ウーマンラッシュアワーが語る『ラ・ラ・ランド』が泣けるワケ
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、夢を追う男女の姿に村本大感激! 女優の卵とジャズピアニストの恋物語を素敵な音楽とダンスが彩る『ラ・ラ・ランド』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
漫才も映画も、良作ほどシンプルなもの
村本:アカン、映画のことを思い出したらまた泣けてきた。もう今年のベストかもしれん。本当に良い作品に出会えたな~。
中川:僕は『ムーラン・ルージュ』(2001)とか『バーレスク』(2010)とかミュージカル映画が大好きなんやけど、この映画はミュージカルシーンだけでも高得点!
村本:ストーリー自体は1分くらいでしゃべれてしまうような、すっごいシンプルな物語。俺は漫才でも映画でも、本当に面白いものってすごくシンプルなもんやと思ってて。
中川:シンプルな話に素敵な枝が付いている感じ?
村本:そうそう! 同時にすごく現実的な話でもあって。詳しくはネタバレになってしまうけど、2人の気持ちが1回燃え上って少し冷めて常温になった感じの描き方なんか生々しい。けど、そのくさみをミュージカルシーンが取り払っていて、すごく観やすくなってるのよ。
中川:切ないシーンでも、ミュージカルに切り替わることで幸せな気持ちがずっと続くよな。特にミア(エマ・ストーン)とセブ(ライアン・ゴズリング)がプラネタリウムにデートに行って、ミュージカルシーンになるところ! 2人が宙に浮かんで、ディズニー映画のお姫様と王子様を見てるみたいで良かったわ~。
村本:映画について話せば話すほど想像がどんどん広がっていって、劇中にない描写まで想像してしまう。しゃべることで映画が続いている感じがするっていうか。こんなにいろんな想像をしてしまう映画は初めて。この映画(で描かれるミアとセブの運命の出会い)を観てから、コーヒーを飲みたいと思ったときに、ふと違う店に行ってみようって思うようになったり。
中川:人生にはいろんな可能性があるんじゃないかっていうことを思わせてくれる。
村本:それにロサンゼルスの景色や人の心も、とても淡くて。観ていて何回も胸が痛くなったなぁ……。
中川:これ、前に観た『セッション』の監督(デイミアン・チャゼル)やけど32歳やて。僕らより年下やで。
村本:いやすごい。嫉妬しか感じないわ!
セブは「カッコ悪い男」、ミアは「強い女」
村本:俺はこの映画、強い女とカッコ悪い男の話にも思えたな。ミアは大人やのにセブはすごく言いわけがましい。男の未練がましさと、か弱い部分が濃縮されていて、観ててすごいつらかった~。
中川:ということは、結構弱い男やっていう自覚があるんやな。
村本:あるある。セブなんて昔の俺にリンクするところがたくさんあったで。いつまでも“自分のやりたいこと”なんて言ってカッコつけて、現実から逃げてるところとか。本当にやりたい事をやって生きていくんやったら、結果を出さないとダメなのよ。ただただやり続けているだけでは素人なんやけど、それを認めたくないから「俺はやりたいことしかやりたくない」なんて言う。それがまさにセブ。
中川:ミアは途中、心が折れそうにもなるけど、すごく強い女性やな。男はそれに振り回される感じがあって。
村本:しかも、いざ彼女ができたらコロッとやりたくないことをやって、「君のためにやったんだ」とか自分の弱さを彼女にぶつけてな。ミアはそれにも耐えてて本当に強い!
中川:僕、家にいるときって実は亭主関白な気分なのよ。でもこの映画を観て、ちょっと強い女性に振り回されたいっていう気持ちになったわ。相手の夢を支えてあげたいとか、自分にはない部分やから。
村本:好きな相手がいて、夢を追いかけている人たちはつらい気持ちになるかもわからんな。宇宙に飛び立つために愛という燃料を切り離して、夢の世界に飛び立つ感じというか。
中川:すごいオシャレなコメントやん!
村本:そうやろ? でもおまえに向けたメッセージやで。おまえという人間を切り離して俺は飛び立って行くって。
中川:それは勘弁して……。
村本、映画のヒロインと同じ名前の元カノを思い出す
村本:本当にミアはカッコ良かったな~。女の子は憧れるんちゃう? 男は自分の恥ずかしい部分をセブに見て、女は自分の憧れをミアに見るかもわからん。しかもこのミアって、昔の彼女と一緒の名前やねんな。
中川:日本人でミアって、すごい名前やな!
村本:そう、ミアっていう名前で顔もエマ・ストーンにちょっと似てないこともない感じの、きれいな娘でね……。
中川:こんなにはっきりした顔立ちやったんか。
村本:これがまさに「あなたの夢を追いかけて」っていう娘で。俺が引っ越したとき、冷蔵庫とか生活用品が急に送り付けられてきて。
中川:貢いでくれたみたいな。
村本:しかもそれだけじゃなく、自分は働いて電車賃からジュース代まで全部出して俺を支えてくれたのよ。「あなたは夢を追いかけて」って。
中川:ホンマに映画みたいやな!
村本:まぁ、別れたらくれた物全部の請求書が送られてきたけどな!
中川:まあ、そういう最後でも、実はハッピーエンドかもわからんから……。
ここだけは言いたい!ななめ見ポイント
村本:セブがバンドに入って、サングラスかけて変な表情でポスター撮影するところあったやろ? あれダサくてカッコ悪い男の象徴みたいやったわ。
中川:でも、自分もやりたくないことやらされるとかはあるやん。
村本:番組でMCの人が、俺らを紹介する前に「今日は以上のメンバーです!」って言って、「ちょっとちょっと僕たちは!」って入っていく(仕込みの)展開をやらされたりな。こんな事するためにお笑いの世界に入ったのとちゃうんやけどな……と思ったりして。ミアも不器用なところあるよな。一緒に住んでる女の子たちと色とりどりのドレスを着てパーティーに行くとこあるやん?
中川:おしゃれなミュージカルシーンね。
村本:でもミアはどこか他の人たちに交ざれない。あの場の空気が合わない部分って、俺が福井から大阪に出てきて、都会に染まろうと思っても染まれなかった感じに似ていて共感してしまったわ。
中川:媚び売るの苦手やしな~。
村本:できない。俺には向いてないわ。不器用でプライドが高いから会話が続かない。
中川:僕はいろんな場に行って、楽しく交ざっている方が好きやなぁ。媚を売る方が楽やし。おまえみたいに一人でおる人を見たら、かわいそう、もうちょっと交ざればいいのにって思ってまう。
村本:おまえはそれで仕事が増えんから、どうかと思うわ。仕事が増えるパターンならともかく……。
今月の激オシ映画はコレ!
『セッション』などのデイミアン・チャゼルが監督と脚本を務めたラブストーリー。女優の卵とジャズピアニストの恋のてん末を、華麗な音楽とダンスで表現する。『ブルーバレンタイン』などのライアン・ゴズリングと『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのエマ・ストーンをはじめ、『セッション』でチャゼル監督とタッグを組んで鬼教師を怪演したJ・K・シモンズが出演。クラシカルかつロマンチックな物語にうっとりする。
(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.Photo credit:EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。「AbemaNews」チャンネルのニュース番組「AbemaPrime」(毎週月~金曜日21:00~23:00生放送)にて月曜レギュラー出演。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。