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『WE ARE X』YOSHIKI 単独インタビュー

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『WE ARE X』YOSHIKI 単独インタビュー

「死」によって「どう生きるか」を考える

取材・文:森田真帆

サンダンス映画祭をはじめ数々の海外映画祭で上映され、ファンのみならず多くの人々の心を掴み高い評価を得た、スティーヴン・キジャック監督の映画『WE ARE X』がついに日本で公開となる。本作は、バンドのリーダーである YOSHIKIへのインタビューを通じ、X JAPAN の軌跡をたどったドキュメンタリー。作中、長い間語ることができなかったというギタリストHIDEの死、TAIJIの死、そしてボーカルToshlの洗脳を、言葉に詰まりながら語ったYOSHIKIが、初のドキュメンタリー映画で本当に伝えたかったこととは?

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全編英語でのインタビューが、心の内をさらけ出させた

YOSHIKI

Q:これまでドキュメンタリーの話はたくさんオファーがあったと思いますが、本作を受けようと思った理由はなんでしたか?

これまでの数年間、本当にいろいろありました。この映画を作ることによって心に痛みを持っている人たちを救うことができるんじゃないか、希望を与えられるんじゃないかと思えるようになったことが理由ですね。

Q:ハリウッドで製作された作品ということに驚きました。

発信がハリウッドということで、監督にもスタッフにも全く先入観がなかったことが、僕が一番面白いと思ったことでした。彼らはこのプロジェクトがスタートするまで X JAPAN を知らなかったので、そういう人たちがどんな作品を撮ってくれるのかとても興味がありました。

Q:監督はかなり踏み込んだ質問をしていました。

日本だと X JAPAN について「派手なバンド」とか「誰かが死んだバンド」とかそういう先入観を持たれてしまいがちですが、彼らには全くそれがないので何でも聞いてくるんです(笑)。日本のジャーナリストの方々も、面白い質問をたくさんしてくださいますが、彼らの場合は自分たちが知らない分、ゼロから始まってインタビューをすることで、僕のことや僕の人生を一生懸命知ろうとしてくれました。でも逆にそれが良かったと思います。

Q:インタビューに答えたくないような時はありませんでしたか?

最初は僕もぎこちなかったというか、答えたくないと感じることも多かったし、過去のドアを開けられないままインタビューが始まりました。でも途中から、監督と話しているというよりは、カウンセラーに自分の過去を吐き出すセラピーを受けている気持ちになって、「全部しゃべっちゃおう」って思えてすごく楽になりました。

Q:全ての質問に英語で答えられていましたね。

僕は日本語でも英語でも自分の気持ちを表現するのが苦手です。でも、海外に20年以上住んでいる中で感じたことですが、日本語に比べると英語は遠回しな表現があまりない気がします。だからストレートに自分の気持ちを表現できたと思います。

HIDEとTAIJIはいつも自分たちのそばにいる

YOSHIKI

Q:観客に関しても、海外では X JAPAN を知らなかったけれど、この映画を観て好きになったという方が多かったようです。

すでに海外では20以上の映画祭で上映されています。僕が個人的に行ったのは、サンダンス、メキシコ、サウスバイサウスウエスト、上海、モスクワなどでした。それらの映画祭で、X JAPAN を知らない観客の方々が観てくださったことがすごくうれしかったです。ファンの方だけではなくて、初めて観た方々までが涙を流して鑑賞してくださったことに、とてもびっくりしました。

Q:HIDEさんの死やTAIJIさんの死について語るYOSHIKIさんの姿は、ファンの方々の心を大きく動かすと思います。

こういう機会がなかったら、なかなか語れなかったと思います。X JAPAN は僕だけで作った物語ではなくて、ファンの皆さんと一緒に作ってきた物語です。皆さんにとって謎めいたこともいっぱいありました。でもこの映画を通して、皆さんが知らないストーリーの大事な部分を、僕が知りうる限りの全てについてきちんとしゃべるべきだと思いました。

Q:映画の中で、作曲しているシーンが出てきますが、その時に「もしHIDEだったらこういう弾き方しそうじゃない?」という何気ない一言がとても印象的でした。

ああいうことは、よくあります。HIDEが亡くなってから……それからTAIJIとも日産スタジアムで一緒に演奏して以降の曲は、いつも「TAIJIだったらこういうフレーズだろうな」とか「HIDEならこう弾くだろうな」っていうのは常に頭にあって、いつも一緒に曲を作っているような気持ちです。

Q:今は X JAPAN にとってもとてもいい時期を迎えているように感じますが、曲を創作されている時の気分は以前と変わりましたか?

新曲「La Venus」を書いている時は、詩を書いていても、曲を書いていても涙が出ました。泣きながら書いた曲というのは人々の心に触れると思っているので、いろんな意味で自信作です。

Q:新曲にどのような思いを込められたのですか?

曲の中に出てくるRoseがRosesという複数形になっていますが、あれは X JAPAN とそしてファンの皆さん、全員を指します。どんなに辛いことがあっても、生きている、咲いている姿。“WE ARE X”です。

全ては X JAPAN があったから

YOSHIKI

Q:Toshlさんと二人で話をしているシーンは、本当に子供の頃に戻ったように楽しそうでしたね!

人と人というのは、本当に出会うべくして出会うものだと思うんです。僕とToshlは、子供の時近所に住んでいたお友達ですからね。しかも、もともとボーカルでもなくギターを弾いていたのに、中学の時にいたボーカリストが抜けてしまってたまたま歌ったらすごく上手くてボーカルになったっていう経緯があります。でもそんな彼が、今や日本を代表するボーカリストになるなんて、信じられない話ですよね。4歳で出会って、そして別れがあって。それも普通の別れじゃなくて、異常な別れ方ですよね。ケンカ別れじゃなくて、彼は洗脳されてしまったわけですから。彼が戻ってくるまでに、自分でもあまりにもいろんなことがあり過ぎて、自分の中で実際に起きたことなのかどうなのか麻痺してしまったんです。でも映画を観た時に、あれは夢じゃなくて現実に起きていたことだったのだと、改めて気づかされました。

Q:この映画の中では「死」が扱われています。YOSHIKIさんにとって「死」とはどういうものですか?

僕らが作り出すアートにおいて、「死」というものはとても重要なポジションを占めています。「生と死」がある中で、人は皆「生」については語りますが、「死」についてはあまり語りません。でも「死」はいつでも「生」と隣り合わせにあって、この「死」をどう捉えるか、どう受け止めるかによって、「どう生きるか」が左右されてくると思います。大切な人の死を味わうと、悲しみや怒りをどこにぶつけていいか分からない。決して僕自身がその答えを持っているわけではありませんが、ただ「死」はいつくるか分からないからこそ、今この瞬間を全力で生きようと前向きに捉えるようにしています。

Q:YOSHIKIさんは苦しみや悲しみをどうやって乗り越えたのですか?

でも僕には音楽があった、Xがあった。そのおかげで僕は生きてこられました。神様がもしも脚本を書いているのなら、「ちょっと行き過ぎだよ」ってことが多かったし、ありえないようなことがたくさんあると思いますが、それが X JAPAN なんですよね。


1998年5月、X JAPAN のHIDEがこの世を去った時、ロサンゼルスから急遽帰国して会見を行ったYOSHIKIの姿は痛々しく、ファンの誰もが彼の身を案じたことだろう。映画の終盤、X JAPAN の復活シーンでは、ファンたちの笑顔が華やかに咲いていた。YOSHIKIが本作の主題歌であり、新曲でもある「La Venus」を語った時、彼ははにかんだ笑みを浮かべながら「Rosesは、全体。みんなのことです」と噛みしめるように話した。これまでの曲の中では孤独な「Rose」だった彼が、ファンや仲間の支えとともに気高く咲き続ける、そんな決意に似た強さが伝わってきた。

(C) 2016 PASSION PICTURES LTD.

映画『WE ARE X』は3月3日より全国公開

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