので、「もしもキマリ過ぎだなと思ったら言ってほしい」と監督に伝えておいたんです。でも、完成版の試写のあとに監督と食事をしたら、「功太が警察手帳を出して『警察だ!』っていうところだけ、ちょっと出ちゃってたかな」って言われて。やっぱり、今回もキメちゃっていたみたいですね(笑)。
■取材後記
本当は人一倍愛情深くて優しいのに、あるトラウマを抱えているがゆえに誰にも心を開けずにいた功太。天真爛漫な女子高生の新妻を前に、いろんなことを考えすぎてクールになってしまう彼は、まさに「軽やかに見えて実は硬派」な印象を受けた亀梨のハマり役。本人が決まり過ぎないようにしても、自然と決まって見えてしまう。そんな亀梨の「己の恋心に翻弄(ほんろう)される実直な警察官」ぶりが、強く心に残る作品だ。(取材・文:斉藤由紀子)
映画『PとJK』は3月25日より全国公開
(C) 三次マキ/講談社 (C) 2016「PとJK」製作委員会